著者の畠山健二先生が本日ご来店してくださいました! PHP文庫『本所おけら長屋』の第六巻発売のタイミングでお越しいただき、非常に感激しております。
江戸の長屋話だけにあって、「笑い」「人情」が付き物。現代のコミュニティに最も欠けている点だけに、感動もひたひたと押し寄せてきます。初っ端のその壱「だいくま」はまさしく落語のネタ、サゲも笑える新作になると思います。その弐「かんおけ」からその七「ふんどし」までは人情噺ですね。
そして、そこかしこに胸打つ言葉が散りばめられています。生きる力を与えてくれます。
「先のことを考えてしまっては何にもできなくなります。まさに武士の世界がそうでした。素晴らしいではありませんか。先のことなど考えずに行動する。真実はそこにあるのではないかと。」
「人の運命とは摩訶不思議なものですね。どこに生まれてくるかで、まったく異なる人生を歩まなければならない。武士の世界だってそうじゃありませんか。私や清水さんのように家禄も高くない家に生まれれば、出世するなどまず無理です。だからといって、生まれる家を選ぶことはできない。その人の人生を歩むしかないのです。(中略)運命を変えることはできませんが、人生を変えることができるはずです。自分が決断して行動する結果こそが運命なのですから。」
「あの長屋の人たちにとって、一番大切なものとは何でしょうか。」「それは……、絆です。(中略)弱い者たちは、人とつながっていなければ生きていけませんから。」
先生との別れ際での会話で、「うちの店名も『本所おけら長屋』にありますからね、井戸。」お後がよろしいようで。
『本所おけら長屋』(畠山健二著、PHP文庫、本体価格619円)