ハイカーホリックの介護日記~機能訓練指導員の一日~
体の衰えは筋肉の衰えです。筋肉を復活させる事に全力を尽くします。
打倒サルコペニア。まずはウェブで!
 



「先生は自分が痛い時とかはどうするの?、奥さんにやってもらうの?」

こういう質問をちょくちょく患者さんからいただきます。妻も治療家ですから、治療をしてもらう事は可能です。ですが、仕事が終わって疲れているのに、それから何かしてくれと言うのは気が引けます。

それに妻にしてもらうにしても、僕が妻を治療するにしても、「そこはそうじゃない」とか「そこは違う」とか結局ケンカになってしまいます。ですから家庭を円満に保つためにもやらないし、やってもらわない方がいいのです。

そしたら、どうするのかというと、どうもしないのです。基本的には何もしません。痛みと云うのは、それ自体もつらいものですが、その痛みの原因が何なのか、いつまで続くのか、そういう事がわからないから不安になるんですね。だから自分に起こる事は大体のところでわかるので、何もしないのです。

実を云いますと、何もしないというのはちょっと違っていて、僕の治療院は「山」だと思っています。休みの日に山に登る事が僕自身の治療だと思っています。心が癒されたり、体も痛いところが無くなったりするので、立派な治療なんですよね。しかもこの治療院はタダなんです。そして日本中いたるところにあります。無理強いするつもりはありませんが、こういうのも有りだと思うのです。

僕の山仲間で「風邪を引いたら、体を標高で300mほど上にあげると治るぞ」と云った人がいました。またそれをバカだから実行するんですね。治りはしませんでしたが、風邪を引いていても300m登る事ができたのですから大したものです。これもオススメはできませんが、きっと有りだと思うのです。

森林セラピーといって、森林浴の持つ治療効果を研究している大学の先生もいるんだから、きっと何かしらの効果はあるのだと思います。副作用もないしね。薬のような即効性は期待できないのかもしれないけど、多分良い効果は有るはずです。もっとも僕はそういう効果を期待して山に行くわけではなくて、結果としてそうなのかなと思っているだけなんです。

本格的な梅雨で、今日は雨です。僕の治療院は閉まっているわけではないのですが、残念ながら通院は来週まで持ち越しです。

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久々の「体・健康」カテゴリーです。本来はこれがメインのはずでしたが、いつの間にかというかほとんど最初からメインカテゴリーからは外れています。

「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」は昔からある病名ですし、患っている人も多いのですか、どういうわけか病院で診断される事がすくないので、なじみの薄い病気です。

それが先日、NHKの「ためしてガッテン」で取り上げられたものだから、知る人も増えたようです。僕自身、NHKでやった内容が全て正しいとは思えないのですか、天下のNHKに逆らっても仕方ないので、概略を知りたい方はこちらのNHKのホームページを見てください。

2005年に「マウス肩」というタイトルで記事にした事があるのですが、それも胸郭出口症候群の一形態だと思います。

それで先日、何度かおみえになっているなじみの患者さんが久々に右肩から右腕にかけて痛いと訴えて来られました。かなり体格の良い男性で、視診だけでもかなり痛そうでした。

「先生、すごく痛いんだけど、普通の肩凝りとも違うようだし、寝違いでもないようなんだよね。これって一体何?」

と、顔をしかめてたずねるので、

「そうだね、病名を付けるとすれば、胸郭出口症候群かな」

と答えました。するとその患者さんは僕の顔を見て、

「え~っ、巨漢デブ症候群?」

と叫びました。

誰がそんなこと言ったよ。

「違うよ、キョーカクデグチショーコーグンだって」

「あ~っ、あまりにもピッタリな病名なんでビックリしたよ。先生、滑舌悪いんじゃないの?」

オメ~の耳が悪いんだって。

胸郭出口症候群は片側の肩から上肢にかけて強い痛みを伴います。原因は長時間の同じ姿勢にある事が多いのですが、急性のものの中には、引っ越しなどで急激に沢山の段ボールなどを抱えた事が原因のものもあります。最近は仕事でパソコンを長時間使う人が多いので、それが原因になっている事が多いです。

痛みの強い疾患ですが、これは治ります。少し時間はかかりますが、ほとんどの場合治ります。ただ、治っても姿勢というものを意識して仕事や生活をする必要があると思います。



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下の写真は当院がサポーターやコルセット、衛生材料などを仕入れている「ダイヤ工業」という会社の「DU525」という商品です。

★DU525


この時期、毎年、この商品が1組か2組売れます。夏山登山、とくに富士山に登られる方が求められます。今年も富士山ではありませんが、7月末に「表銀座」を縦走される女性が購入されました。

日本人であれば一生に一度は富士山に登ってみたいと思うようで、富士登山は大人気です。当院にも毎年のように中高年世代の方が「富士山に行くから」と膝などの治療に来られます。

大体が「にわかハイカー」の方が多く、春頃に富士登山の計画を立て、そのために5月頃から徐々に近場の山などでトレーニングを開始されるようなのですが、この時期になって膝の不調を訴えて来られます。

昨年も「どうにかしてくれ」と出発の2日前になって女性の方が来られました。そういう方にこのサポーターをオススメします。

登山用品メーカーの「キャラバン」からも同じ商品がキャラバンブランドで販売されていますから、登山用の膝サポーターとしてうってつけなのだと思います。

従来の膝サポーターは膝関節全体を覆うものがほとんどです。固定が本来の目的ですから、それはそれでいいのですが、登山のように数時間連続して歩くとなると、ちょっと邪魔になります。しかも屈伸が制限されますから歩きにくくなります。

そこでオススメするのがこの「DU525」というサポーターなのです。とても軽い素材でできていますから長時間装着していても苦になりませんし、着け心地がソフトで蒸れないので快適です。

痛みが全くなくなるわけではありませんが、とりあえずこのサポーターを付け、ダブルストックで登るように指導します。

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まずは2010年6月5日の読売新聞朝刊に掲載された、読売新聞編集委員・芥川喜好さんの「時の余白に」というコラムを読んで下さい。かなりの長文ですが、頑張って書き写しましたので、最後まで読んでみてください。

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     「壁を払えば光が見える」(芥川喜好)

