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半導体露光装置のどんでん返し~番外編その2「ナノインプリント」~

2016年08月19日 | 会社

2016年8月16日の「半導体露光装置のどんでん返し~番外編その1「リープル」~」の続きです。~番外編その1「リープル」~を読まれた方は、おおよそ結論が見えていると思います。

 

2016年5月26日のブログ「半導体露光装置のどんでん返し―その3 次世代のEUVは悪戦苦闘中―」に書いたように、(新聞を読む限り)キヤノンはEUVをあきらめて、「ナノインプリント」という技術に注力しているようです。

 

「ナノインプリント」は、2014年に買収したアメリカ・テキサス州のベンチャー「モレキュラー・インプリント」の技術で、マスク(原版)をウェハに押し付けてパターンを転写する(別の記事ではマスクの後ろから紫外線で等倍露光するとも書いてあり、実際のプロセスは不明)半導体製造装置で、東芝と共同で開発していると新聞に出ていました。

(「ナノインプリント」は、日経新聞や日経産業新聞の記事によって、書いてある内容が微妙に異なる。趣味で書いているブログと違って有料の記事なのでしっかり取材してほしい)

 

「ナノインプリント」技術の詳細はわかりませんが、「等倍マスク」という言葉から、十数年前の「LEEPL リープル」を連想します。等倍のマスクの量産技術は「LEEPL リープル」以上に難しいように思えます。2000年初頭の半導体の配線幅は100ナノ㍍、今は10ナノ㍍(新聞記事によると「ナノインプリント」は10ナノ㍍ができると書いてある)なので、等倍マスクを製造する困難は増していると思います。

 

キヤノンは、元社員の提案した技術には「等倍マスクには欠陥がある」と判断したのに、アメリカのベンチャーの技術では「等倍マスク」に欠陥が無いと判断したのでしょうか?

あれから十数年経ったので、「等倍マスク」を作る技術も進歩していると言えばそうなのでしょうが・・・

 

一方のニコンが、EUVなのか、何か隠し玉があるのか、さっぱりわからない中で、当面のキヤノンの方向はハッキリしていますが・・・

 

新聞によると「ナノインプリント」の出荷は当初の計画より遅れていますが、今年に出荷と新聞に出ていたので、あと1年くらいたつと、その結果がわかると思います。

 

番外編はこれでお終い。

2016.08.19

 

補足はこちら

 


半導体露光装置のどんでん返し~番外編その1 「リープル」~

2016年08月16日 | 会社

私が書いたブログ「半導体露光装置のどんでん返し」3編の番外編です。番外編その1は、3編のようなレーザー光を使った方式ではなく、電子ビーム方式の半導体露光装置の話です。

 

3編は、

・2016年5月11日の「半導体露光装置のどんでん返し-その1 お家芸からの転落-

・2016年5月14日の「半導体露光装置のどんでん返し-その2 思わぬ伏兵「液浸」-」

・2016年5月26日の「半導体露光装置のどんでん返し―その3 次世代のEUVは悪戦苦闘中―」です。

 

まず、2001年の経済誌の記事を要約します。

 

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週刊ダイヤモンドの2001年7月7日号14ページ

「半導体製造装置に異変! 新技術が業界再編を加速 東京精密・ソニー連合の参入で迫られるキヤノンの選択」

 

東京精密とソニーは電子ビームを使った半導体製造装置を開発するコンソーシアム「LEEPL リープル」を立ち上げた。

 

半導体露光装置の世界シェアは、ニコンが4割弱、オランダASMLは3割、キヤノンが2割とこの3社でほぼ独占している。

 

次世代の半導体露光装置と目されているF2レーザーを使った半導体露光装置(以降F2機と呼ぶ。ここでは2004年頃に登場すると書かれている)は巨額の開発費がかかり、製品価格も従来機の倍の20億円台とコストが合わない。

