あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

世界を人間の目だけで見るのはもう止めよう

2020-01-27 16:16:35 | 

 日本は中国、そして、明治以降は欧米から、政治、経済、科学を含めての国の形を学んできました。優秀なモデルを目指し、それに追いつけ追い越せと躍起になってきました。いつもキャッチアップし、先進国の一員として定位置をキープしてきました。

 しかし、現在の地球の喫緊課題である、地球環境問題、平和に関して、いかに対応すればよいか?国際社会はもうすでに成長することが物理的に無理であり、しかも、登山ではなく、「下山」するべき、つまり、地球が現行の人間の行いを環境面で応じれなくなっています。人間に対する試練として気候変動をすでに全世界で提示してくれています。

 その対応モデルとして、日本文明、そして、日本語を日本は前面に出すべしと断じておられます。全世界のモデルが古来からの日本であるということ。これは西洋文明との対比で見ればわかりやすい。

                西洋文明                                                日本文明
人間至上主義で、闘争的な一神教的世界観        すべての生き物が共存共栄の「アニミズム的世界観」

人間だけが良かったらいいという考え方では解決不能であり、日本文明の、共存共栄型の「アニミズム的世界観」こそが解決策を導いてくれると述べています。そのベースとして、日本語が国際語として学ばれることの重要性を本書では何度も何度もお話しされています。

 なぜ、日本語なのか?これに関しては、

https://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/fc5203d9fe95b13e166bcf8f88bc3f7f

『日本語が世界を平和にするこれだけの理由』(金谷武洋著、飛鳥新社、本体価格602円)に「日本語は世界を平和にする」というメッセージがあり、言語は思考のベースですから、この世界観の共有の根幹となるでしょう。地球再生への日本文明を誇らしく訴えましょう!

『世界を人間の目だけで見るのはもう止めよう 言語生態学者 鈴木孝夫講演集』(冨山房インターナショナル、本体価格1,800円)

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一朝の夢

2020-01-19 16:16:09 | 

 昨年末に読んだ『連鶴』の梶よう子さんの作品をもう少し読もうと、本書に挑戦しました。『連鶴』のブログは以下の通り。

https://blog.goo.ne.jp/idomori28/e/4b8d51b235cd28a7373debe634a49281

 幕末の動乱のノンフィクションの歴史上の登場人物に、フィクションを交えていく手法は今回も同じです。此度は安政の大獄から桜田門外の変が舞台で、江戸は北町奉行所の両御所姓名掛りという閑職に勤める中根興三郎が主人公。三十俵二人扶持の薄給で、六尺の身を持ちながら、おとなしい性格の三十路の彼の趣味は朝顔栽培。江戸時代には朝顔のブームがあって、変わり咲を創るのが持てはやされたそうで、彼も毎年二~三百鉢植え付け、「朝顔同心」と揶揄されていました。その変わり朝顔を販売するわけでもなく、ただただ愛育している凡庸なお侍でした。

 彼の朝顔を知り、江戸の朝顔界の重鎮が興味を示し、そんな彼も歴史の渦に巻き込まれていきます。重鎮が尊王攘夷の歴史の主役であればこそ、朝顔同心も一人の武士。恋沙汰、暗殺、殺人、利権を狙う商人と物語はエンターテイメント性を増しながら盛り上がります。

 一年に一度咲く朝顔、翌年には同じ花とは出会えない一回性がストーリーの根幹に結びついています。

 「朝顔は己の花で子を為すか。だが、別の花同士で子を為せば、思いも寄らぬ花になるとな。小さなところに留まらず、広く見渡せば、様々なものが生まれてくるやも知れぬな。」

とは幕末維新の人々も同じであり、現代人の生き方にも少なからず心振るわす作品です。そして、朝顔がこれほど豊かな花であるか、また、こんなに愛でられていたとは初めて知りました。江戸文化の奥深さを感じます。

『一朝の夢』(梶よう子著、文春文庫、本体価格710円)