 体内に詰まった石の破砕治療を受けて病院から出てきたところです。何度目かの入院でしたが、頑固な石らしくいっこうに砕ける気配がありません。
 強い衝撃波で体外から3千回たたきます。苦痛の大きい、消耗の激しい治療です。効果がなければ、患部にドリルつき内視鏡を入れて直接砕くことになるらしい。うむ。なかなか手荒にやってくれます。
 10年前、肺がんの疑いで入院手術した時は、口から入れた内視鏡を気管の奥までつっこまれて往生しました。40年前、顔面骨折した時はジャッキで持ち上げた頬骨を太い針金で固め、ひと月後に抜く際にはペンチでぐいぐい引っぱられて気絶しそうになりました。
 「ま、土木工事みたいなもんですよ」と笑っていた医師の顔を忘れません。
 人間の体は意外に頑丈にできている、という考えもあります。自分の体験した範囲で言ってもそれは半面の真理ですが、少しバランスを失しただけで崩れるもろさもある。わずかな痛みが耐えがたいこともある。むしろ繊細で壊れやすい細工物です。
 医は人の痛みに寄り添うものであってほしいと願う人は多いはずです。当方も病院を出るたびに、もっと穏やかな、苦痛の少ない道はないものかと、夢想します。
 患者の対応に追われる現場からは「ぜいたく言うな」と一喝されそうですが。

 1人の医師の思想と実践に、しばらく思いをめぐらしていました。日本東方医学会名誉会長という肩書をもち、東京有楽町でクリニックを開く谷美智士さん(72)です。
 現代の生活において、通常、「医者にかかる」とは西洋医学の世話になることです。最新の機器、多様な検査データによる診断、それに基づく高度な医療。みな西洋医学の領域です。
 一方、少なからぬ現代人が漢方薬や鍼灸など東洋医学のおかげで日々の平穏を保っている事実も、厳として存在します。
 両者の間には、どうも高い壁があるらしい。大病院の医師の前で代替医療を話題にして一蹴されたことがあります。「科学」の世界の住人が自分の信じる科学以外の世界に不寛容なのは、珍しいことではない。
 しかし、医師とは何よりも生身の人間の生死に向き合わなければならない存在だと谷さんは考えます。重要なのは科学的かどうかの議論ではない、目の前の患者を、実際に、救う治療ができるかどうかだーー。
 手だてを尽くす。そのためには西洋医学と東洋医学が手を携え、互いの長所を生かしあう総合的な医療が必要ではないか。早くからそう考え、40年の実践を通して東西結合の実を挙げてきた医師なのです。

 出発点には自身の痛恨の体験があります。長崎大学医学部で内科を修め、迎えた卒業の当日、息子の晴れ姿を見に来た母が突然苦しみ出し、郷里宮崎の病院で胃がんと診断されます。
 すでに進行した状態でした。手術の後、激しさを増す苦痛の前で、自分の学んだ最新医学はなすすべもない。苦痛を和らげ、母に「気持ちがいい」と言わせたのはツボを温める温熱療法であり鍼治療でした。
 末期の母に安らかな時間をもたらしたのは、まぎれもなく東洋医学だった。その衝撃が青年医師の道を決定づけます。
 中国医学3千年の文献を読みあさり、生薬3千種の世界へ分け入り、自らを実験台に鍼灸の効能を試します。周囲からは奇異の目で見られました。
 日本で初めて鍼麻酔手術に成功し、東京女子医大で鍼麻酔による帝王切開も手がけます。その後、女子医大に開かれた漢方専門外来の診療を託されます。後進の教育にも力を尽くしました。先駆者の歩みです。

 西洋医学は精密な診断、緊急の治療、高度な手術などを得意とします。治すものは「病気」です。東洋医学は体全体のバランスを見きわめ、患者個々の状態に沿って、生薬や鍼灸の力で「その人」を治します。
 谷さんの医療は双方を連携させ、最終的には生薬と食物の力で人間本来の自然治癒力を高めていきます。「未病」の段階での治療も重視します。
 がんを始め、現代は治療の困難な自己免疫疾患が増えています。文明下での生活環境の激変が背景にはありそうです。
 考えてみれば排ガスを空気のように吸い、化学物質の染みた建物に住み、旬の勢いの失せた食物を食らい、身体の自然からはるか遠い所へと人間は自らを追い立ててきました。虐げられた現代の心身へのいたわりが、谷さんの医の根本です。
 5年前に胃がんの手術をし、抗がん剤を拒否して生薬治療を続ける作家のNさん(70)は言います。「薄紙をはぐように体が回復して自分で治っていく過程がよく分かります」。穏やかに力みなぎる術後の日々です。
 「いいものだから広げたいと思ってやってきたが、まだまだ壁が」と谷さんは言います。それでも漢方外来を置く大学病院や総合医療を掲げる医師は少しずつ増えているようです。
 昨年2月には、初めて東西の医師ががん治療をめぐって主張をぶつけ合う討論会が開かれました。今月は、谷さんが東洋医学による自己免疫疾患の治療実績を発表します。
 一筋の光明が見えてきたような気がするから不思議です。
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 読売新聞の編集委員の方にこういうコラムを書いていただけるというのは、東洋医学を生業としている者にとっては、とってもありがたいことです。
 明治の時代に日本の東洋医学は徹底的に迫害を受け、「西洋医学絶対」の制度が確立されました。そんな中でも細々と受け継がれ、この方のように支持される方がいらっしゃるというのは、東洋医学が良いものであり、必要とされているということに他ならないと思います。
 ただ、この芥川さんの文章については概ね賛成ですが、何ヶ所か「?」の付く場所もありますので、それについて少し述べてみたいと思います。

 この文章では「西洋医学vs東洋医学」といった感じの対立構図のように書かれていますが、本来の西洋医学は東洋医学と対立するものではないと思います。何故なら「体を正常な状態に戻す」という目的は同じだからです。
 「ホメオスタシス(homeostasis)」は「生体恒常性」と約されますが、健康とはこのホメオスタシスが正常に保たれた状態のことを指します。この言葉が生まれたのはヨーロッパですが、東洋医学の目的とも合致します。
 また、マッサージが生まれたのもヨーロッパです。体に直接手を当てて病気や痛みを取ろうという考え方は、東洋医学と按摩や指圧と一致します。
 日本で「足ツボマッサージ」などと言われている治療法は、リフレクソロジー(反射療法)に由来します。リフレクソロジーの考え方が生まれたのもヨーロッパです。よく「足の裏には沢山のツボがあるのよね」と患者さんは言われますが、東洋医学で言うところの正式なツボ=経穴は、足の裏には1ヶ所、両足で計2個しかありません。ですから「足の裏にツボが沢山ある」というのは、東洋医学ではなく西洋医学に基づくものだと言えます。

