あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

必要十分生活

2016-01-30 16:50:04 | 

  片づけや収納の本はあまた出版されています。まさしく、我々の生活がモノで溢れかえり、置き場に困る状況にあるからでしょう。それでは、どうすればいいのか?

結局はモノを減らすしかない!そして、ストックは可能な限り持たない。

これしか解決策はないはずです。そのために必要なことは、

「一定の状態に収束する、自らが心地良いと感じるルール」を順守する

に尽きます。実際に、自らが愛する必要最小限のモノに減らしても、片づけや掃除は付いてきます。一番やりたくないことを「毎日続ける」、しかも自分自身で納得できる、ある一定の状態にまですれば、非常に清々しい気分で暮らせます。

  モノに対しても、「ご自身が惚れ込む、最高の品だけを持つ」、そして、「私たち消費者がよく吟味して買い物をする」ライフスタイルを堅持するという考えを常に持ちたいものです。その上で、「買い物は消費だけでなくお店に対する投資の側面も持っている」ということに納得します。広告に振り回されず、自分のぶれない基準を持ちましょう!

『必要十分生活』(たっく 著、大和書房、本体価格1,200円)

 

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アメリカの鏡・日本 完全版

2016-01-21 17:53:42 | 

 

「占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むことはできない」

とマッカーサーが邦訳を禁じただけあって、日本の戦争責任に対してはアメリカにも原因を有していると述べられている本書では、歴史における列強の行動は同じ穴のムジナ以外の何ものでもないということです。

  幕末、アメリカは自国の戦略のために日本を開国させ、日本に対し近代国家への道を開きました。欧米列強諸国が先生役となり、日本は生徒として、欧米型国家になることを選択し、中央集権的経済体制を取りました。当時の欧米列強はこれを歓迎し、文明の後れた韓国と中国に西洋文明の恩恵をもたらす国・日本を必要としました。

 イギリスとロシアの極東でのパワーバランスの中で、ロシアの極東ならびに中国でのパワーをダウンさせ、イギリスは自国の権益を守るために、韓国の独立のためという名目で、イギリスは日本に戦争をさせました。不平等条約の破棄し、日清戦争、そして、日露戦争で日本は勝利し、「世界国家」となりました。

  日本が欧米から学んだパワーポリティクスの実践を行う中で、「日本は人道主義、機会均等、人種の平等は、国際法のルール同様、『法的擬制』にすぎないことに気付」き、「国際関係のルールとは、実は、暴力と貪欲を合法化にしたようなもの」と著者は見ています。建前と本音は全く違います。「西洋人に許されるのなら、日本人にだって許される」と考えられます。

  帝国主義列強は自国の権益を守ることが第一であり、日本の中国での行動を良しとせず、欧米帝国主義国家と同じことを日本がしたことに「凶暴で貪欲」というレッテルを貼って批判し、人種的な差別感もあり、日本人は「世界で最も軍国主義的な国民」だから、徹底的に打ち壊すのが太平洋戦争だったとしています。

 この本の論調は、パワーポリティクスの衝突のために、日本を近代国家にし、「西洋文明の教えを守らなかったことではなく、よく守った」日本という生徒を先生が許さなかった構図です。この考えは非常にフラットな見解であり、自虐的な歴史を学ばされた日本人も一読する価値があります。

『アメリカの鏡・日本 完全版』(ヘレン・ミアーズ著、伊藤延司訳、角川文庫、本体価格1,200円)

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物欲なき世界

2016-01-17 16:36:03 | 

  最近は、「シンプルライフ」「ミニマリスト」などのテーマを集中的に読んでいます。どちらかと言えば、実用的な本が多かったのですが、この本でその全体像を掴めたような気がします。「物欲無い」社会を世界的にルポしています。

  日本でも若者が車を欲しがらない傾向ですが、モノが豊かになり、グローバル経済が世界に広がった現在、極端な格差社会が構成され、人々は消費について再考するようになりました。「安ければよい」、また「便利であればいい」という視点だけでなく、「賢く倫理的な消費」がさらに付け加わりました。それは小売店の変容に見て取れます。それは

 「ライフスタイル提案型店舗」

であり、「そのモノを買って手にすると、その先にどんなハッピーが生活の中にあるかというところまで提案」する、そのモノがコトにまで及ぶような価値を加えなければなりません。さらには、「ぬくもりを感じられない大量生産のものよりも、職人が愛情込めて作ったものをそばに置きたい」傾向に消費が移っていきつつあります。もっと先に進むと、自分で作れるものは作るスタイル、つまり「買うことから作ることの復権」にまで及んでいます。

  モノに対しても他者との「共有」「シェア」が進み、買うものと借りるものとが個人の判断でなされてきています。

   買うときに使うお金に関しても、「ますますモノから離れ、情報になり、そして信用の証になる」と、信用できる人に使用し、それも「ローカルかローカルじゃないか」という視点で他者へ移動するものになっていく傾向にあります。まだまだ、現在は地域に落としたお金もチェーン店、あるいは通販のように、地域から、日本からも離れ、二度と戻ってきません。地域再投資につながる使い方が要求されます。

  「消費は投票」であるからこそ、消費者である人間が賢明に生きること、そして、人生で幸福を感じられるためには日々の生活での志向が問われていると考えさせられました。

『物欲なき世界』(菅付雅信著、平凡社、本体価格1,400円)

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モノやお金がなくても豊かに暮らせる。

2016-01-13 17:43:20 | 

  アメリカ北東部にあるマサチューセッツ州のコンコードという自然豊かな町で生まれ育った、DH・ソローは1845年にその地の深い森でほぼ自給自足の生活を2年間過ごしました。この体験を基に、哲学、自然観を記したのが『ウォールデン-森の生活』(1854年刊)です。現在のモノが豊饒な時代に、ある意味、アンチテーゼ満載の1冊です。そして、ミニマリスト必携の、シンプル生活のバイブルです。『モノやお金がなくても豊かに暮らせる。』は『ウォールデン-森の生活』から選び抜かれた110の素晴らしメッセージ集です。

 「なぜ感動を買い求めようとするのだろう。外に出て歩けば、一年の四季の変化の中に、千年にも及ぶ感動が待ち伏せている。」

  先日、三重県のなばなの里へ行きました。イルミネーションの美しさは格別でした。しかし、日没の夕陽はそれ以上でした。「もののあわれ」を鑑賞する気概を持っていた日本人も自然から離れ、ほんの少しの変化さえも見いだせなくなってしまったのですね。

 「必要ないモノはすべて捨てよ。そして決別せよ。たいして欲しくはないモノを買わされるために働く人生と。」

  経済の歯車の中にいる私たちは買い物中毒になってはいないだろうか。本当なら自分で作ることが当たり前だったのに。その時間さえも奪われている可能性があります。

  「人物の最高点と最深点は所有物の多さではなく、普段の行動と生活の波で決まる。」

 このソローの言葉にはぐうの音も出ません。所有物で人を判断するのではなく、その人の所作、その所作を生む考え方ですね。

 3つだけ選びましたが、付箋だらけになりました。含蓄ある言葉は生きる力を与えてくれます。

『モノやお金がなくても豊かに暮らせる。―もたない贅沢がいちばん』(ヘンリー・D・ソロー著、増田沙奈訳、興陽館、本体価格1,300円)

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