ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

有志連合への参加 支持する理由、不支持の理由

2019-07-17 16:15:40 | 日記
きょうは産経新聞の社説《有志連合への参加 国益重んじ旗幟を鮮明に》(7月13日)を取りあげよう。
最右翼の産経新聞であるから、この社説は「有志連合」への参加を主張していると、そう予想することができる。参加を支持する論考なら本ブログですでに取りあげたのだから、産経の社説を今さら取りあげる必要はないのではないか、とみる向きもあるだろう。しかし私の見るところでは、この社説は、良くも悪くも参加支持派のお手本のようなものに仕上がっている。このお手本に対して、では(参加不支持派の私は)どのような反論をしたら良いのか、ーーこのこともついでに考えてみたいと思うのである。

この社説は、以下のような論理から成り立っている。

(a)ホルムズ海峡は日本の生命線である。
(原文:「イランに面したホルムズ海峡は日本向け原油の8割強、液化天然ガス(LNG)の2割以上が通過する。日本経済と国民生活にとって生命線そのものだ。」)

(b)ホルムズ海峡の危機は現実の脅威として差し迫っており、このことを証拠立てる数々の事例がある。(原文:「ペルシャ湾やホルムズ海峡の危機は現実のものだ。日本のタンカーが6月13日、何者かに攻撃された。7月10日には英タンカーが、イラン船から針路を変えてイラン領海付近で停船するよう命じられ、英海軍フリゲート艦が機関砲を向けイラン船を追い払った。」)

(c)この生命線を守るため、日本は日本向けタンカーの護衛を、他国任せにするのではなく、自らの手で行わなければならない。
(原文:「緊張緩和の外交努力はもちろん欠かせないが、それのみで航行の安全は保てない。日本向けタンカーの護衛を他国に任せきりにして、日本は関わらないという無責任な選択肢はとり得ない。」)

(d)日本が日本向けタンカーの護衛を自らの手で行うには、アメリカが主導する「有志連合」に参加し、自衛隊を中東地域に派遣する必要がある。
(原文:「米軍は日本を含む諸外国のタンカーや石油施設を命がけで守ってきたといえる。
その米国が協力を呼びかけている。日本の海上交通路(シーレーン)を守り、かつ中国・北朝鮮情勢をにらみ日米同盟を強固なものとする上でも、自衛隊の派遣を通じて日本が応分の負担をするのは当たり前だ。有志連合は、攻撃を抑止する有効な力にもなる。」)


産経新聞の社説の骨子はほぼ以上の通りであるが、ではこれに対してどのような反論が可能だろうか。
まず、(b)の認識がどこまで正しいかを確認する必要がある。ホルムズ海峡の危機は、ホントにイランによって仕組まれたものなのなのかどうか。ーーこのことを考える上で大いに参考になるのは、ごく最近に起きた以下の事例である。

「米国とイランの緊張が高まる原油輸送の要衝ホルムズ海峡を航行していたアラブ首長国連邦(UAE)の石油タンカー「リア」(全長約60メートル)が現地時間13日深夜、イラン領海内に入った後で消息を絶った。米各メディアが16日報じた。
報道によると、タンカーはUAEのシャルジャに向かう途中で急きょ航路を変更。イラン南部ケシム島沖合を最後に位置情報の送信が途絶えたという。
米メディアは、イランがタンカーを拿捕(だほ)した可能性を指摘。これに対し、イラン外務省報道官は16日、地元メディアに「ペルシャ湾内で技術的問題が起きたタンカーの支援要請を受け、修理のためイラン領海へえい航した」と主張した。ただ、UAEのメディアは当局者の話として、タンカーは救難信号を発していないと伝えた。」( JIJI.COM 7月17日 )

この報道には、3つの見解が示されている。(1)イランがUAEのタンカーを拿捕した「可能性」がある、とする米メディアの見方。(2)これに対して、「ペルシャ湾内で技術的問題が起きたタンカーの支援要請を受け、イランが修理のためこれをイラン領海へえい航した」と主張する、イラン外務省報道官の発言。(3)これに対して、「UAEのタンカーは救難信号を発していない」とする、UAE当局者の発言。

見られる通り、それぞれの立場によって主張はまちまちであり、真実は今もって「藪の中」である。このことが端的に示すように、産経新聞の社説が提示する事実認識(b)には、まったく根拠がないと言わなければならない。

世は何かといえば「エビデンスを出せ、エビデンスを!」と喧しいが、かくのごとく事実認識がまちまちで、事実が確固たるエビデンスとして機能しないのが実情である。そうである以上、事態はもはや科学(社会科学、人文科学)の対象ではなく、信念・信仰・臆測・思い込みの領域にあると言わなければならない。あなたはどちらの主張を信じますか、信じたいですか、ということなのである。

報道によれば、岩屋防衛相は16日、有志連合の構想について質問を受け、「現段階で自衛隊を派遣することは考えていない」と述べたという。為政者の立場からすれば、多額の予算措置を伴う以上、(臆測に近い)薄弱なエビデンスを根拠に、自衛隊を派遣することなどできないということなのだろう。

まぁこの私、天邪鬼爺だって、自衛隊の派遣が我々の税金と無関係の話なら、それほどうるさいことは言わないのだけれどね。
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