 では、芥川さんの言われるような対立の構図はないのかというと、実は大いにあります。日々の仕事の中で大いに感じることですから、決して間違いではなく真実だと思います。ただ、対立しているのは「西洋医学」ではなく「日本独自の西洋医学」だと思っています。
 先にも述べたように、明治の時代に「西洋医学でないものは医にあらず」という考え方が固定されました。そしてマッサージやリフレクソロジーのような西洋医学の中の東洋医学的要素も排除されてしまいました。病気の原因は検査によって調べ、治療は投薬や手術によって行うというスタイルが確立されたのだと思います。
 ですからヨーロッパやアメリカの方がずっと東洋医学には寛容で、うまい具合に共存しているように感じます。芥川さんの文章にもあるように、日本の医師には東洋医学に対して不寛容な人が多いというのも事実だと思います。

 たしかに日本においては西洋医学と東洋医学の間には高い壁があります。健康保険にしても西洋医学には適用されますが、東洋医学にはほんの一部を除いて適用されません。適用されたとしても医師の同意が必要だったり、いろいろな規制が加えられて非常に運用しにくいものになっています。ほとんどの医師は同意などしてくれませんし、医師会によっては同意した医師を処分するところまであります。
 また長い間の「西洋医学絶対」の歴史の中で、「政・財・医」の中に互いの利益のために連携するという構図が出来上がっています。こういう構図が東洋医学への徹底的排除につながっているのだと思うのですが、この構図は簡単には崩れそうにもありません。あれだけ長年にわたって自民党を支持してきた医師会が、あっという間に民主党支持に変わった変わり身の早さと節操の無さには驚きました。これもこの構図を維持するためのものだとすれば納得できます。

 ただ(ここからが本題なのですが)、一番の大きく高い壁は「患者さん自身の意識」です。この意識も長年の「西洋医学絶対」の制度の中で培われたものだといえばそうなのですが、完全に医療とは西洋医学のことで、東洋医学はまるで「まじない」かなにかのような扱いです。
 確かに東洋医学に対して芥川さんのように考えられる方もいらっしゃいますが、このような考え方を持つ方はごく少数です。さらに芥川さんのように考えられる方も最初から東洋医学に対して理解があったわけではなく、西洋医学に失望した人がほとんどです。つまり西洋医学に対して失望したり、西洋医学の限界を感じたりして初めて東洋医学の良さに気付くのです。我々の患者さんに看護師さんが多いというのも、西洋医学の限界というのを毎日のように目の当たりにしているからだと思うのです。
 ですから、西洋医学に疑問を持つことの無い多くの人たちは、東洋医学に対しての理解などなく、東洋医学に対して理解しようと努力することすらしません。作家のNさんのように「薄紙をはぐように体が回復」することを「治っている」と感じることのできる人はごくわずかだということです。

 作家のNさんは抗がん剤を拒否して東洋医学に救いを求められていますが、我々の所に来るがんの患者さんのほとんどは、抗がん剤の苦痛を取り除くために来院されます。つまり西洋医学の抗がん剤で生じる苦痛が西洋医学では取り除けないので、仕方なく東洋医学に救いの手を求められるのでしょう。
 東洋医学は「薄紙をはぐ」くらいの効果しか出せない体に優しい治療ですから、抗がん剤のような強力な化学物質の前には「蟷螂の斧」のようなものです。しかも即効性を期待されますから、はっきり言って「無理」と思いながら治療をします。でもそれを言うわけにはいきません。何故なら「抗がん剤をやめる」と言われると困るからです。
 現在東洋医学の治療をやっている人たちは鍼灸であれば「鍼灸師」、漢方薬であれば「薬剤師」の資格でやっている人たちがほとんどです。谷先生のように医師の資格でやっている人たちはわずかです。その医師でない資格の人たちは、医師の治療の否定はできないことになっています。日本の医療の世界での医師の力は絶対なのです。
 ですから抗がん剤をもしやめてしまって、その後に亡くなり、遺族が「鍼灸師が抗がん剤をやめさせたせいで亡くなった」と訴えられたら、誰も助けてくれません。死人に口無しですから、反論もできないのです。

 本来、西洋医学か東洋医学かという選択肢があれば、互いの長所・短所を理解した上で患者自身が選択するというのが正しい姿だと思うのです。
 しかし、日本においては芥川さんも述べられている通り、「現代の生活において、通常、「医者にかかる」とは西洋医学の世話になること」です。ですから患者さんが東洋医学を選択したときのほとんどは、西洋医学で結果が出なかった時です。それも散々いろんな病院を転々とした挙句、疲れ果てて、まさしく「ダメ元」の気持ちで来られるケースが非常に多いのです。
 問診をすれば、大体のその患者さんの「つもり」というのがわかりますので、「ダメ元のつもり」で来られた方への治療はモチベーションが上がりません。「半人前」という批判は甘受いたしますが、僕にも感情はありますから、「ダメ元」で来院された方よりは、「期待感」を持って来院された方に力が入るのは許してください。
 今日もご主人の車で来られた奥様が、「主人も腰が悪いので診てください」と言われましたが、当のご主人はあまり乗り気ではなく、しつこく勧める奥様に「(治療を受けても受けなくても)どっちでも良い」と言われました。その時点でこちらから治療はお断りしました。本気で治す気のない人は治りません。そんな人に治療をしても互いに不幸な結果が待っているだけです。

 論点が少しずれてしまいましたので元に戻します。以前来られた患者さんがこのような事を言っておられました。その方の息子さん夫婦はドイツに出張で住んでおられて、そこに観光がてら行ったそうです。その時にお孫さんが熱を出したので、病院に連れて行くと「風邪だから家でおとなしく寝ていなさい」と言われて、薬も何も出なかったそうです。このことに対してその方は「ふざけている、ありえない」とおっしゃっていました。
 でも、実はドイツの医者の対応がグローバルスタンダードです。医者の仕事はその病気が何であるかを判断し、ベストな治療を選択することです。風邪であれば3日程度温かくして寝ていれば自然に治ります。余計な化学物質を体内に入れる必要はありません。ですからそのドイツのお医者さんの対応は素晴らしいと思うのですが、これが日本だったら診断は一緒でも、薬が4種類くらい出たり、解熱剤を注射したりします。この治療にほとんどの方は疑問を持たないと思います。
 最初に述べた「日本独自の西洋医学」とはまさにこのことです。つまり日本の西洋医学はグローバルスタンダードではないということです。原因は医療を施す側にもあると思いますが、最大の原因は患者側の意識の方にあると思います。日本国内でドイツの医師のような対応をすれば、「ダメ医者」「ヤブ医者」の烙印を押されかねませんし、第一その病院は潰れてしまいます。
 「手当て」という言葉は、痛い場所に手を当てると不思議と痛みが緩和されることから生まれたのですが、現代では手を当てる前に消炎剤の湿布を貼ったりします。咳をすればすぐに風邪薬を飲みます。何でも待ったなしです。湿布であろうと風邪薬であろうとすべて化学物質です。本来、薬はいろんな手を尽くした挙句の最後の切札のはずですが、日本では薬が最初の選択肢です。これを変だと感じないところが変だと思うのですが、このことを患者さんに言ってもこちらが「変だ」と言われます。