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岐路の前にいる君たちに

2020-01-17 16:59:14 | 

 大阪大学、京都市立芸術大学の入学・卒業式で、鷲田清一氏が学長として語った式辞をまとめたもので、新入生、新社会人へのはなむけの言葉であり、これからの生きる指針を提示してくれています。

 世界や課題、問題に対峙するためには、「教養」の必要性を徹底的に伝えています。大学で磨いてきた「専門」に対して、「相対的な視点」、「複眼」で見るためのベースには「教養」が不可欠です。本書でも数回にわたり書かれている、

「生きていくうえでなくてはならないもの、絶対に失ってはいけないもの、

 あってもいいけどなくてもいいもの

 端的になくてもいいもの、

 そしてあってはならないもの、起こってはならないこと」

が分別できる人になれ!と訴えています。そのためには常に学ぶ姿勢が大切です。

 また、もう一つ、生きる上で考えなくてはならないことは、有料であれ、無料であれ、サービスの依存体質に警告を発しておられます。震災や風水害などが発生した場合、サービスの提供が不能になる場合が多く、一人の人間として、自立して生きていく力が必要です。生きる根本が試される事態に陥っても大丈夫であるためにはどうすればよいか?阪神淡路大震災25年目の今日だからこそ、しっかりと考えていみたい。

『岐路の前にいる君たちに ~鷲田清一 式辞集~』(朝日出版社、本体価格1,600円)

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屍人荘の殺人

2020-01-13 13:55:13 | 

  2月1日に著者講演会として、映画でも話題の『屍人荘の殺人』の今村昌弘さんを兵庫トーハン会はお呼びします。

 講演に先立って、読了しました。神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に、映研の夏合宿に参加します。昨年開催された同合宿では、一人の女性が自殺するという問題を起こしており、その解明にもあたるために、ペンション紫湛荘を訪れるが、初日の夜から、想像を絶する事態に巻き込まれ、籠城せざる負えず、そんな中で連続殺人が始まります。このミステリーに読者は引き込まれてしまいます。

 まぁ、密室殺人に至るまでの、ペンションに引き込もる必要の原因が奇策であり、そこでその手ですかと思いながらも、読み進むと、著者の人間観が表れています。

 人は「一番醜い部分を曝け出している」だけで、誰も変わらない。人は人を非難できない。

 どこかで違いを見つけ、差別をし、上から目線で見下ろすのはやめよう~というメッセージかもしれません。

『屍人荘の殺人』(今村昌弘著、創元推理文庫、本体価格740円)
 

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2025年、人は「買い物」をしなくなる 

2020-01-13 13:28:49 | 

 コンビニの出現で「便利」という物差しを買い物に使い始め、馴れてしまった消費者。ECサイトの出現で、店に行かずとも買い物ができる「楽」を知り、スマホの出現でを手元にふんだんな情報がやってくると、時間を有効に使いたいと思い始めた人々は「面倒くさい」ものを排除している。買い物は時間の浪費のやり玉になり、リアル店舗へ行き、商品を探し、レジに並び、決済をし、家へ戻ることを可能な限りゼロにするプラットホームがスマホの中にあることはまさに革命的である。商品選択も、AIや影響力を保持するインフルエンサーのリコメンドで行うようになると、ますますリアル店舗の存在価値が逓減していく。棚は小売店が作るのではなく、消費者がスマホの中に消費者自身に適したデジタルシェルフを持つことができる時代になる。

 そして、5Gの環境が整う2020年、大容量の映像も流せるようになると、買い物の姿も一変すると予想している。われわれ小売はどうすればよいか?また、メーカーはいかにして売るか、また、モノづくりの根幹にまで発展するEコマースを知らないと、今後太刀打ちできなくなる。商品を販売することにかかわるすべての人、必読の書である。

『2025年、人は「買い物」をしなくなる 次の10年を変えるデジタルシェルフの衝撃』(望月智之著、クロスメディアパブリッシング、本体価格1,480円)

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