あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

生き残った人の7つの習慣

2019-12-31 14:40:15 | 

 長年、地球上に14座ある「8000メートル峰の無酸素登頂」に挑戦し続け、自らも幾多の危機に遭遇しつつも下山した、プロクライマー・小西浩文氏。同時に、同じ登山家たちが危機に命を落とした山の事故を自らの経験も踏まえて考察した危機管理の教科書は、山登りだけでなく、ビジネスや日常生活でも活用できます。何せ、「想定外」という言葉を聞かない日がありませんから。

 危機管理に一番大切なことは「心」の問題であると言い切っています。「気の緩み」「焦り」に対して、 「集中」「平常心」を優先すること、「沈着」にしているのと「過信」は違うことをしっかりと理解しなければなりません。

 また、昨今の自然災害からよく耳にする「想定外」という概念も、自己を甘やかすだけのものであり、自分だけは大丈夫であるとか、過去何も起こらなかったという「正常性バイアス」を排除して、常に最悪を想定する習慣を身に付けることを提唱しています。

 そして、僅かな異変」にも気づくことと、「事前準備」に9割の力を注ぐ大切さを痛いほど強調されています。

 如何にことに対するかを常に考え、どう対処するか、それが危機管理に繋がるようにしなければなりません。自然大国の日本人の必読の書かもしれません。

『生き残った人の7つの習慣』(小西浩文著、山と渓谷社、本体価格1,200円)

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連鶴(れんづる)

2019-12-31 13:49:04 | 

 幕末の桑名藩を描く歴史小説。桑名の伝統文化の折り鶴で、1枚の紙から繋がった鶴を折り、最高97羽の鶴ができる『連鶴』をもうひとつのモチーフにしています。

 はじめは、坂本龍馬暗殺の場面からスタートします。殺された龍馬の手からこぼれたのが2羽の鶴がつながった連鶴。ここから桑名へと話が展開します。桑名藩の速水丈太郎は江戸在勤で幼馴染の妻と小さな息子、勘定頭の父、そして母と生活をしています。弟の栄之助は横浜の商家多田家へ婿養子となっていました。徳川親藩である桑名に身を置く身では、いくら海外諸国の文化や技術が気になろうとも、主家への忠義は示さなければならず、その心情を知る栄之助は兄の身を案じながらも、「桑名を捨てよ」と告げます。丈太郎は家老の酒井孫八郎と行動を共にしながら、揺れる心を持ちつつも、桑名藩士としての役目を果たしていきます。

 「この世は、己の命を厭わず志を掲げる特別な者ばかりではない。大多数の者が流れに身を任せ、その波に呑まれるだけだ。」

 自分自身ではこう生きたいと願っても、志を遂げることの難しさは言葉では言い表せないほど。時代の流れに翻弄されながらも、今を生きる。丈太郎の母の

「迷いがあってこそ、人です。思い通りにならなず苦しむのもまた常のこと。丈太郎、いま、そなたが一番信じるものを守りなさい。」

という言葉は、私自身にも語りかけられているようでした。デジタルの振興とアナログの沈滞、リアル書店の減少など、どう身を処すべきかの一つのアドバイスです。

 クライマックスは、兄弟の本来の姿を示してくれ、やはり、同根から生まれた二人の兄弟愛を提示してくれます。

 現代も大変革の時代と言われています。我々はその中に漂うばかりですが、「いま、一番信じるもの」をしっかりと実践していくしかありません。

『連鶴』(梶よう子著、祥伝社文庫、本体価格840円)

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線は、僕を描く

2019-12-31 13:38:15 | 

 私がブログに一度紹介した『線は、僕を描く』(砥上裕將著、講談社、本体価格1,500円)ですが↓

https://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/e3c9fe289408065146958f2a242f8fdf

 うちのスタッフも読んでくれました。以下が感想です。

 

「これ、良い話やと思うねんけど、全然売れへんねん。貸したるから、読んでみぃひんか?」
と言う店長から借りた本。

 その時、私は友達と上手くいかず、そのストレスで家族ともケンカしてしまい、自己嫌悪に陥り…とかなり沈んでいました。
鬱っぽく、集中力もなく、読み切れる自信もなかったのですが、せっかくだしと読み始めました。

 でも、主人公、霜介の繊細な心模様に引き込まれていくまでに、時間はかかりませんでした。心を閉ざし、生きる希望を持てない霜介が、水墨画を通して成長していく物語。人との関わり、生きること、命をすごく感じられました。
 読み終える頃には、ネガティブ思考だった自分の心情は、すごく暖かいものに包まれた気分でした。