 全世界で流行した新型インフルエンザにおいて、その特効薬といわれたタミフルの消費量の約80%を日本人が消費したそうです。全世界の人口の2%しかいない日本においてです。
 ですから、インフルエンザに感染して発病した時の最初の選択肢に多くの場合タミフルを選択するのは日本人だけだと思われます。一昨年あれだけ子供に投与するのは危険といわれたタミフルが、昨年は当たり前のように子供に投与されていました。
 そこに本当に「患者優先の医療」が存在するのかは甚だ疑問です。いろんな思惑が錯綜していると考えるのは考えすぎではないはずです。

 先の抗がん剤の治療だけでなく、あらゆる病気や痛みにおいても、西洋医学的な治療の後に、もっとわかりやすく言えば化学物質を体内に入れた後に、あるいは入れながら東洋医学の治療をしなくてはいけません。
 化学物質と東洋医学の治療というのは作用的には逆方向のものが多いので、思うような結果が出ないケースが多いように思います。「お前の技術が未熟だからだろ」と言われればそうかもしれませんが、先の谷先生のお母さんが鍼治療や温熱療法が気持ち良いと感じたのは血行がよくなり体が温かくなるからだと考えられます。それに対し抗がん剤、湿布などの消炎剤は症状を止めることはできても、血行を悪くし、交感神経を緊張させますから、リラックスできなくなります。
 このブログで何度か登場した「逆子の患者さん」は妊婦さんですから、薬をほとんど飲んでいません。だから東洋医学の治療がよく効くのではないかと考えています。

 「まだまだ壁が」とおっしゃった谷先生の言われる「壁」というのは、単に西洋医学と東洋医学との間の壁という単純なものではなく、もっと複雑に入り組んだ崩しがたい壁のように感じます。
 西洋医学と東洋医学とが、お互いの良いところを引き出し、連携できれば、患者さんはもっと幸せになれるはずです。ところが日本においては、その壁を患者さん自身が作っているのも事実だと思うのです。
 ふつうは「薄紙をはぐ」ような悠長な治療は受け付けてくれません。何でもすぐに結果を要求されます。だからみんなすぐに薬を使うのでしょうが、こういう治療は東洋医学にはなじみません。結果が出るのに1日だけではなくて、せめて3日くらいの余裕を持って欲しいといつも思いますが、とにかく日本人はせっかちです。
 芥川さんの言う理想は素晴らしいと思いますが、実現するのはなかなか困難だと思います。残念ながら僕には一筋の光明など全く見えません。


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プロ野球が開幕し、テレビを見ているといろんな選手がファイテンのラクーワネックを付けているのを目にします。今シーズンは阪神の金本選手、藤川選手、下柳選手、新井選手、日本ハムのダルビッシュ選手、ソフトバンクの和田選手などのモデルが発売されましたが、みんなちゃんと付けてますね。

そのほかの選手もいろんなモデルを付けています。よく「野球の選手は付けているけど、サッカーの選手は付けていないよね。サッカーの選手には人気がないのかなぁ」と言われたりするのですが、これはプロサッカー選手は首にネックレスなどを付けて試合に出場するのを禁止されているからなのです。確かにちょっと危ないかもしれません。

ところで大人気のラクーワネックなのですが、患者さんからは「首につけるとちょっと目立ちすぎるので手首なんかに付けるのはないの?」というご質問をよくいただいていました。今までも手首に付けるものはあったのですが、素材が硬かったり、ネックのようにスポーツ中に付けるには不向きなものだったりと、イマイチ、ピンとくるものがなかったのです。

ところが今回、ラクーワブレスという商品名でオススメできるものが発売されました。しかもX30で登場です。なかなかスポーティなデザインで、軽く柔らかいので、入荷してから結構売れています。

★RAKUWAブレスX30


★装着したところ(リバーシブルです)



値段も定価1575円とお手ごろです。オススメです。

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昨日の「RAKUWAネックAir X50高橋尚子モデル」に続き本日は「パワーテープX30高橋尚子モデル」のご紹介です。

★「パワーテープX30」高橋尚子モデル




こちらもネック同様に高橋尚子選手監修のデザインが採用され、チタンテープの中では現在最高峰の「X30」が採用されています。

高橋選手らしい明るいデザインで、走るのが何だか楽しくなりそうです。

2月28日には「東京マラソン2010」が開催されますが、昨日の「RAKUWAネックAir X50高橋尚子モデル」とともに、多くのランナーが付けて走る姿が見られるかもしれませんね。



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「RAKUWAネックAirX50高橋尚子モデル」が発売されました。高橋尚子選手はもともと「(株)ファイテン」の所属選手でしたから、これまでもいろいろと商品が発売されてきました。でも今回の商品は高橋選手らしくて、とっても良いと思います。

★「RAKUWAネックAir X50」高橋尚子モデル




留め具の目隠し部分のイラストは高橋選手の監修らしく全体的に明るい感じになっています。またネック部分のイラストは「ウサギとカメ」と「四つ葉のクローバー」が描かれています。

先日ご紹介した「ファイテンの謎」という本の中で、高橋選手は「最初はネックは走るときに気になるのでしなかった」と書いてありました。そういう高橋選手の要望にこたえて出来たのが、ネックの「Air」という商品だったのです。この「Air」という商品が2005年の東京国際女子マラソンの劇的な復活優勝の支えになったとファイテンの商品説明には書いてありました。

確かに普通のネックは走るときの振動でプラプラした感じになります。この「Air」はとっても軽く、普通のネックのような留め具がないので、付けている感じがあまりしません。これならばあまり邪魔にならないと思います。

今までは「Air」にはX50モデルがなかったのですが、今回初めて「高橋尚子モデル」としてX50タイプが登場しました。

それにしても高橋選手というのは楽しそうに走りますよね。あんな苦しいことを楽しめるなんてスゴイと思います。あの笑顔で走られたら「自分もちょっと走ってみようかな」という気持ちになるような気がします。今日のマラソンブームも高橋選手の影響というのはあると思います。

