イケメンに弱い。それも、ちょっとひとくせあるような感じの。
過去なんどもそれで痛い目に合ってる。だから、気をつけて近寄らないようにしていたのに・・・。
油断してたのかなあ・・・気がついたらつい引き寄せられてた・・・。
いえ、あの・・・。研ぎ師さんの話です（＾＾；）。
いろんなとこで「包丁の話書くね」なんて言いながら、ひと月。
こらあかん、ほなおもしろく・・・と、出だし、頑張ってみました（＾＾）v。
ちょっと長いので、心して読んでくださいませ。
そう、堺の研ぎ師さんが近くの百貨店（阪急）にいらしてたんです。
食器売り場で予告を見たので、期間になったらそおっとのぞきに行ってみたら・・・そう、いたんです。独特のオーラを放つ職人さんが。
なんか怖そうやなあ・・・と思いながら、次の日、刃が欠けた出刃と万能包丁を持って出かけました。
そおっと差し出すと、ギロッ・・・。
出刃を指さして、「こっちは別料金かかるけど。時間も何時間かかかるから、今日は預りになる。それにかなり削るから、少し小さくなるけど、それでもよかったら」
とぶっきらぼう。
予想通り怖いなあと思いつつ、「それでもいいので」・・・と預けて帰りました。
帰り際に、展示してある売り物を見たら、ハサミがいろいろ置いてあったので、「キッチンバサミも研いでもらえますか？」と聞くと、
「ギザギザの刃がなくなってよければ研げるけど。でも、ハサミは研がないほうがいいよ。」とのこと。
つまり、ハサミはふたつの刃が合わさって切れるから、両刃をそれぞれ１mmずつ削ったら、それだけで２mm空く。すると、隙間が空いて、切れ方は悪くなる・・・ということらしい。
なるほど・・・じゃあ、ハサミはやめたほうがいいですね・・・と話して、「ではまた明日来ます」
「はい。また明日ね」と、ニコッ。
あれ？、なかなか優しい笑顔やん。よかった。それに、結構しゃべるし・・・。
次の日。ふと思い立って、もうひとつの包丁も持って取りに行きました。
「できてるよ」と差し出されたのがこれです。
ピカピカ。ちょっとこわい。
出刃は左の。「源信次」という彫りが入ってます。父の知り合いの京都の包丁屋の職人さんに２０年前に作ってもらいました。たぶん、個人名・・・だと思います。
下の方が黒くなっているでしょう。親に買ってもらってから、２０年。ちょっと貸したら欠けちゃって、そのまま置いてたらさびてボロくなってたんですけど、刃が直り、きれいになっていました。
右のは、「京都 常信」。もうなくなってしまったお店のもの。小さく「鍛錬」という文字が入ってます。
これは、母の姉、叔母が使っていたものを母がもらって、私が三代目。父が研いだりうちで研いだりしたので、刃がちいさくなってしまっています。
この職人さんによると、あと１cmくらいしか削る部分がなくなってしまうとのこと。たしかに狭い。でも、愛着があるから・・・。
よかった！！きれいになって。
そこで、もう１本、持ってきたのを出しました。これは、「日本橋・木屋」のものです。
去年、たまたま通りかかったら移転前セールをやっていて、破格の値段で買ったもの。それでも高かったけど。
「これも研いだほうがいいですか？一応切れるんですけど」というと、しばらく見て
「切れるというより、押して潰してる感じだな」・・・えー。たしかに。最近、ネギが切りにくい。
買ったときに１年に一度くらい、研ぎに出しに来るといい・・・と言われてたから迷ったけど、このニイチャンに出すことに。
でも、これ、鋼の粉を固めて作った特殊加工で、劣化しにくいのはいいんだけど、ちょっと軽いんですよね、やっぱり鋼の昔からのがいいですねえ・・・と、またおしゃべりしていたら
「あのね、本当にいい包丁使いたいなら、うちのこれ買えば。」
う。そうか。この手か。半年に一度来て無料で研ぐから、結局安いよ・・・って、そうか、その作戦か。
でも、これだけいろいろ聞いちゃって、話し込んだらなあ・・・。
それにその包丁の包みについてたシールの内容がやばい。「恐ろしく切れます・冷凍品、骨等を切らない人にお勧めします」・・・こわっ。でも、このニイチャン、自分も持ってるって言ってるし、いいんかな。
たしかに、適度な重さがあって、ストンストンといい感じで切れそう。
だけど、今度買うときは京都で・・・って決めてたのに。
・・・結局、買っちゃいました。まあ、商売道具だし（＾＾；）。
この話、早速この日に友達にしたら、自分も研ぎに出したいのがあるって言うから、またまた次の日、イケメンさんに会いに行くことに。
さすがに３日目になると、垣根もなくなり、なんかいつの間にかおしゃべりなニイチャンになってる。相変わらず怖いけど。
こうして、今、４本の光り輝く包丁がうちにあるのですが、（もちろん他にもありますよ）、なかなかいい仕事してくれてます。
切れ味は、直後は切れすぎて、なんていうかそっけない感じだったけど、適度に馴染んでいい感じです。
研ぎ師の方っていろいろあって、研いだ直後がいい感じで仕上げる人、１週間、１ヶ月後・・・に照準を絞って研ぐ人などさまざまなそうで、よくわかってくれば出す方もどういう人にお願いしたらいいか、考えて出すのがいいらしいです。
で、今の正直な感想は・・・うーん、微妙な感じです。いや、研いでもらう前より絶対的に切れるんですけど、でも、なんか、ピタッとくるものがないんです。ときどき研いでた父の研ぎ方が一番自分に馴染んでたなあと思います。
うちのも遊びに来たとき時々研いでくれてましたから。私も自分でしていたときもあるけど、それより父のがよかったです。
でも、それじゃあ、毎日自分で研ぐのがいいのかといえば、そうでもないらしい。
その研ぎ師さんはプロに研いでもらうのがいい、下手に研ぐと持ってきたときに修復するのにたくさん削ってしまうことになる・・・と言ってました。
うーん・・・。どうなんでしょうね。職人さんとしての見方なんじゃないかなと思いますが。
一応、研ぎ師さんに聞いた、その他のことを書いておきます。参考になれば・・・
・包丁は家ではむやみに研がない方がいい。研げばどんどん摩耗して劣化してしまう。
・靴と同じように、毎日同じのを使わないほうがいい。数本でローテーションして休ませる。
・洗うときは柄のところもきれいに洗う。そこがいい加減になっていると、雑菌がつきやすい。
・消毒しようとか思って、熱湯をかけないこと。歪みが出る。
・すごく硬いものを鋼の包丁で切らない。欠けたり、歪んだりすることがある。 などなど
とりあえず、使っている間に、どれも馴染んできましたが、気分によってどれを使うか変えています。
でも、気がつくと手に取るのは、叔母、母、私と移ってきた古い包丁なんです。
これからも、どの包丁も大切にしていきたいと思います。
そうそう。最後の日に一緒に行った友だちが「きっと、職人さんのオーラに弱いんとちがう？」って言ってました。
あ・・・たしかにそうかも。イケメン・・・もそうだけど、「おぬしやるな」って言いたくなるような人に弱いんですよね（＾＾；）
また半年したら、研ぎにいらっしゃるようだから、会いに行こう、包丁持って♪
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