(結局F2機は商品化されませんでした。このいきさつは2016年5月11日の「半導体露光装置のどんでん返し-その1 お家芸からの転落-」と2016年5月14日の「半導体露光装置のどんでん返し-その2 思わぬ伏兵「液浸」-」に書いています)

 

そこで東京精密・ソニー連合は、従来のレーザー光を使うのではなく、電子ビームで露光する「半導体露光装置」を開発することを企図した。製品の価格は10億円と想定している。

(電子ビームを使うので、「露光」という言葉は不適当かと思いますが、広義の「露光」ということで、この言葉を使用します)

 

ニコンとキヤノンもF2機が高額になるのは認識している。ニコンはIBMと電子ビームステッパーの共同開発を進めていて、コア技術は既に完成していると言っている。キヤノンは、数社と電子ビームステッパーの共同開発を進めようとしているが、未だ本格化はしていない。

 

(余計なことですが、オランダのASMLの国内代理店は、日立製作所の子会社の日製産業と書いてあります。企業間の関係がなかなか複雑で面白い)

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この記事には書かれていない「LEEPL リープル」のプロセスが日刊工業新聞に載っていました。それによると、シリコンウェハとマスク(半導体の配線パターンが描かれた原版)を平行に近接(50マイクロ㍍)させて低加速電子ビームを照射し、マスクのパターンをシリコンウェハ上に転写する。マスクの電子線を通す部分には穴が開いている。(電子ビームを通す・通さないは、マスクに穴が開いているか・開いていないによる)

 

2000年初め頃は、「液浸技術」を使った半導体露光装置が出る前で、ニコンもキヤノンも費用の掛かるF2機以外に、電子ビームを使った半導体露光装置を検討していたようです。その中で、電子ビームの取り組みはキヤノンが一番遅れていたと書いています。

 

同じ頃の週刊東洋経済には、さらに興味深い記事が載っています。要約は以下。

 

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週刊東洋経済2001年6月23日号

「あのソニーと企業連合結成 “小兵”東京精密が狙う次世代露光装置の天下取り」

 

中堅検査機メーカーの東京精密は、6月14日にソニー、NECなどとともに「リープル」の共同開発を宣言した。

 

半導体露光装置の方向は、キヤノンの光方式とニコンの電子ビーム方式がある。そのうち光方式のF2機の価格は、25億円を下らないと言われている。

 

東京精密は、「等倍マスク」と「ロービーム」という技術で従来機の半額で製品化できるのが最大のセールスポイントと言っている。対するニコンはハイビーム方式を採用していて、割安感はない。

 

「リープル」の死角は「等倍マスク」の量産技術と思われる。東京精密は「その技術は確立している」と言っているが、キヤノンの半導体企画担当者は、「等倍マスクには欠陥がある」と言っている。その理由は、「リープル」の特許を持っている技術者はキヤノンの元社員で、キヤノンでは事業化が無理と判断した経緯があるから。

 

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この内容からすると、このプロジェクトの実質的なリーダーは東京精密のようです。

 

またこの記事だと、ニコンはコストを下げられない方式の電子ビームを使っているので、電子ビームに対するニコンの考えが意味不明です。ニコンはF2機と同程度の線幅を実現する「ArFレーザーと液浸技術を組み合わせた半導体露光装置」を2004年4月に出荷しているので、2001年頃は開発に着手していたはず。なので、ニコンは電子ビームをやるふりをして、実は液浸技術を使った半導体露光装置に注力していたのでは?と思います。

 

この記事の最大の興味ある話は、「リープル」の開発者が元キヤノン社員で、キヤノン社内では事業化に至らなかったということ。キヤノンが事業化しないので、この元キヤノン社員はキヤノンを辞めて東京精密にその技術を持ち込んだのかな?と推測します。電子ビームを使った「リープル」は結局世に出なかったので、このキヤノンの判断は正しかったことになる。ただし、等倍マスクが原因かどうかはわからない。

 