 今、行き詰まりを感じている人、
何か分からないものにしんどさを感じている人、
人生って何だろう…?と思っている人

にぜひ読んでほしい!です。

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死にがいを求めて生きているの

2019-12-24 17:43:09 | 

 子どものころから親友である智也と雄介。しかし、端から見ていてもそんな感じには思えない。彼らの個々の物差しが違うからとはいえ、智也が雄介を完全にフォローして、友人関係を形成している。智也が一浪したので学年は違うが、二人とも北大へ進学し、ここで二人の違いが鮮明になる形で、どう生きるか?を問うている。

 智也が語る中で、人間3種類説が説かれています。

①「他者貢献人間」 生きがいがあって、それが家族や仕事、つまり自分以外の他者や社会に向いている人

②「自己実現人間」 生きがいはあるけど、それが他者や社会に向いていない人

③「ただただ生きる人」 生きがいがない人。他者貢献でも自己実現でもなく、自分自身のための生命維持装置としてのみ存在する人。

 どう考えても、①が社会で生きる上では良いわけであり、そのためには自分の行動や発信が他者と関係を作ることが必要であり、「この世で生きる以上、だれもが必ずつながっている」認識を持たなければならない。これは何も人間間だけではなく、自然や地球ともかかわる。だからこそ、どう生きるかという考えが無視できなくなる。それが身にしみてわかった。

『死にがいを求めて生きているの』(朝井リョウ 著、中央公論社新社、本体価格1,600円)

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アントキノイノチ

2019-12-23 16:16:36 | 

 大掃除の中、家の本棚にあったので読み始めたら、大掃除が中断しました。

 主人公の永井杏平は高校時代のゆがんだ友達関係のために、高校3年生で退学し、ひきこもってしまう。自律神経の失調、精神失調ゆえのうつ、そして、失語症状。中学二年生の時に、母親が他の男と駆け落ちし家でしたので、共に暮らす父が彼を全幅でフォローする最大の理解者である。「一所懸命に生きた人は、一所懸命に死ぬことができる。」「人は生きたようにしか死ねない」「生命の重さには差はないけど、生きる重さには差がある。」「死ぬほど口惜しいという想いを、どんな風にして自分の生きるエネルギーに変えるか」という父の言葉に支えられ、父の知り合いの遺品整理会社に見習い扱いで働き始める。

 自殺や孤独死の家の整理が多く、「仏さんの心を助け出しに行く」「その人の残した思い出を救い出しに行く」と言う先輩は、凄惨な現場にもかかわらず、淡々と仕事をこなし、汗を流す。毎日のように、「命」を見つめる仕事をすることで、杏平は少しずつながら元気を取り戻す仕事の後に会社の近くに飲みに行く居酒屋にいる同年配の女性アルバイト雪ちゃんと親しくなり、雪ちゃんの高校時代のつらい過去を杏平は聴き、ここでも命とは何かを考える。

 「生きているだけで丸儲け」という思いに至ることができればよいが、自分の置かれた環境や人間関係で悩み、自分の命を、また、敵対する人の命を粗末にしてしまおうとする。生きて悩みながら、この世を去った人の部屋を片付け、その人の生き様を知ることで、「命」の何かをポジティブに受け入れる。それは、人への双方向の愛情のキャッチボールがあることかなぁと感じた。

 しかし、NHKスペシャルで観た遺品整理会社のドキュメンタリーをここまで膨らます、さだまさしの創作力が凄いと思う。

『アントキノイノチ 』(さだまさし著、幻冬舎文庫、本体価格600円)

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甘夏とオリオン

2019-12-18 15:24:03 | 

 やっと、上方落語も小説に登場するまでに至りました!素人落語を演る私としては嬉しい限りです。

 大学3年生の北野恵美は大学最寄りの駅前で、「引っ越しのアルバイトをせぇへんか?」と呼びかけられ、恐る恐る付いていき、1万円のアルバイト料のほかに、引っ越し主から3千円入りの祝儀袋をもらった。大阪天満宮の古着市へ行ったが、『天満天神 南條亭』の夜席の入場料3千円の表示に誘われて、木戸へ向かう。高座の「桂夏之助」の『宿替え』に魅入られ、「噺家になったら、心置きなく、アホを演じられる。しかも、誰かと一緒にやるんやのうて、一人でできる。私がこれまでずっと憧れてて、ようなれんかった、アホになれる。」と夏之助への弟子入りを決意する。恵美は入門し、「甘夏」という師匠から名をもらう。

