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私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

小さいおうち

2013-01-05 20:30:32 | たまに読んだ本
戦前の東京、中流(中産?)階級のおうちで女中として働く少女。
奥様の世話をし、そしてお坊ちゃまの世話をする少女。
少女にお見合いの話が舞い込む頃には、生活と戦争は切っても切れない関係になるのだが、彼女がお仕えする奥様は、どこかふわふわしたままだ。小さなおうちを自分の好きなインテリアで飾り付ける。戦争の声がどんどん近くなってきても、「節約しなければならないのは分かっているけれど、心に余裕がないのは嫌なの。。。」といい、優しい夫とお金の事でいさかいが増えてくる。
しかし奥様からは社会に対する緊迫した思いは伝わってこない。奥様が興味があることは、自分のおうちであり、自分のおうちの中で感じられる幸せな思いだけだ。
でも逆にそれがとてもリアルでとても怖い。そうやって取り返しのつかないところに流れ着いてしまっても、もうどうすることも出来ないのだ。

***
私の両親は、女中である彼女がお世話をするお坊ちゃま世代だったが(もう少し小さかったかもしれない)戦争のせいだけでなく、残念ながら生活はとても苦しかったようだ。「おもちゃを買ってもらっている子もいたが、何も買ってもらえない子の方が大多数だった。おもちゃは作るものだし、なくても我慢するものだった。」
私が子供の頃、何かねだると決まってそんな話を聞かされたものだった。だから昭和初期にこんなモダンな生活をしていたとはにわかに信じがたかった。しかしそのふわふわした感じは、私にはとてもリアルに感じられた。
そのモダンな生活がちょっとずつちょっとずつ失われていく過程が、結果を知っているだけにとても切なく切なく感じられる。



小さいおうち (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


何か切なくてジーンとするこの絵本が小さいころとても好きだった。
この本の中で、この絵本とまた会う事が出来てとても嬉しい。

ちいさいおうち
クリエーター情報なし
岩波書店