「リープル」を製品化できなかった真の理由を知りたいところです。キヤノンの半導体企画担当者が言うように、「等倍マスク」に欠陥があったのでしょうか? 素人が考えても、「等倍マスク」は難しそうというのはわかります。別の想定される要因は、電子ビームに関わる問題。あるいは電子ビームの「ロービーム」方式に難しさがあったのか? 本当のところは実際に開発に携わった関係者しかわからない。

 

この後、「表通り」の技術のF2機と「リープル」は日の目を見ず、「裏通り」の技術の液浸を使った半導体露光装置に移行したのは、技術予測の難しさを実感します。

 

ここまでが前説です。本題は、じゃあ、キヤノンが開発中の「ナノインプリント」はどうなの? です。続きは次回で。

 

2016.08.16


半導体露光装置のどんでん返し-その3 次世代のEUVは悪戦苦闘中-

2016年05月23日 | 会社

前回2016年5月14日の「半導体露光装置のどんでん返し-その2 思わぬ伏兵「液浸」-」の続きです。

 

前回は、ArFレーザー光源と「液浸」技術を組み合わせ、かつ顧客の立場に立った(あくまで推測です)半導体露光装置をいち早く顧客に提供したオランダASMLが、ニコンとキヤノンをうっちゃり、半導体露光装置のシェアを大逆転した話でした。この半導体露光装置で、30nm代の配線幅を実現しました。

 

さらに集積度を上げようとすると次は④EUV光源ですが、これがそう簡単では無い。EUV光源に至る短波長化の概略は、2016年5月11日の「半導体露光装置のどんでん返し-その1 お家芸からの転落-」で書きました。

 

前にも書いたように、EUVは”Extreme Ultra Violet”( 日本語訳は「極端紫外線」)の略で、紫外線の中でも最も波長が短い。すぐ隣はもうX線なのでX線のような性質も持っています。

 

EUVレーザー光源を用いた半導体露光装置は、EUVレーザーの製作が難しいとか、従来の光学レンズが使えないなどの問題があり、今までの光源より格段に難しいと言われていました。しかし、オランダASMLはEUVに積極的で、現在は台湾の半導体メーカーTSMCに納入し、試験的な生産をしていると新聞に出ていました。しかし台湾TSMCが商業生産を開始したという記事は未だ見ていません。また2015年には、米国の半導体メーカーにも納入したという記事が出ていましたが、こちらもその後の経過の記事は見ていません。

 

ところで、日本のニコンとキヤノンは、EUVをどうするのか? 以前はニコンもキヤノンもEUVをやるようなことを言っていましたが、近頃はどうも腰が引けているというか、EUVに否定的です。問題は巨額の開発費と技術的ハードルが高いこと。当たり前ですが。それで、台湾TSMCのEUV半導体露光装置を使った生産がモタモタしているのを思惑通りとほくそ笑んでいるはずです。もし台湾TSMC がEUV半導体露光装置を使って商業生産が始めると、ニコンもキヤノンも完全にノックアウトされて再起不能でしょう。

 

仮にEUV半導体露光装置を使った商業生産が失敗したら、ニコンとキヤノンに時間的余裕が出て来ますが、その次の一手が無い。それが問題。

 

キヤノンはEUVをあきらめて迷走を始めたように思えます。キヤノンは、「ナノインプリント」という技術を持つアメリカ・テキサス州のベンチャー「モレキュラー・インプリント」を2014年に買収しました。「ナノインプリント」は、微細な凹凸のついた原版をウェハに押し付けて半導体回路を形成する技術で、東芝と共同で開発していると新聞に出ていました。ウェハに10nm代の配線幅を実現するには、原版の配線幅も10nm代のはず。この原版をウェハに押し付けて回路を形成するなんて、これが非常に難しいのは素人でもわかる。EUVより難しいかもしれない? 以前の新聞には、2015年に製品を出すと書いてありましたが、今年2016年初夏になってもそういう記事を見ていません。

 

