広島の美術展を訪れた事で、広島の宮島を舞台にした遺産相続の事件に関わる事になる大学生の久能整。過去から現在に至るまで遺産相続にまつわるトラブルで死者を出していた旧家の女子高生から、「自分も含めたいとこ同士4人が遺言書に従った謎を解く中で起こるであろうトラブルを解決して欲しい」とアルバイトを持ち掛けられたのだ。
常識を疑い、自分の今までの経験と勉強で得た膨大な知識というフィルターを通して、世の中の出来事を把握。多分そうだろうという推測を嫌い、全部の出来事には理由があると、とことんまで突き詰めて考える。カレー好きで自分の中に壮大な宇宙を持っており、友人や恋人がいなくても大丈夫という彼が、広島の旧家で呪われている一族の謎を解く。
角川映画全盛期に金田一耕助が謎を解く横溝ワールドの面白さを満喫した私には、一族とその関係者が一同に会する謎解きスタイルはとても懐かしい。久能整のフィルターを通した令和の犬神家の一族を見ているような気分になる。
しかし、横溝ワールドと決定的に違うのは、おどろおどろしい場面が一つもないところ。久能整のこだわりにくすっと笑い、彼が導き出した答えがそれぞれの登場人物に優しく寄り添おうとしているのを見て、相手に対して決めつけない自由さと彼のこだわりを感じる。令和の優しい謎解きを堪能する。
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私の後ろで観ていた人は、漫画もテレビドラマも未見だったようで「ちょっとなんだか分からない所が多かった」と言っていた。テレビドラマを少しだけでも見ていた方が映画を楽しめると思う。