ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

だから社会科を

2014-09-29 07:52:07 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「だから社会科」9月23日
 『イスラム国 思想統制を強化 歴史哲学芸術の授業を排除』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、イスラム国が実効支配する地域に、『歴史や哲学、公民、体育、音楽、図工の授業は廃止し、コーランやイスラム教の預言者ムハンマドの生涯や言行に関する授業を新たに導入するよう指示』しているということです。
 体育が廃止される理由は分かりませんが、廃止を指示されている他の教科については、その狙いは明らかです。思想統制です。この出来事は、権力を把握している者が思想統制を試みるとき、その手始めは、歴史や哲学、公民の廃止だということを示しています。逆に言えば、歴史や哲学、公民の授業を守っていけば、思想統制は行えず、どのような形の独裁も成り立たないということでもあります。つまり、「歴史や哲学、公民」は、私たちの多くが最善の統治形態であると考える、民主主義や自由主義を守る砦だということなのです。
 我が国において、「歴史や哲学、公民」といえば、社会科ということになります。小学校の社会科においても、「歴史」や「政治」についての学習があります。「歴史」の中では宗教や「石門心学」などの思想=哲学の扱われます。中学校の社会科では、歴史分野と公民分野が明確に位置付けられていますし、高等学校の日本史や世界史、倫理や公民は、言うまでもありません。そして、社会科から地歴公民倫理という流れは、一本の筋となってつながっているのです。
 我が国では、教育改革と言えば、理科や英語教育、道徳などに関心が集まっていますが、社会科を軽視してはいけないと思います。社会科を暗記教科などと批判する人がいますが、社会科によって社会を見る目、正当な批判精神を養うことは、本来最も重視しなければならないことであるはずです。
 社会科が暗記教科であるというのは誤解ですが、そうした誤解を生んだ原因は、教員の側にもあります。一部の教員の授業はまさに暗記授業だからです。一方で、最も「問題解決型の学習」が進んでいるのも、社会科なのです。2極分化が起きているのです。そして、理数系と英語と道徳が重視されるにつれ、相対的に社会科の研究家実践家が減り、暗記派が増えつつあるように思われます。今、目に見えにくいところで社会科の衰退が始まっているのです。それが民主と自由の衰退につながっているとまでいうと、誇大妄想狂と言われてしまうでしょうか。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 最後までできなかったこと | トップ | ハグまでなら »

コメントを投稿

我が国の教育行政と学校の抱える問題」カテゴリの最新記事