ニコンはEUVの検討を中止したという記事が出ていました。理由は開発費の負担が大きいことと、技術的な困難。と思っていたら、EUV用の新しい薬剤を開発したとか、新聞に出ているので本当はどうするつもりなのか、よくわかりません。

 

キヤノンの半導体露光装置部門は事業を継続できるかどうか風前の灯(ゴミのようなシェアを見るとそう判断せざるを得ません)なので、いっそ半導体露光装置部門をニコンに売却してはいかが? キヤノンは東芝から東芝メディカルシステムズを買収したので、そちらに注力すれば? といっても、一緒になったニコンとキヤノンが、オランダASMLに勝てるのか疑問。上手くいくような感じがしない。

 

今後の半導体露光装置に、さらなる「どんでん返し」はあるのでしょうか?

 

2016.05.23

一応、これでお終い。

 

(追加)

日経新聞に「ニコンの業績が健闘している」と出ていますが、これは「液晶露光装置」が中国で売れているという話で「半導体露光装置」ではありません。「液晶露光装置」は「半導体露光装置」よりも粗い解像度で十分です。

2016.05.26

 

補足はこちら

 


半導体露光装置のどんでん返し-その2 思わぬ伏兵「液浸」-

2016年05月14日 | 会社

前回の「半導体露光装置のどんでん返し-その1 お家芸からの転落-」の続きです。

 

③のF2レーザーにならなかった理由は、別の画期的な技術「液浸」が出てきたからです。この技術は、顕微鏡の解像度を上げるために昔から使われていた技術を半導体露光装置に応用したものです。

 

普通の半導体露光装置は、原版のパターンをレーザー光で縮小露光するレンズとウェハの間は当然ながら空気です。ところが、「液浸」はレンズとウェハの間を純水で満たすというものです。(下図参照、左が従来、右が液浸) 「液浸」を用いると解像度が向上する理由は、水の方が空気よりも屈折率が約3~4割大きいという原理に基づいています。

 

 この「液浸」は、光学顕微鏡にも使われている古い技術ですが、これを半導体露光装置という精密な生産設備に使うことはコロンブスの卵でした。精密装置に水というのはありえない組み合わせで、高速で移動するシリコン基板(ウェハ)と投影レンズの間に常時純水を安定して保持するのは、素人にも難しいことが分かります。

 

ニコンとオランダのASMLは2000年代中頃に製品化しました。しかしキヤノンは遅れました。

 

ArFレーザーと液浸技術を組み合わせた半導体露光装置の出荷・発表時期を新聞記事から拾ってきました。

ASML―2004年第3四半期に出荷

ニコン―2004年4月に出荷

      2005年第4四半期に販売開始と発表(別の記事)

キヤノン―2007年夏に発表

 

上の記事で、メーカーにより「出荷、販売開始、発表」とそれぞれ違いますが、順番から言えば「発表→販売開始→出荷」でしょうか? ArF液浸技術による半導体露光装置を最初に作ったのは、ニコンという記事もありましたが、本当のところASMLとどっちが早かったのか当事者しかわかりません。一つ言えるのは、キヤノンは明らかに「液浸」に出遅れました。F2レーザーに集中していたのでしょうか?

 

このArFレーザー光源と液浸技術の組み合わせで、F2レーザー光源と同等の配線幅を実現でき、F2レーザー光源は不要になってしまいました。

 

少し古いですが、2012年までの半導体露光装置のシェアの推移を載せておきます。オランダのASMLは8割、ニコンが2割、キヤノンはゴミです。

 

出所:電子ジャーナル「半導体製造装置データブック」から。

 

日本勢がシェアを大幅に落としている理由は何でしょう。

キヤノンは液浸を用いた半導体露光装置で出遅れたのがシェア低下のように見受けられます。(実情はわかりません)

しかし、ニコンはASMLとほぼ同時期に開発しているのに、シェアが低下していったのは、なぜでしょうか? この業界の分析資料には製品出荷の前後より、むしろ別の事情を揚げています。

