おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

好奇心

2019-05-22 09:02:19 | 映画
「好奇心」 1971年 フランス / イタリア


監督 ルイ・マル
出演 ブルノワ・フェルレー レア・マッセリ
   ダニエル・ジェラン  マルク・ビノクール
   ミシェル・ロンズデール

ストーリー
三人兄弟の末子ローランは十四歳と六カ月、大人のような子供のような年頃である。
トーマとマルクの二人の兄はろくに勉強もしないで悪戯の限りをつくし、その余波はローランにまで及び、タバコやお酒まで覚えてしまった。
ある日、学校の帰りがげに、ローランは母クララが知らない男と車に乗っているのを見かけ不愉快だった。
父はあまり好きになれなかったが、若くて美しいママがしてくれるただいまやおやすみのキスはローランにとって何ものにも代えられない宝物だったのだ。
それから数日後、両親が学会に出かけた夜、二人の兄はここぞとばかり羽根を伸ばし、女の子を呼んでパーティーが開かれ、父の秘蔵のぶどう酒が持ちだされた。
兄たちはローランに初体験をさせるため、あやしげな娼婦の家に連れ出して、フレダという女と寝かせた。
そして、フレダの胸に顔をうずめているローランの足を引っぱってしまった。
翌日、ボーイスカウトのキャンプに行ったローランは熱をだし、医者は湯治場に療養に行くことを勧めた。
療養所ではみんながママに視線をあびせ、ローランは自分のことのように晴れがましかった。
ローランとママは恋人のように腕を組んで散歩し、テニスに興じた。
ある日ママは眠ったふりをするローランの許に、二、三日で帰る由の置手紙を残して姿を消した。
退屈をまぎらわすために同じ年頃のエレーヌやユベールと遊んだが、やはりママの魅力に比べれば、格段の違いなのだ・・・・。


寸評
主人公のローランはジャズ好きの15歳の男の子なので映画は軽快なジャズに乗って始まる。
友達と募金活動をしているがレコード店では万引きをやっていることを描き、この少年の一面をとても早い時期に観客に知らせている。
そこから描かれるのはローランを含めた兄弟三人の悪ガキ振りで、見ている僕は徐々に嫌悪感を抱いてくる。
ローランは裕福な婦人科医一家の末っ子で、食事は年配の家政婦がつききりで世話をやいてくれ、もうひとりの若いメイドは掃除やら洗濯やら家事いっさいをやってくれているという恵まれた家庭だ。
息子たちはタバコ、酒はとっくに覚え、無免許運転もへっちゃらで売春宿通いをやっているという体たらくだ。
メイドや家政婦に対する見下した態度や振る舞いは決して気分のいいものではない。
兄弟たちはパンツを脱いで長さを見せ合うという、ろくに勉強もしない不良どもで、勉強に集中できないとローランが神父に訴えると、神父は自慰行為のやり過ぎだと断定する。
兄たちはいい女をみつけてやると無理やり娼館に連れて行き、優しい女をあてがってやるが肝心のところで部屋に忍び込んだ二人がローランの足を引張って途中で終わらせてしまう。
後半でガールフレンドに自分は半分だけ経験があると告白する場面が可笑しいが、兄たちの悪ふざけと悪態が長々と続き、脆弱な金持ちの末っ子のわがままいっぱいの悪趣味にうんざりする。
母親が不倫しているらしいこともわかってくるが、だからといって映画はこれといった変化はみせない。
何のことはない、ブルジョワジーの退廃をを描いているだけではないかと思えてくる。

ローランはキャンプで猩紅熱にかかり医者から一ヶ月休養を命じられる。
医者が勧める保養地に行き、母親が付き添うことになるあたりから、やりたい放題やって病気になったら一ヶ月も休養するというバカバカしさは横に置いておいて映画は急展開を見せる。
ローランは保養所で同じ年頃の女の子に近づくが、お固いその子はキスもしない。
逆にきれいなママは注目され男たちが寄ってくるので、ローランは優越感に浸りながらも男たちに嫉妬するというマザコン息子の微妙な精神状態が思春期と言えば思春期を思わせる。
ママは浮気相手と外泊した挙句に破局を迎えて帰ってくる。
落ち込み泣くママをローランは慰めるのだが、母と息子が入れ替わってしまっている状況だ。
「お前、そんなに物分かりがいいのか」とツッコミを入れたくなるローランの慰めぶりが可笑しい。
よっぱらってベッドに倒れこむママを介抱し、ローランはブラウスを脱がせてあげ、ブラジャーを外してあげる。
失意のママによりそって「ママのよさがわからない男がバカだ」とささやき、ママを抱きしめるとママは抱きしめ返し、当然のようになるようになってしまったのだが、それが何もなかったかのように淡々と描かれる。
ルイ・マルが「なるようになってしまったのだからしょうがないだろ」と言っているような感じだ。
ローランがママとの関係を払拭するためか女の子の部屋で一夜を過ごし朝帰りをすると、そこには父と二人の兄がいるのだが、父親が以前に「あの悪ガキたちが納得すれば連れてくる」と言っていたのを思い出す。
起きてきたママも加わり、ローランが何をしてきたのかを悟った男たちが笑い出し、家族5人で大笑いする。
この一歩引いたような描き方はそれまでの映画にはなかった描き方で、そこが面白いと思わせる。
コローの絵をめぐって大人たちの権威主義と欺瞞も描かれるが、それらが素直に響いてこなかったのは前半で感じた嫌悪感のせいではなかったかと思う。


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