ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

コカインはなぜいけないのか?

2019-03-14 15:05:29 | 日記
タレントのピエール瀧がコカインを使用したとして、麻薬取締法違反の容疑で逮捕された。本人もその使用について「間違いありません」と容疑を認めているという。

この種の事件が起こるたび、いつも思うのだが、コカインなどの違法薬物はなぜ「違法」薬物とされ、使用が禁止されるのだろうか。使用していたことがバレて逮捕されると、当事者はなぜ極悪人扱いされなければならないのだろうか。

グーグル先生に伺ってみると、コカインとは次のような物質である(Wikipedia による)。「麻酔に効力があり、局所麻酔薬として用いられる。(中略)また中枢神経に作用して、精神を高揚させる働きを持つ。コカインを摂取(内服、静脈注射)した場合、中枢神経興奮作用によって快感を得て、一時的に爽快な気分になることがある。」

これだけのものが、なぜ使用を禁止されなければならないのか。「麻薬・覚醒剤乱用防止センター」のHPには、次のように書かれている。
「コカインはごく少量でも生命に危険な薬物です。主に鼻の粘膜から吸いこんで摂取するため鼻が炎症を起こし、肺も侵されます。この麻薬のもっとも特徴的な中毒症状には、皮膚と筋肉の間に虫がはいまわるような感覚が起こる皮膚寄生虫妄想というものがあります。また、脳への影響も大きく、痴呆状態となり人間として生きることそのものを放棄することになるのです。これらの他にも妊娠中のコカイン摂取が子供に及ぼす影響(コカインベービー)も重要な問題です。
コカインの恐ろしさは、どんな人も決してやめられないことにあります。」

なるほどねぇ。コカインは人体に多大の悪影響を及ぼす危険な薬物であり、一度摂取すると、やめられなくなる。そんなヤバい薬物なら、手を出さないに越したことはない。コカインに手を出すのは、実に愚かなことだ。これは、賢明でまともな人間なら、だれにでも分かる理屈である。

けれども、どうなのだろう。人にはだれも「愚行権」というものがある。これを国家が侵害することは、許されるのだろうか。(私事になるが、最近はとみに面倒臭がりになって、私は事あるごとにネット上の便利百科事典 Wikipedia に頼ってしまう。そんなわけだから、「愚行権」の説明も、Wikipedia からお借りすることにしよう。それによると、愚行権とは以下のような考え方である。)
「ジョン・スチュアート・ミルの『自由論』(1859年)の中で展開された、功利主義と個人の自由に関する論考のなかで提示された概念であり、自由を構成する原則としての「他者危害排除の原則(英語: to prevent harm to others)」から導出される一つの帰結としての自由として提示されたものである。
生命や身体など自分の所有に帰するものは、他者への危害を引き起こさない限りで、たとえその決定の内容が理性的に見て愚行と見なされようとも、対応能力をもつ成人の自己決定に委ねられるべきである、とする主張である。」

この説明からもうかがわれるように、他者に危害を与えないにもかかわらず、人から自己決定の自由を奪うことは、人権思想の理念に反する。麻薬取締法が基本的人権の要である「自由権」を剥奪してまで麻薬の使用を禁止するのは、一体なぜなのか。

Wikipedia に当たっていろいろ調べてみると、国家が麻薬の使用を禁止する理由は、行き着くところ、それが国益に反することにあるようだ。日本で「大麻取締法」が制定されたのは、昭和23年(1948年)のことであるが、このときに行われた衆院厚生委員会での法案審議で、当時の厚生大臣・竹田儀一はこの法律の目的について、次のように説明している。
「誠に麻藥の取締りの如何は民族の興亡に影響するといつても過言ではありません。從つて麻藥の害毒を排除しつつ一方医療上学術上必要なものを確保し以て國民医療の完璧を期するためには、國内的にも國際的にも適切且つ強力な施策が講ぜられなければならないことは申すまでもありません。」

たしかに、大麻を摂取して、国民の大半がまったりした気分になり、働く意欲を失えば、産業も社会も活気を失い、経済は停滞するだろう。それだけではない。自衛隊員の大半がドラッグにハマり、部隊の士気が衰えたりすれば、国家の防衛は一体どういうことになるのか。

けれども、その反対のケースを考えてみよう。国家によって麻薬の使用が禁止され、甘ったるいラブソングの放映が禁止されたとしよう。巷には軍歌があふれ、どこかの国のように、国営テレビのアナウンサーが勇ましい口調で「お国のために」とがなりたてる、そういう世の中になったとしよう。そういう国家の行き着く先を考えると、思わず身震いするのは、私だけではないだろう。覇気がなく、戦争を忌避する国民も、あながち捨てたものではない。ピエール瀧は、ビートルズ「イマジン」の影響を受けているのかも知れない。
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