おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

フレンチ・カンカン

2023-03-01 07:26:24 | 映画
「フレンチ・カンカン」 1954年 フランス


監督 ジャン・ルノワール
出演 ジャン・ギャバン フランソワーズ・アルヌール
   マリア・フェリックス フィリップ・クレイ ミシェル・ピッコリ
   ジャンニ・エスポジート エディット・ピアフ シュジー・プリム
   ヴァランティーヌ・テシエ

ストーリー
1888年のパリで上流向けのクラブを営んでいたダングラールは、下町のキャバレーで見初めた踊り子ニニに触発され、自分の店を処分し、その店“白い女王”を買い取り、カンカンの復活を軸とした新しいショウを見せる娯楽の殿堂にしようと画策。
そしてフレンチ・カンカンと新しい名をつけ、ニニを説得して踊りの練習をさせた。
"白い女王"は坂り壊され、その名も"ムーラン・ジュール"と改められた。
かねてからニニに思いを寄せていた近東の某国王子アレクサンドルの援助で"ムーラン・ジュール"の建設は着着と進められた。
そして、"ムーラン・ジュール"開場の日が来て、人々は開場前からどっと押寄せた。
しかし、ニニは、ダングラールの心が彼の発見した新しい歌手に移ったのを知って沈んでいた。
いよいよ呼びもののカンカンが始まるというとき嫉妬にかられたニニは楽屋にこもって出演を拒絶した。
しかし、恋人がほしければアレクサンドルに電報を打て、亭主がいるならポオロのところへ行け、というダングラールの厳しい言葉に、ニニはカンカンに生きる自分の立場を知った。
割れ返るような拍手のなかに飛び出たニニは何もかも忘れて踊り出していた。


寸評
僕はハネムーンに「パリ7日間」というツアーを計画していたのだが、あいにく直前に発病してお医者さんから海外旅行を止められ仕方なく国内旅行で我慢したのだが、もし実現していたならモンマルトルの丘を散策し、ムーラン・ジュールに行きたかったのだ。
何処までが本当か知らないが、映画はそのムーラン・ルージュが出来上がる経緯を描いている。
ミュージカル風でもあるので物語に深みがないように感じられて、僕は少し物足りなさを感じた。
ジャン・ギャバンの興行師ダングラ-ルとフランソワーズ・アルヌールの小娘ニニを中心に、それぞれに恋を絡ませて物語は進んでいくのだが、どうも恋の行方に歯切れの良さを感じない。
ニニにはパン職人のポオロという恋人がいて結婚の約束をしている。
それなのにニニは自分を見出してくれたダングラ-ルと結ばれているのである。
このニニに某国の皇子であるアレクサンドルが思いを寄せていて、熱烈な求愛行動をとる。
一方でダングラ-ルが経営している寄席のスターであるロオラは烈しい気性の持ち主ながらダングラ-ルを熱愛していて、ダングラ-ルもまんざらでもなさそうなのである。
この三角関係とも四角関係とも五角関係ともとれる、恋を巡る人間関係が上辺だけのものに思えて、僕は物語に素直に乗り切れなかったのだ。
ロオラはダングラ-ルへの当てつけで、ヴアルテル男爵を色仕掛けでそそのかしてダングラ-ルへの出資を打ち切らせているのだが、このロオラの心の内がもうひとつよく分からなかった。
恋に破れたアレクサンドル皇子が拳銃自殺を図るが軽症で済んだなんて都合がよすぎる。
そしてアレクサンドル皇子が愛するニニにダングラ-ル名義のムーラン・ルージュの権利証を渡して去っていく場面も、やけにあっさりしていて悲恋の切なさ感を感じ取ることが出来なかった。

時代は1890年代なのだろうが、多分こうであったろうと思われるパリの雰囲気はよく出ていたように思う。
画家のロートレックも通ったと言われるムーラン・ルージュの象徴である赤い風車が出来上がっていく様子もそれらしく思える。
そして圧巻はやはりムーラン・ルージュが完成して披露されるフレンチ・カンカンのシーンである。
そこに至る前のダングラ-ルがニニに浴びせる言葉が前段階として引き締めている。
「俺の興味は新しいスターを世に送り出すことだけだ。恋人がほしければアレクサンドルに電報を打て、亭主がいるならポオロのところへ行け!」というものである。
アレクサンドルの所へ行けば毛皮や宝飾で身を飾ることができるだろう。
ポオロと結婚すればつつましいながらも幸せな生活が送れるかもしれない。
しかし、その言葉を聞いてニニはダンサーの道を選ぶ。
怒りを見せるポオロが客席にいて、今にも飛び出しそうであるが、それを止める女性が隣にいる。
そして繰り広げられるフレンチ・カンカンのショータイムが一気に映画を盛り上げる。
実に楽しいのだ。
ニニが出なければ行われなかったショーの筈なのに、特にカメラはニニだけを追っているわけではない。
フレンチ・カンカンの楽しさを伝えるように集団としてのフレンチ・カンカンを描いている。
ニニはダンサーとなり、ポオロは庶民生活を手に入れた、メデタシ、メデタシである。