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★ファイテンの謎★


「スポーツ選手がよくやっているけど、本当に効くのか?」とか「チタンは金属なのにどういう理由で体に良いのか?」など、ファイテンの商品への疑問の声はよく耳にします。多分誰もが一度は思うことなのではないかと思います。この本はそんな疑問を解明すべく、角川書店が「魔法の首輪研究会」なるものを立ち上げて、㈱ファイテンの社長や、愛用しているアスリート、お医者さんなどの研究者へのインタビューを中心に編集した本です。㈱ファイテンが出した本ではなく、あくまでも多くの人の疑問を代表して角川書店が解明のために出版した本というところがミソです。

当院が㈱ファイテンの商品を扱いはじめたきっかけは「e-ウォーター」という商品でした。湿布や塗り薬、注射等に含まれる消炎鎮痛成分が実はケガや痛みの治りを遅らせていると気付いたのがはじまりで、マッサージをする時の滑剤として何か消炎鎮痛成分を含まない物を探していました。そんな時に丁度、㈱ファイテンの人と出会い、「e-ウォーター」を紹介され、実際に使ってみたところ、よく伸びるし、成分の中には体に良いとされる「金」を含んでいるし、何よりも本来は化粧品(乳液)ですから、肌へのトラブルもないということで、まさにマッサージにはうってつけの商品でした。

ただ、消炎鎮痛成分を含むものは使った時に「スーッ」とするものが多く、何となく効きそうな気がするので、患者さんの中にはそういうものを好まれる方も多く、最初は不満を言われる方もいらっしゃいました。しかし、消炎鎮痛成分は炎症症状があるときだけに使用し、それ以外の時にはできるだけ使用しないほうがよいということを地道に説明していった結果、この「e-ウォーター」もだんだんと受け入れていただけるようになりました。

★ファイテン「e-water」★


本を読み終えても結局「何で効くのか」ということはよくわかりませんでした。阪神の金本選手が文中で「そんなん、ようわからん。でも結果がいいから使う。」と述べておられますが、その言葉が答えのように思いました。悪いものであれば一時的にブームになったとしてもそのうちに消えていくでしょうし、アスリートの人たちも使い続けないはずです。

効く理由はよくわからないが良い物なので、アメリカのメジャーリーグやディズニー、中国の体育協会が公式のライセンスを㈱ファイテンに与えているのだと思います。 



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久々の「膝の悪い患者さん」シリーズです。前回と前々回の記事は下のリンクをたどってください。

・「膝の悪い患者さん」(2006年9月14日)
・「続・膝の悪い患者さん」(2006年11月18日)

当院は「全国冷え症研究所」に所属していて、その山口分室を併設しています。山口県内では当院だけです。その「全国冷え症研究所」のオリジナルの治療法が下の写真の「眠り姫」という機械を使った治療です。

★眠り姫


★後ろから見たところ


この機械は温熱治療を施すものなのですが、何で温めているのかというとお湯で温めています。上の写真の右側に見えるものがボイラーで、足を入れている装具の中を数十メートルのパイプが通っていて、間接的ではありますがお湯によって温めているのです。お湯で間接的に温めることによって、足湯の最大の欠点であった「湯冷め」の問題を解決することができたのです。仕組みとしては韓国などの家庭で取り入れられている「オンドル」に似ています。

電気のヒーターなどで温めるものは沢山販売されていますが、決定的な違いは湿熱か乾熱かということです。お湯で温めるということは湿熱ですので、体への熱の浸透度が違います。また湿熱の優しい熱はとても心地よいものです。電気アンカと湯たんぽの違いをイメージしていただければ良いかと思います。

「冷え症治療」に用いる機械なのですが、その応用度は広く、膝や腰の治療、うつ病などの精神疾患、婦人科疾患などにも使います。以前記事にした「逆子の治療」の時にもお灸をすえる前に使います。そうすることによっておなかの中の赤ちゃんがとても喜ぶのです。

お湯の温度は大体50~60℃に設定します。「ちょっと熱いのでは?」と思われるかもしれませんが、その位が一番心地よいのです。「これからの季節にはちょっと・・・」と思われるかも知れませんが、昨年外の気温が35℃以上ある真夏にも使い続けました。さすがに患者さんから苦情が出るのではと危惧していましたが、苦情を言った人はひとりもいませんでした。相対的に暑がりの男性でもみんな汗をかきながらでも治療を受けていました。みんな心も体も冷え気味なのです。

さて、本題の「膝の悪い患者さん」ですが、最近は膝の悪い患者さんにもほとんどこの機械を使用します。膝の悪い人に温熱治療というのはよく行われますが、そのほとんどは膝を直接温めています。しかも表側、お皿の周辺を温めることがほとんどです。当院でも以前はそのようにしていました。ところが最近はお皿の周辺は温めもしませんし、電気治療も行いません。足先を温めるこの治療と、膝の裏側から温める超音波治療を主体にしています。その方が圧倒的に効果が出ます。

それでこの「眠り姫」を行うときには五本指の靴下を履いていただきます。一番温めたい場所は足の指、足の裏、足首で足の甲やすねの部分は温めません。足の指をまんべんなく温めようと思ったら、普通の靴下ではダメで、五本指の靴下が必要なのです。

それで、その膝の悪い患者さんにもこの五本指の靴下を履いていただくことにしました。今回もまた、文中の「○○○・・・」は患者さん、「○○○・・・」は僕、そして(○○○・・・)は僕の独白です。

それではいきます。

「それでは膝の治療を行いますが、まずは足を温めていただきます。そのためにこの五本指の靴下に履き替えていただきますが、何故かと言うと、血液循環というのは心臓から足先を巡ってまた心臓に戻るのですが、足の指先が冷たかったら、血液は冷たくなって膝に戻ってきます。それではいくら膝を温めても膝の温度は上がりませんから、それで足の先を温めていただくのです。そして足の指をまんべんなく温めるために五本指の靴下が必要なのです。それではこれに履き替えてくださいね。」

「あたしゃ、履くのが大変じゃから、この五本足靴下ちゅうのは好かんのよねぇ・・・」

(そんなに足は沢山ねえだろ、どんな生き物だよ・・・)

「まあ、そう言わずに膝のためですから、頑張って履いてくださいよ。」

慣れてくればいいのですが、最初は履くのに苦労される方が多くて、下の写真のようになったりします。



「あぁ、小指の部屋が留守になっていますね。」

「絶対にこれをはかなきゃいけんの?」

(あ~あ、ちょっとキレかけてるよ)

