「マネーモンスター」 2016年 アメリカ
監督 ジョディ・フォスター
出演 ジョージ・クルーニー ジュリア・ロバーツ ジャック・オコンネル ドミニク・ウェスト カトリーナ・バルフ ジャンカルロ・エスポジート クリストファー・デナム レニー・ヴェニート クリス・バウアー
ストーリー
人気司会者リー・ゲイツの軽妙なトークがウリの投資情報番組“マネーモンスター”。
リー・ゲイツは巧みな話術とパフォーマンスを織り交ぜながら、株価予想や視聴者へのアドバイスで番組の看板スターとなっていた。
番組ディレクターのパティは、ゲイツの功績を認めつつも、生放送をいいことに台本を無視して暴走する彼に毎回手を焼いていた。
いつものように生放送が始まり、ノリのいいアドリブで視聴者ウケを狙っていた生放送の最中、彼の背後に一人の男が現れる。
その男、カイルは完全にテレビ画面にフレーム・インし拳銃でリーを脅して番組をジャックしてしまう。
犯人はゲイツが番組で推奨した株に投資して全財産を失ったと主張。
カメラが見守る中、興奮する犯人を必死でなだめようとするゲイツ。
番組で語られた株式情報を鵜呑みにして全財産を失ったというカイルは、自分をはめた株式のカラクリを生放送内で明らかにしろとパティに指示する……。
寸評
ジョディ・フォスターって、このようなエンタメ性に富んだ作品も撮れるんだと感心した。
とにかくテンポよく進み、資産運用についてわかりやすく説明されており、グイグイとストーリーに引き込まれていく。
ナマ番組の収録中ということで、番組全体を番組プロデューサーであるパティが仕切っており、カメラマンやスタッフにテキパキと指示を与え、手足のように使っていく。
メインキャスターのリー・ゲイツはパティからの指示を聞くために見えない通信装置を耳につけている。
犯人には聞こえないパティの指示がリー・ゲイツに届く。
パティは敏腕プロデューサーらしく指示は的確で素早いのだが、そのスピード感が観客を引き付ける。
ジョージ・クルーニーは少々軽薄なところはあるが憎めないリーを好演している。
ジュリア・ロバーツも知的でやり手のプロデューサーを静かに熱演していて、この二人のキャラが映画を引っ張っていた。
二人に代表されるコントロール・ルームと犯人との攻防に加えて、彼等とは別に警察の狙撃班が犯人逮捕あるいは射殺に動いており、その動きがスリリングに描かれていて目が離せない。
単なるヒーロものではなく、犯人カイルの彼女が説得に来たのだが、カイルにブチ切れて彼への悪態をこれでもかとわめき散らして当局の期待を裏切ったり、リーが番組を通じて株価操作を目論んだところ期待に反して失敗するなどの面白い場面を盛り込んでいる。
株式取引における裏の世界を描いていながら、そのようなシーンがあることで肩の凝らない経済映画となっている。
おまけにハッカーや韓国やアイスランドに散らばる頭脳を総動員して情報を集めるくだりもネット社会を活写していて楽しめる。
デイ・トレーラーを初めとして、現在の証券取引はネットを通じて即時決済されていく。
その中ではマネー操作でもって巨額な利益を上げている一部の投資家も存在している。
彼等に対する反感は庶民感情としてあるので、観客を犯人のカイルに感情移入させる作りも手際よい。
ニセ情報を信じてそれを垂れ流ししてしまうテレビ局とその影響の大きさ、好奇心だけが旺盛な野次馬たちや、テレビにくぎ付けとなった視聴者も、事件が終われば関心を亡くしてしまう状況なども描かれ、現代社会における警鐘ともとれる。
株価操作を行った会社側の描き方など、終盤は少々駆け足気味だったとは思うが、最後の場面はスカッとするよりもほろ苦いものとなっている。
それでもラストシーンはジョディ・フォスターらしく優しさを感じさせるものだった。