久々の「膝の悪い患者さん」シリーズです。前回と前々回の記事は下のリンクをたどってください。
・「膝の悪い患者さん」(2006年9月14日)
・「続・膝の悪い患者さん」(2006年11月18日)
当院は「全国冷え症研究所」に所属していて、その山口分室を併設しています。山口県内では当院だけです。その「全国冷え症研究所」のオリジナルの治療法が下の写真の「眠り姫」という機械を使った治療です。
★眠り姫
★後ろから見たところ
この機械は温熱治療を施すものなのですが、何で温めているのかというとお湯で温めています。上の写真の右側に見えるものがボイラーで、足を入れている装具の中を数十メートルのパイプが通っていて、間接的ではありますがお湯によって温めているのです。お湯で間接的に温めることによって、足湯の最大の欠点であった「湯冷め」の問題を解決することができたのです。仕組みとしては韓国などの家庭で取り入れられている「オンドル」に似ています。
電気のヒーターなどで温めるものは沢山販売されていますが、決定的な違いは湿熱か乾熱かということです。お湯で温めるということは湿熱ですので、体への熱の浸透度が違います。また湿熱の優しい熱はとても心地よいものです。電気アンカと湯たんぽの違いをイメージしていただければ良いかと思います。
「冷え症治療」に用いる機械なのですが、その応用度は広く、膝や腰の治療、うつ病などの精神疾患、婦人科疾患などにも使います。以前記事にした「逆子の治療」の時にもお灸をすえる前に使います。そうすることによっておなかの中の赤ちゃんがとても喜ぶのです。
お湯の温度は大体50~60℃に設定します。「ちょっと熱いのでは?」と思われるかもしれませんが、その位が一番心地よいのです。「これからの季節にはちょっと・・・」と思われるかも知れませんが、昨年外の気温が35℃以上ある真夏にも使い続けました。さすがに患者さんから苦情が出るのではと危惧していましたが、苦情を言った人はひとりもいませんでした。相対的に暑がりの男性でもみんな汗をかきながらでも治療を受けていました。みんな心も体も冷え気味なのです。
さて、本題の「膝の悪い患者さん」ですが、最近は膝の悪い患者さんにもほとんどこの機械を使用します。膝の悪い人に温熱治療というのはよく行われますが、そのほとんどは膝を直接温めています。しかも表側、お皿の周辺を温めることがほとんどです。当院でも以前はそのようにしていました。ところが最近はお皿の周辺は温めもしませんし、電気治療も行いません。足先を温めるこの治療と、膝の裏側から温める超音波治療を主体にしています。その方が圧倒的に効果が出ます。
それでこの「眠り姫」を行うときには五本指の靴下を履いていただきます。一番温めたい場所は足の指、足の裏、足首で足の甲やすねの部分は温めません。足の指をまんべんなく温めようと思ったら、普通の靴下ではダメで、五本指の靴下が必要なのです。
それで、その膝の悪い患者さんにもこの五本指の靴下を履いていただくことにしました。今回もまた、文中の「○○○・・・」は患者さん、「○○○・・・」は僕、そして(○○○・・・)は僕の独白です。
それではいきます。
「それでは膝の治療を行いますが、まずは足を温めていただきます。そのためにこの五本指の靴下に履き替えていただきますが、何故かと言うと、血液循環というのは心臓から足先を巡ってまた心臓に戻るのですが、足の指先が冷たかったら、血液は冷たくなって膝に戻ってきます。それではいくら膝を温めても膝の温度は上がりませんから、それで足の先を温めていただくのです。そして足の指をまんべんなく温めるために五本指の靴下が必要なのです。それではこれに履き替えてくださいね。」
「あたしゃ、履くのが大変じゃから、この五本足靴下ちゅうのは好かんのよねぇ・・・」
(そんなに足は沢山ねえだろ、どんな生き物だよ・・・)
「まあ、そう言わずに膝のためですから、頑張って履いてくださいよ。」
慣れてくればいいのですが、最初は履くのに苦労される方が多くて、下の写真のようになったりします。
「あぁ、小指の部屋が留守になっていますね。」
「絶対にこれをはかなきゃいけんの?」
(あ~あ、ちょっとキレかけてるよ)
「こうやって、手の指や足の指を動かすことも体には良いので、頑張りましょうよ。」
そしてようやく履けるのですが、
「ほんと、あたしゃ、この五本足が大嫌い!」
(だから五本足じゃなくて、五本指だって)
「まあ、そう言わずに頑張りましょうね。」
とまあ、毎日がこんな事の繰り返しです。ばあちゃん、ちょっとキレていますから、「五本足→五本指」と訂正してしまうと完全にキレてしまいます。だから放っておくのです。