あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

北朝鮮の核実験に思う(その2)(自我の欲望(その2))

2016-01-12 15:42:45 | 思想
北朝鮮が水爆実験を成功させたと発表した。狙いは、アメリカと終戦条約を結ぶことにある。北朝鮮は、イラクの二の舞になりたくないのである。アメリカは、イラクは大量破壊兵器を持っていると言いがかりをつけ、攻め込み、勝利し、フセイン大統領を裁判にかけて殺害した。しかし、イラクは大量破壊兵器を所持していなかった。もしも、イラクが核を所持していたら、アメリカは戦争を仕掛けなかっただろうということは誰でも容易に推察できることである。しかし、アメリカは、北朝鮮が核を捨てない限り、国際社会に復帰させないと言明している。今回の水爆実験を理由に、国際連合を動かして、経済制裁を強化しようと考えている。しかし、今のところ、常任理事国のロシアや中国が同調する動きはない。確かに、金正恩の独裁国家である北朝鮮が、これまで原子爆弾を保持していた上に水素爆弾を持つようになったら、いっそう脅威になるのは間違いはない。しかし、北朝鮮は容易に核を使うとは考えられない。北朝鮮が核を使う時、それは自国が滅びる時である。それが小国の運命である。それでは、最も脅威の国はどこであろうか。それは、国際連合の常任理事国の五か国である。核弾頭の数で明瞭である。アメリカは約9400個、ロシアは約13000個、イギリスは約185個、フランスは約300個、中国は約240を保有していると言われている。しかし、北朝鮮の保有している核弾頭の数はせいぜい10個であると言われている。比較にならないのである。攻める国と守る国の違いである。核の保有に関しては、核保有国は将来的に核を全廃し、核非保有国は核をこれからも持たないという、NPT(核拡散防止条約)というものがある。現在、世界のほとんどの国(二百国近くの国)が加盟している。もちろん、この五カ国も、NPT(核拡散防止条約)に加入しているが、核の数を減らすどころか、徐々に増やすか、現状を維持している。北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)に加入したことがあったが、現在は、態度をあいまいにしている。インドは70個前後、パキスタンは80個前後の核弾頭を保有していると言われている。両国とも、NPT(核拡散防止条約)に加盟していない。その理由は、両国とも、NPT(核拡散防止条約)は、核保有国に有利、核非保有国に不利な不平等条約だからとしている。イスラエルは、NPT(核拡散防止条約)に加盟せず、核の保有を秘密にしているが、約80個の核弾頭を保有していると言われている。インドやパキスタンが言うように、NPT(核拡散防止条約)は不平等条約である。それでも、世界の核非保有国のほとんどが加盟している。なぜならば、これ以上核保有国が増えてほしくなく、核保有国ににらまれたくないからである。エディプス・コンプレックスにおいて、男児は、母親に対する欲望を、父親の妨害に遭い、周囲の者が父親を支持するので、抑圧せざるを得なかった。それが、道を外れた欲望の運命である。ラカンは、その周囲の者の存在(判定)を大文字の他者と呼んだ。しかし、常任理事国の五か国の道を外れた欲望を制止するものは存在しない。世界には、大文字の他者は存在しない。常任理事国の五か国の欲望を妨害するのが、他の常任理事国の五か国であり、その対立は泥仕合になり、常に収拾がつかない状態に陥る。現在のイスラム教国家の混乱が収拾がつかないのも、常任理事国の五か国が絡んでいるからである。そして、大文字の他者が存在しないからである。国際連合が大文字の他者になりようがない。常任理事国の五か国が拒否権を持っているので、国際連合は大文字の他者としての機能を果たせないのである。常任理事国の五か国は、自国の欲望、つまり、自国の自我によって、世界を動かそうとしている。そして、それを制止する大文字の他者としての組織が世界に存在しないから、世界は狂騒するばかりで、悲劇ばかりしか生まれないのである。

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