 甘夏入門3年後の南條亭の高座に、出番でトリであった夏之助が来ないところからストーリーは展開する。甘夏のほか、小夏、若夏の、夏之助の弟子3人は師匠の帰りを待ちつつ、修行に励む。甘夏の内弟子時代の師匠とのエピソードも師匠の人間味がにじみ出ていて、ほんとに甘酸っぱい。男の世界であった落語界では女性はやりにくいが、『師匠、しんじゃったかもしれない寄席』という名の寄席を弟子3人で立ち上げる。上方落語の多くの噺が登場し、上方落語の世界オンパレード。

 また、師匠からの落語についての教えが、素人落語を演る私にはとても参考になります。

 「演るときには、自分なりの正解を持っとかな、あかん。」「おまえらは、おまえらの色の落語をしたらええんや。」「人と人がぶつかりあって、芸ができる。」「舞台の袖で先輩たちの落語を観ろ。そして、落語を知れ。。覚えるんやない。知ることや。」

 この物語は、上方落語を通して、いかに生きるかを問いかけてくれる。

 「人生は、不思議なもんやなあ。思わぬところに、つながってるんや。たかが、落語や。けどいつか、お前の演る落語が、誰かの人生をかえるかもしれん。そう思って、頑張りや。」

 「八方ふさがりに陥ったとき、もうどうしようもないと思った時も、必ず突破口はある。答えは、落語の中にある。」

 一つのことに一所懸命に打ち込め!いまここにしか道なしということ。私も本屋と落語、そして、里山作りに取り組もう。

『甘夏とオリオン』(増山 実著、KADOKAWA、本体価格1,600円)

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ひりつく夜の音

2019-12-12 17:45:47 | 

 プロのジャズクラリネット奏者の下田保幸は46歳。「井村勝とロンサム・ハーツ」というディキシーランドジャズのバンドマンだったが、井村勝氏が亡くなり、解散となり、演奏からは遠ざかり、音楽教室講師の僅かな収入で過ごす、しがない中年独身。ある夜、彼の携帯電話にジャズクラブのオーナーから電話が。「佐久間音矢」の引受人として、本人から下田保幸の名があがっていると警察から連絡を受けている様子だが、「佐久間音矢」って誰だ?学生時代に付き合っていた佐久間留美は男の子の名前に「音矢」が良いと聞いてはいたが…。突然の出会いが人生を動かし始めます。音矢はギターではプロ級の腕前。バンジョーも始めて、保幸と同じ舞台に立つ~。

 「守るべきものは、守っていけよ。一つだけでいいんだ。でも、それだけは守れ。安売りはするな。」と保幸は音楽の師匠から言われていました。そのことを留美にも伝えていました。音矢からも「母ちゃんは死ぬ前に(中略)自分にとって大切なものを一つ決めて、それだけは何があっても守りなさい」と保幸は音矢のことをしっかりとしたミュージシャンへ導こうとします。

 中年の悲哀を背に滲ませながら、舞台でのセッションでは本物を提示する。その姿は音矢にも響くはず。彼らの音楽シーンに幸あれ!

『ひりつく夜の音』(小野寺史宜著、新潮文庫、本体価格550円)

 

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「人生の勝率」の高め方

2019-12-08 15:23:24 | 

 1か月の間、更新が出来ず仕舞いでした。57名の1万円選書のお仕事のために、時間を選書に費やしてました。インプットである読書もままならずでしたが、やっとこさで峠も過ぎ、アウトプットのブログも書けるようになりました。

 本書の副題が『成功を約束する「選択」のレッスン』とあるように、人生の勝率を向上させるには好結果を生む良い選択をするのが1番であるということ。これは著者である土井さんが人生で行ってきた過程から発見してきたことです。大学受験では、戦略として点数を稼ぎやすい科目で受験生と競合するよりも、誰もがそうするのはなかなか難しいと考え、手を出さない小論文に注力して、圧倒的な結果を残す選択したことや、Amazonで書評を書く時も、他者との競合の少ないビジネス書を選択したこと、その結果、出版社の編集者や著者とのつながりが生まれたことを踏まえ、選択こそが重要であると説いています。

 日本のみならず、世界で売れ、現在はアメリカに拠点を移している、『人生がときめく片付けの魔法』の著者・近藤麻理恵さんも土井さんのレッスンを受け、土井さんのプロジュースで本が出版され、158万部に至ったと知れば、選択の大切さは理解できます。「選択と集中」とはビジネスでは当たり前ですが、その選択力こそが命運を決するわけです。

 そのように目利きすればよいかは本書に譲りますが、「『今に感謝して、未来に成功をセットして走り続けること』が人生を豊かにする最大最良の秘訣です」とは至言です。1万円選書も選書の力量ですから、全く同じことですね。

『「人生の勝率」の高め方 成功を約束する「選択」のレッスン』(土井英司著、KADOKAWA、本体価格1,400円)

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