新井満さんと言えば、『千の風になって』で一躍有名になりましたが、マルチの才能の持ち主ですよ。1988年に『尋ね人の時間』で芥川賞を受賞するだけでなく、作詞作曲、写真家、そして、長野冬季オリンピック開閉会式イメージ監督など、さだまさしクラスの人です。
この本は、新井満さんが今まで出版してきた本から編集された名文集です。お母さんが助産師だったことから生まれることの意味を知り、18歳の時に急性十二指腸潰瘍で死ぬ一歩手前までなる経験を経て語られる言葉は非常にわかりやすく、ずしりと肚に落ちてきます。
「どんな赤ちゃんにも、役割があってさ・・・。」「お前もこの世に生を受けたからには、何か役割があったから生まれてきたんだろう? 自分の役割が何なのか、それを考えなさい。」という母の言葉、そして、
「生きている。それだけで、ありがたい。」という幸福論の原点、
さらには、「あなたは、いのちのつみかさなりのはてに生まれてきた奇蹟のような存在なのだから、その奇蹟に感謝し、次に、なぜ自分がこの世に生まれてきたのか?その理由を考えよう。それは、役割があったからにほかならない。」
とここまで悟れば、人生、儲けものです。
いのちの奇蹟を受け継いだなら、「自分の為でなく、自分以外の人々の為に、いったい何ができるのか。」を励めば、周りの人たちを含めて幸せに包まれることでしょう。』(新井満著、海竜社、定価1,000円[税込])