「こうやって、手の指や足の指を動かすことも体には良いので、頑張りましょうよ。」

そしてようやく履けるのですが、

「ほんと、あたしゃ、この五本足が大嫌い!」

(だから五本足じゃなくて、五本指だって)

「まあ、そう言わずに頑張りましょうね。」

とまあ、毎日がこんな事の繰り返しです。ばあちゃん、ちょっとキレていますから、「五本足→五本指」と訂正してしまうと完全にキレてしまいます。だから放っておくのです。



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何か大ヒットしているみたいですね、「ビリーズ・ブート・キャンプ」。
通販業界では1ヶ月で10万個売れれば大ヒット商品と言われているらしいのですが、この商品は50万個売れたそうです。

通販のCMで見ただけなので詳しいことはわかりませんが、かなりハードなエクササイズだということはわかりました。

それで友達と、「これで痛くなりましたと言って来る患者が絶対に来るよね」って話していました。そうしたらやっぱり来ました。当院ではすでに2名です。これからさらに増えると予想されます。

そこで僕はこの「ビリーズ・ブート・キャンプ」をやってどこかが痛くなった状態を「ブートキャンプ症候群」と名付けたのでした。こんなものは言った者勝ちです。

これはいきなり始めるにはちょっとハードです。とくに40歳以降で、普段体を動かしていない方は気をつけたほうがいいと思います。筋肉痛だけならいいのですが、どこかをいためてしまう可能性があるので、しっかり準備運動やストレッチをやった上で、最初は短い時間から始めたほうが無難です。

とくに男性の方はこういうのをやって痛みが出ると、「俺の体はこんなはずじゃない」と思い、さらにハードな試練を体に与えて鍛えて治そうとする傾向が強いので要注意です。鍛えて治るのは若いうちだけです。鍛えて治そうとして痛みが強くなって、にっちもさっちもいかなくなる人が40歳以降の男性には多いので気をつけてください。

これはたぶん続けてやればとても素晴らしいトレーニングになるように思うのですが、熱しやすく冷めやすい日本人のことですから、あと半年もすれば過去の話になっていそうな気がします。

商品の詳しい内容は下に楽天市場へのリンクを貼りましたので、興味のある方は見てみてください。

大ヒット中!、ビリーズ・ブート・キャンプ


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タミフルに関してはここでも何度か意見を述べさせてもらいました。ようやくこの薬が「危険な薬」であるということが報道されるようになってきましたし、厚生労働省も渋々でしょうが認めざるをえない状況になってきました。まずはこれまでの記事をリンクしておきます。

「怖くて飲めない!」(3月6日)
「厚労省タミフル研究班教授の講座に販売元800万寄付」(3月14日)
「タミフル使用中止」(3月23日)

きっと中外製薬もタミフルでさんざん儲けたので、ようやく危険性を認め始めたのでしょう。昨年の時点ですでに危険だとわかっていたはずです。ところがその時点では儲けが足らなかったので、厚生労働省にタミフルに関しての危険情報は流さないように働きかけていたに違いないのです。そのために天下り官僚を高額の給料で雇い、ものすごい額の「袖の下」を官僚や医療関係者に使っていたはずです。

またひとつ薬害が増えました。厚生労働省の官僚の辞書には「学習」という言葉はないというか、消されているに違いありません。「天下り」「賄賂」「出世」「退職金」などなど、こういう言葉しか載っていないのです。国民の命を守るべき人たちが全く国民の方へは向いていません。そのくせ医療や年金などに関する権限は全てこの人たちが握っています。そしてその犠牲になったのが薬害で亡くなった人たちです。タミフルの場合は未成年者や若い人がほとんどでしたので、その罪の重さは計り知れないものがあると思います。

そしてまた罪がひとつ増えようとしています。何とタミフルに耐性を持つウイルスが発見されたと昨日のニュースで言っていました。そしてすでにこのウイルスが人から人へと感染したと言っていました。これまで抗生物質の濫用によって次々と耐性菌が出現し、そのせいで病院内での感染が起こり、その耐性菌を殺すために新たな抗生物質を開発するという「いたちごっこ」が行われてきた反省から、抗生物質の濫用は控えようという流れになっていたにもかかわらず、薬の種類が変わったらまた同じ事をやっています。やはり「学習」という文字が抜けているのです。

世界的には新型インフルエンザの蔓延に備えて各国がタミフルを備蓄しておこうとしていました。ですから日本以外の国ではタミフルの使用は制限されていたのです。つまり切り札ですから、普段から使うことは避けようとしていたのです。ところが新物好きの日本人はそんなことお構いなしにバンバン使っちゃったものだから、耐性を持つウイルスができてしまったのです。これは罪です。へたをすると世界中で備蓄されているタミフルが無駄になる可能性だってあるのです。どうしてこうも頭が悪いのでしょうね。

もともとは「薬」というものは切り札だったのです。その昔、大分県のうすき製薬という会社が出していた「後藤散」というかぜ薬のCMでは「一に休養、二に栄養、三、四がなくて後藤散」というキャッチフレーズを流していました。つまりカゼをひいたら、まずは休養と栄養をとって、それでも治らなかったらこの薬を飲みなさいという意味です。何と奥ゆかしいコマーシャルなのでしょう。関東の方には馴染みがないCMかもしれませんが、かつての日本人はこれほどまでに奥ゆかしかったのかと涙が出そうになります。

ところが現在の世相では「一にタミフル、二に点滴、三、四がなくて五に別の医者」という感じでしょうか。カゼをひいたらすぐに「点滴をしてくれ」と要求する人は多いですし、2、3日で治らないと別の医者にかかったりします。もっと余裕をもって病気に立ち向かうことができないのでしょうか。タミフルの問題は患者の側にも問題があると思っています。生半可な医学の知識しかないくせに、医者に対して「タミフルを出してくれ」とか「点滴をうってくれ」などと要求する人が多すぎます。現在では「医療=投薬」のようになっていますが、これは明らかに間違いです。薬は最後の切り札であるべきものです。高血圧や高脂血症ということで薬をずっと飲み続けている人がいますが、これもどうかと思います。

