おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ビルマの竪琴 1985年 日本

2017-09-15 17:35:57 | 映画

監督:市川崑
出演:石坂浩二 中井貴一 川谷拓三 渡辺篤史 小林稔侍
   井上博一 浜村純 常田富士男 北林谷栄 菅原文太

ストーリー
1945年夏、ビルマ戦線の日本軍はタイ国へと苦難の撤退を続けていた。
そんな逃避行の最中、手製の堅琴に合わせて「はにうの宿」を合唱する一部隊がいた。
井上小隊長が兵士の心をいやすために歌を教えみ、堅琴で判奏するのは水島上等兵であった。
小隊は国境近くまで来たところで終戦を知り、武器を棄てて投降した。
彼らは南のムドンに護送されることになったが、水島だけは附近の三角山で、抵抗を続ける日本軍に降伏を勧めるため隊を離れて行った。
小隊はムドンで労務作業に服していたが、ある時、青いオウムを肩に乗せた水島そっくりの僧とすれ違った。
彼らは僧を呼び止めたが、僧は一言も返さず歩み去って行った。
三角山の戦いの後ムドンへ向かった水島は、道々、無数の日本兵の死体と出会い、愕然としたのである。
そして自分だけが帰国することに心を痛め、日本兵の霊を慰めるために僧となってこの地に止まろうと決意し、白骨を葬って巡礼の旅を続けていたのだ。
物売りの話から、井上はおおよその事情を推察し、もう一羽のオウムを譲りうけ、「オーイ、ミズシマ、イッショニ、ニッポンニカエロウ」と日本語を覚えこませる。
数日後、小隊が森の中で合唱をしていると、大仏の臥像の胎内にいた水島がそれを聞きつけ、思わず夢中で堅琴を弾き始めた。
兵士たちは大仏の鉄扉を開けよとするが、水島はそれを拒んでしまう。
その夜、三日後に帰国することが決まり、出発の前日、水島がとうとう皆の前に姿をあらわした。
収容所の柵越しに、兵士たちは合唱し、一緒に帰ろうと呼びかけるが、水島は黙ってうなだれ、「仰げば尊し」を弾奏し、そして森の中へ去って行く。
帰国の途につく井上のもとへ、オウムが届いた。
オウムは「アア、ヤッパリ、ジブンハ、カエルワケニハ、イカナイ」と叫ぶのだった。

寸評
リメイク版で、脚本、監督が同じとなれば、一体どんな変化があるのかと思って見始めたら、カラー化されている以外はほとんど同じだった。
全く同じ場所で撮影されたのではないかと思うシーンもあるし、全く同じカメラアングルで撮影されているシーンもあり新鮮さはない。
前作を見ていない人たちへの新作として見るべき作品なのだろうか?
僕が見た前作は総集編だと思うので、それからすると随分と丁寧に作られたなという印象を持つ。
前作の表現不足を補うような演出がなされていたような気がする。
井上部隊の敗走の様子は詳しい。
冒頭はイギリス兵の探索に対して、息をひそめ隠れている井上部隊が描かれる。
イギリス兵の注意を引き付けるために水島の弾く竪琴の音が聞こえてくるシーンもある。
途中で弾薬を積んだ荷車を1台失ったりしているし、敵軍から銃撃も受けているといった具合だ。

水島は助けてもらったビルマの僧が水浴びをしている隙に、その僧の僧衣を盗む。
僧は水島の行為を知っていながら見ぬふりをするのだが、その仕草は前作よりも強調されていると思う。
そして衣服と共に置いてあった腕輪も盗んだのだが、実はその腕輪は高僧が身に着けるものと後半で判明する。
そのことを通じて、水島がビルマに残ってこの慈悲に満ちた態度を取った高僧に弟子入りしたことが伝えられ、話としての一貫性が保たれているなど、細かい配慮がなされた脚本となっている。
細かいついでに言うと、飢えに苦しんでいたはずの水島の腕が筋肉隆々だったのは気になった。

井上部隊がたどり着いた村での出来事も前作とまったく同じ描き方だが、やがて「埴生の宿」を歌いだすシーンはこちらのほうが感動的である。
井上部隊は、敵軍の包囲網を欺くためにわざと騒いで手拍子を打ちながら歌う。
庭先に置いた弾薬を積んだ荷車の確保のために、祭りの踊りの様な振る舞いで取りに出る。
いつ銃撃されるかと冷や冷やしながらやっと戻ったところで、イギリス軍から「埴生の宿」の歌声が聞こえてくる。
水島はそれに合わせるように竪琴を弾く。
戦争映画では時々見られる、敵も味方も一緒になって歌うシーンだ。
暗闇の広場に出てきて歌うイギリス兵の姿は、カラー化されたこともあって美しい。
人間としての美しさだ。

水島はビルマに残る決心をし、仲間と別れの挨拶のためムドンの捕虜収容所前に現れる。
言葉を交わさず「仰げば尊し」を竪琴で奏でる。
「いまこそ分かれ目、いざさらば」とメロディが流れると、自然と僕の涙腺は緩んでしまった。
収容所の面々は水島の名を叫ぶ。
このシーンは川谷拓三を初めとする本作の面々の方が、その思いが伝わるものとなっていて感動的である。
北林谷栄が前作同様に大阪弁を話すビルマの老婆役で出ているが、相変わらず達者なところを見せ面白い。
戦争がもたらす、ものすごい悲惨性を描いた作品ではないが、それでも戦争は良くないと思わせる一遍である。


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