ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

労働力を補うために

2018-11-04 15:18:16 | 日記
きのう本ブログで紹介したように、入管法改正案をテーマに、主要4紙が以下
のタイトルで社説に取りあげている。

朝日新聞《外国人労働者 見切り発車の閣議決定》
読売新聞《外国人就労拡大 不安払拭へ政府は説明尽くせ》
毎日新聞《就労外国人 入管法改正案 これで支援ができるのか》
日本経済新聞《外国人の就労拡大は生活の安定が前提だ 》

きょうはこれらの社説がどういう切り口を見せているのか、それを見ていくこ
とにしよう。

まず朝日新聞の《外国人労働者 見切り発車の閣議決定》であるが、この社説
は次のように述べている。
先日閣議決定された出入国管理法改正案は、生煮えのまま、いわば見切り発車
の形で国会に提出された。だがこの改正案は、「社会のありようを大きく変え
る可能性をはらむ政策」に関わるものであるから、政府は「ごまかしや言い逃
れをやめ、真摯(しんし)な姿勢で国会審議に向き合わねばならない」。

とりわけ問題なのは、移民政策との関連である。この改正は「移民政策への転
換」をはかるものではないのか、との指摘に対して、安倍首相が国会で行った
答弁は不充分なものだった。ただ「目の前の人手不足に対処するため、とにか
く外国人に来てもらうようにする」という、それだけの目的でこの法案を提出
し、受け入れの対象となる外国人と、受け入れる日本人が、ともに安心して暮
らせる社会をどう作るのか、それを示す具体案がそこには欠けている。改正案
が提示すべき未来像を、責任をもって具体的に示すのが政府の役目ではないの
か、と朝日の社説は述べている。

次に読売新聞の《外国人就労拡大 不安払拭へ政府は説明尽くせ》であるが、
この社説も、朝日のそれと基本的には変わらない。読売は次のように述べてい
る。
「新制度の狙いと、将来の青写真を明示することが重要である。」
読売が具体的な要望として提示するのは、以下の点の説明である。
「1号(特定技能1号)は、3年以上の経験を積んだ技能実習生が無試験で取
得できるようになる。(現行の)技能実習制度とどう両立させるのか。分かり
やすく説明してもらいたい。」

また読売も、朝日と同様、この改正案の狙いと移民政策との違いにこだわりを
見せている。
「安倍首相は『即戦力となる外国人材を期限を付して受け入れる』と強調す
る。改正案は、人手不足が解消されたときの受け入れ停止を盛り込んだ。
 こうした措置だけで、『移民政策』と異なると言えるのか。十分な議論が欠
かせない。」

このように移民政策との関連について、充分な議論を求める読売の姿勢にして
も、また朝日の姿勢にしても、そこには、次のような思い込みがあるように思
われる。「日本の国民は(ドイツの国民と同様)移民政策に対して、拒否の態
度をとり、慎重な対応を求めている(はずだ)」。
立憲民主党の枝野幸男代表が国会の代表質問で、法改正について「否定してき
た移民政策への転換とどう違うのか。本格的な受け入れの前提となる整備は充
分とはいえない」と指摘したのも、同様の思い込みから来ているように思われ
る。だがこの思い込みは、ホントに根拠のあるものなのだろうか。

毎日新聞の《就労外国人 入管法改正案 これで支援ができるのか》はどう
か。この社説も、次のように述べる点で、朝日の社説と共通の視点を示してい
る。「日本の外国人政策の歴史的な転換点になる可能性をはらむが、新たな制
度案の完成度は低い。」
具体的な問題点がいくつかあげられているが、まず言われるのは、この法案が
問題の多い現行の技能実習制度を土台にして設計されているため、不安を感じ
させることである。
また、「特定技能」の具体的規定についても、問題点が示される。
「2号(特定技能2号)について、どの程度の熟練度が求められるのかは未知
数だ。1号、2号とも受け入れ業種は今後決まる。改正案には不透明な部分が
多いと言わざるを得ない。」

毎日の社説の特徴は、「生活者の視点」がこの法案では後回しになっているこ
とを、大きな問題として取りあげていることである。
「労働者は、地域社会で生きる生活者でもある。政府は受け入れの拡大に当
たって、外国人との共生社会の実現を掲げた。だが、改正案からは、共生に向
けた具体的な支援の中身が見えてこない。」
受け入れた外国人が日本で直面する生活上の問題には、これまで地方自治体が
対処してきた。そういう現場の負担にも、政府は目を向けなければならない、
と毎日は述べている。

一方、日本経済新聞の《外国人の就労拡大は生活の安定が前提だ 》は、「もっ
と議論を」、「もっと説明を」という姿勢に終始している。
「外国人の生活を安定させ社会不安を広げないための対策について、議論を深
める必要がある」とか、「政府は新制度への疑問に丁寧に答える必要がある。
」とか、「具体策を示してほしい。」とか、「(受け入れる外国人への)生活
支援策を政府は具体的に説明すべきだ。」などなど。

ただ、日経の社説に唯一、独自な点があるとしたら、それは、この社説が「国
内の労働者の給与低下や待遇悪化につながりかねない」と心配する声を取りあ
げている点である。この声にどう応えるかには、だが特に言及がない。

まあ、なんといっても社説である。物足りなさを禁じ得ないが、こんなものな
のだろう。
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