実を言いますと、このタミフル騒動はすでに予定されていたことではないかと思っています。どういうことかと言いますと、製薬会社は薬を作ることが仕事であり、新薬を開発するとその利益は莫大なものになります。ところが新しい特効薬というのはそうそうできるものではありません。ですからまずはAという薬を作って、Aが効くとされる病気に対する恐怖を必要以上にメディアなどを利用して煽り、あたかも特効薬のように宣伝して売りまくります。そしてある時期が来たら、耐性菌が出来たなどと言って使えないようにし、そして今度はBという特効薬が出来たといって売り込むのです。そしてそれを延々と繰り返します。つまり製薬会社にとっては病気がなくなってしまうのが一番困ることですから、こういう情報操作で人心をコントロールしていけばその市場は無限ではないかと思うのです。この時に人命なんてのは全く尊重されてはいません。薬によって病気が治るかどうかなんてのはどうでもいいのです。大事なのは薬が売れるかどうかだけなのですから。このあたりのことは本当にコンピューターウイルスの仕組みとよく似ています。セキュリティソフトもコンピューターウイルスがこの世からなくなってしまったら存在価値はなくなってしまいます。

今回のタミフル騒動などは中外製薬の上層部と厚生労働省の官僚と悪魔に魂を売ってしまったごく一部の医療関係者がタッグを組んで、その思惑通りか、あるいはそれ以上の結果を出したと考えます。そして法律を作るのが仕事の政治家の皆さんも絶対に一枚も二枚も噛んでいますから、この人たちが罪になることは決してないのです。亡くなった人たちは本当に気の毒としか言いようがありません。同じ様なことは先日の「怖くて飲めない!」という本にも書いてありました。

いずれにせよ、もっと病気に対して余裕を持って臨むべきだと思います。あまりにも性急に結果を求めすぎる傾向がどんどん強くなっているように感じます。病気にしろ、ダイエットにしろ、何にしろ、そんなに早く結果の出るものではありません。逆説的には「早く結果が出ると喧伝しているものは疑ってかかるべき」だと思います。

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マッサージという言葉はほとんどの方が知っている言葉だと思います。体を揉んだり、さすったり、押したりと非常に気持ちの良いものです。僕なんぞは仕事柄、毎日患者さんに「マッサージしますね」なんて言ってやっています。

ところでこのマッサージを業として行うには「あん摩マッサージ指圧師免許証」というのが必要です。略して「あマ指師免許」などと呼んだりもします。「業として行う」というのは不特定多数の人に対してお金をもらって施術するということです。ですから孫がおばあちゃんの肩を揉んでおこづかいをもらうというのは「業として行う」ということにはなりません。この「あん摩マッサージ指圧師免許証」はかの大前春子さん(ドラマ「ハケンの品格」)も持っていらっしゃいました。僕ももちろん持っていますし、妻も持っていますから、ドラマでこの免許証が登場した時にはちょっと盛り上がってしまいました。大前さんの免許証は表彰状のような感じの免許証でしたが、僕の免許証は

★あん摩マッサージ指圧師免許証


と、こんな感じです。自動車免許の更新の時に交通安全協会に入会するともらえる免許証入れみたいな感じです。妻の免許証は大前さんと同じような表彰状形式です。どうしてこのように違うのかというと、僕がこの免許を取得した当時は「あマ指師免許」は都道府県知事免許でした。ですから都道府県が試験を行い、知事の名前で免許証を発行していたのです。ちなみに僕は千葉県で取得し、妻は神奈川県で取得しました。ですから都道府県で形式が違っていたのです。ところが現在では「あマ指師免許」は厚生労働大臣免許となっていますから、厚生労働省が試験を行い、厚生労働大臣の名前で免許証が発行されています。大前さんの免許にも厚生労働大臣の名前が書かれていました。現在ではみんな一律に大前さんのような表彰状形式の免許証になっていると思います。この免許を取得するためには専門学校に3年間通って、それから国家試験を受験し合格しなくてはいけません。ですから大前さんがこの免許を持つことは物理的に不可能だったと思うのですが、そこはフィクション、ヤボな事を言ってはいけませんね。

「あん摩マッサージ指圧師免許証」と長ったらしい名前の免許ですが、この中には「あん摩師」「マッサージ師」「指圧師」というみっつの資格があるように見えます。一般の人にはこの違いは理解できないでしょうし、現在ではみっつともマッサージとして取り扱われていることが多いように思います。ところがこのみっつは徒手で施術を施すということは共通していますが、微妙に違うのです。

「あん摩」は中国で体系化された手技療法です。ところが中国では推拿(すいな)といいます。どちらもその手技の主体は「揉む」なのですが微妙に違います。ですから中国由来とはいえ、日本で独自に体系化されていったのでしょう。
ドラマ「チャングムの誓い」でチャングムが死にかけた王様の体を揉みましたが、あれはあん摩の手技ではありませんでしたから推拿のように思いました。
「あん摩」という言葉、お年寄りには言う人がいますが、若い人はほとんど言いません。ところでマッサージは「マッサージに行く」と言いますが、あん摩は「あん摩をとる」と言います。これはあん摩をやっていた人たちが患者の自宅に出向いて、つまり往診で施術していた人が多かったことに由来しているように思います。

「マッサージ」の起源は古く、かのギリシャの医聖ヒポクラテスが提唱したのがはじめだと言われています。マッサージの語源はギリシャ語の「マッシー(揉む)」だとする説もあります。しかしギリシャでは普及せずに後にフランスで体系化されたものが現在のマッサージだと言われています。その手技の主体は「さする」です。
よくテレビや映画で南仏のリゾートなどで金髪の若い女性がテラスかなんかで全裸になってオイルマッサージを受けているシーンが流れたりしますが、あれがマッサージです。ですからマッサージは皮膚に直接手を触れて行うものなのです。ただしそれでは手が滑りませんからオイルやタルク(天花粉)をつけて行うのです。現在の日本ではエステなどで行われているのが本当のマッサージに近いと思います。
僕も治療院ではマッサージといいますが、手や足などは直接皮膚に行うことはあっても体幹部はほとんど行いません。

「指圧」は「指圧の心、母心、押せば命の泉湧く」の浪越徳治郎先生が体系化された手技療法ですから日本でできたものです。その手技の主体は「押す」です。
僕が専門学校に通っていた頃にはまだ浪越徳治郎先生はご存命でしたから、特別講義を受けたことがあります。浪越徳治郎先生がかのマリリン・モンローの胃痛を指圧で治したという話は有名で、生でその話を聞くことができたのです。

このようにそれぞれ由来も手技も違いますが、現在ではひっくるめてマッサージと言われることが多いようです。僕も実際にやっている基本は指圧なのですが、それぞれの良いところを取り入れて、ごちゃ混ぜでやっている状態ですからマッサージと呼んでいます。いずれにせよ気持ちの良いものですし、リラックス効果が高く、現在のようなストレス社会では張り詰めた交感神経を緩めることは病気の予防にもなりますから、もっと医療の中に積極的に取り入れるべきものだと考えます。

