青山文平作品『やっと訪れた春に』『つまをめとらば』と読んで、次に本書『半席』に至りました。
御家人である徒目付の片岡直人25歳は、片岡家が一代御目見の半席から永々御目見以上の旗本になるため仕事に励み、勘定職への昇進を目指します。そのために表御用の目付としての仕事に邁進、専心しますが、上司の徒目付組頭の内藤雅之から、現在でいうアルバイトの御用頼みを依頼されます。
表御用ではなぜ犯行に至ったかは求められないが、被害者の家族はこの「なぜ」を知りたいために御用頼みを刑の執行までの時間的猶予のないわずかな時に求めます。そのために仮説を立てて加害者に対面します。真相を見抜くためには人とはいかなる存在か、つまり豊富な人間観を有する必要があります。6つの事件も様々な人間模様を呈します。
この小説では、内藤雅之が片岡直人に依頼する場所として、七五屋という居酒屋が登場します。店主の喜助は自前の釣舟を持つ釣師。釣った魚を捌き、お客さんに旬の料理を提供します。江戸前の食文化に触れつつ、よだれが漏れます。
『半席』(青山文平著、新潮文庫、本体価格590円、税込価格649円)