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これは引っ張りましたねぇ。何回もやりました。子供の頃、「野球なんかで突き指をした時には指を引っ張ったら治る」というのは定説でした。でも大ウソだったんですねぇ。おそらく未だにこのように思っていらっしゃる方はいると思います。

「突き指」というのは病名ではありません。ケガの発生機転のことです。「むち打ち」などと一緒ですね。ですから「突き指損傷」とか「むち打ち損傷」と呼ぶ方が正確です。突き指とは指の軸方向からの外力による損傷で、野球やバスケットボールなどの球技で多く発生します。多くは指の近位指節間関節(指のふたつの関節のうちの手前の関節)に発生します。ほとんどが近位指節間関節を包む側副靭帯の損傷なのですが、まれに剥離骨折を伴うこともあります。同じ突き指でも遠位指節間関節(指のふたつの関節のうちの遠いほうの関節)に発生した場合の多くはマレット・フィンガーといって骨折や腱の損傷を起こしていますので手術が必要な場合がありますから要注意です。

ここでは一般的な突き指である近位指節間関節の靭帯損傷について述べます。野球などでゴロを捕ろうとしたときに誤って指に軸方向からボールが当たったときなどに発生します。この時に指の関節を両側にある側副靭帯が瞬間的に伸ばされて起きるのがほとんどの場合の突き指です。この場合の症状はまず指を曲げようとすると痛みますから、手を握ることができなくなります。そしてしばらくすると指の関節の手のひら側のしわの部分が内出血で紫色になってきます。靭帯が伸びてしまっている状態ですから指を引っ張ってしまうとさらにその靭帯は伸びてしまいます。ですから指を引っ張ってはいけないのです。伸びてしまった靭帯は自分の力ではなかなか縮まってくれませんから、靭帯が縮まるような角度でしばらく固定する必要があります。

それでは何故指を引っ張るのが定説になってしまったのかを考えてみました。おそらく指の関節の脱臼や、指の骨の骨幹部の骨折の場合には指を牽引して(引っ張って)整復しますから、この行為を見ていた人が指を怪我した場合には引っ張ればいいんだと思い込み、それが口コミで広まったのではないかと考えます。そして指を引っ張るとポキッと音がしたりしますからそれでさらに治るような感じがしたのではないでしょうか。突き指は指の関節の靭帯損傷=捻挫ですから、まずは安静=関節の固定が必要です。むやみに引っ張ってはいけません。

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昨日、温湿布には体を温める作用はないと書きました。そこで今日は実験をしてみました。足に冷湿布と温湿布を張り、1時間後にはがして皮膚表面の温度を測ってみました。

★冷湿布と温湿布です


向かって左側が冷湿布、右側が温湿布です。

★湿布を貼る前の温度です


湿布を貼る前の足の皮膚の表面の温度は31.1℃でした。

★湿布を貼りました


右足に冷湿布、左足に温湿布を貼りました。

★1時間後の右足


1時間後の温度は29.6℃でしたから、1.5℃下がっていました。冷湿布には温度を下げる作用がありました。

★1時間後の左足


1時間後の温度は30.0℃でしたから、1.1℃下がっていました。つまり温湿布には温める作用はないということです。

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最初に断っておきますが、ここでいう「温湿布」とは市販や病院などで処方される温感湿布のことです。普通は冷湿布は青や緑っぽい袋に、温湿布は赤っぽい袋に入っています。湿布というのは字の通り湿った布状のものを患部に当てることで、本来、温湿布とは湿ったものを温めて患部に当てることをいいます。「チャングムの誓い」では幼少期のチャングムが「腰が痛い」と言うカン・ドックの奥方の腰に温めた湿った布を当てていました。本来はあれが温湿布なのですが、現在の日本においては温湿布は病院でもらう赤っぽい袋に5枚から7枚入ったプラスター状のものを指すので、ここでも温湿布とはこのように定義させていただきます。ちなみに冷湿布は昔はうどん粉などに水を入れて練ったものをフランネルの布かなんかに塗って患部に当てていました。ですから温湿布にしても冷湿布にしても本来は現在のような消炎鎮痛剤を使用したものではなかったのですね。

この仕事をしていて患者さんから寄せられる質問の中で最も多いのが、「痛む患部を温めたほうがいいのか、冷やしたほうがいいのか」ということです。よほどの急性の炎症以外は温めたほうがよいので、冷やしたほうが良いと答えることは少ないです。僕の言う「温めたほうが良い」というのはカイロや電化製品を使って患部の温度を上げることか、あるいは腹巻きやサポーターなどを使って、温めるというよりは冷やさない努力をすることを指します。また「冷やしたほうが良い」と言う場合には氷嚢やアイスパック、あるいは冷水などで患部を冷やすことをいいます。

ところが患者さんの言う「温めたほうが良いのか、冷やしたほうが良いのか」というのは、ほとんどの場合「温湿布を貼ったほうが良いのか、冷湿布を貼ったほうが良いのか」ということです。ずいぶん違うものです。結論から言いますと「どちらでも良い」です。つまり冷湿布には患部を冷やす効果はさほどありませんし、温湿布にいたっては患部の温度は全く上がりませんから温めていることにはなりません。つまり冷湿布も温湿布も消炎鎮痛剤という薬剤の効果を期待して貼るものであって、患部の温度を操作するために貼るものではないということです。消炎鎮痛剤の効果はどちらも同じようなものなので結局質問に対する答えは「どちらでも良い」になるのです。ところがこのように答えると「ふざけている」と思われるのですね。質問に対して真剣に答えていないという人もいます。困ったものです。

それでは効果が同じ冷湿布と温湿布とでは何が違うのかといえば、簡単に言うと冷湿布にトウガラシのエキスが入っているものが温湿布だと思えばよいと思います。つまり辛いものを食べたときに口の中が熱く感じますが、あれと同じような効果を期待しているわけです。調理場などの足元が冷える場所で働く人の中には、仕事場で履く長靴の中にトウガラシを直接入れる人がいます。こうすると足先が温かくなるそうです。しもやけが治ったという人もいました。これはカプサイシンという成分の効果ですね。しかしだからといって湿布の成分に練りこんだからといって同じ効果が期待できるかどうかは疑問です。

痛い場所を温めた方がよいというのは温めることによって血行がよくなるので患部の治癒が促進されるからです。また温めるというのは気持ちが良いので副交感神経が興奮してリラックスできます。逆に寒いとか冷たいというのはどちらかというと不快に感じるものです。ですから温めたい場合には実際に患部の温度が上がるような温め方をすることをオススメいたします。

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