 

それは、ASMLが

・機差が少ない、スループットが早いなど、顧客の要望に応えて生産性を上げる工夫をしている

・半導体露光装置の各ユニットをモジュール化して、製造しやすく、かつユーザーが使いやすい工夫をしている。

・台湾・韓国の半導体製造会社全てを顧客としており、台湾・韓国の半導体メーカーの躍進があった。その一方、日本の半導体メーカーの凋落がニコンに影響した

などの指摘があります。

 

いずれにしても、ASMLはすごいですね。数年でシェアを大逆転してしまうとは! 技術での大逆転と顧客目線の営業の賜物でしょうか? 日本勢は油断しましたね。ASMLはフィリップスから分社化して動きが良くなったのでしょうか? アメリカ勢も取り込んだのが成功の秘訣でしょうか?

 

その反対に、日本勢はニコンとキヤノンとも本社の一部門なので動きが悪かったのか、日本の半導体メーカーがメインの顧客だったのが敗因だったのでしょうか? 新進気鋭の人に、是非研究して欲しいものです。あるいは、ニコンとキヤノンが一緒になって、半導体露光装置の専門メーカーを作るべきだったのでしょうか? (ニコンとキヤノンが一緒になるなんて、どう見ても無理なように思えますが)

日本勢が再逆転する可能性はあるのでしょうか? 

 

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(参考)このブログを書くにあたって参考にした資料を挙げておきます。他にも新聞雑誌の記事を参考にしました。

・Electronic Journal 2012年11月号「《半導体製造装置市場の最新動向》ASMLが装置売上高1位に躍進 EUVは本当に実現可能なのか?」

・Electronic Journal 2012年11月号「オランダASML社による露光装置モジュール戦略の優位性分析」 田口敏行

・Electronic Journal 2009年8月号「《日本半導体/製造装置メーカーの共進化/共退化現象②》露光装置トップのASMLその強さの源泉は速度と稼働率」

・Electronic Journal 2006年3月「露光装置技術発展の系統化調査」高橋一雄 

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2016.05.14

 

 続きはこちら

 


半導体露光装置のどんでん返し -その1 お家芸からの転落-

2016年05月11日 | 会社

少し昔、日本の代表的な光学機器メーカーのニコンとキヤノンは、半導体露光装置においてダントツのシェアでした。ところが、そのダントツのシェアがひっくり返った物語です。私は日本のメーカーが転落して喜んでいるわけではありません。

 

海外メーカーの中には日本メーカーに無いユニークな技術と考え方を持っている会社があり、これらの会社から画期的な製品が出ると、その独創性に感心しました。しかし、それらの製品の全てが成功したわけではありません。世間はそれほど甘くない。

 

この半導体露光装置の話は、技術や商売のやり方を考える上で貴重な(失敗の)実例なのに、なぜか経済がメインの新聞や雑誌でこの件に関する記事を見たことがないのは不思議です。

 

今回のテーマの半導体露光装置はニコンとキヤノン、オランダのASMLという三つの会社で世界シェアをほぼ独占し、2000年頃のシェアは、ニコンが4割、ASMLは3割、キヤノンは2割でした。

 

オランダのASMLは、フィリップスが源流で1984年に誕生し、その後アメリカのSVG社(Silicon Valley Group、シリコンバレーの複数の半導体メーカーが設立した会社)を吸収合併した会社です。

 

半導体の製造は、まずシリコン基板(ウェハ)上にレーザー光で硬化する薬液を薄く塗布します。その後、半導体露光装置を使って原版のパターンをレーザー光とレンズで縮小露光し、レーザー光の当たった部分の薬液を硬化させます。このようにして配線部分を残し、他の部分は取り除きます。これを繰り返して半導体の配線を造っていきます。

 

半導体の集積度を高めるために、半導体の配線の線幅はだんだんと細くなってきました。線幅を細くするために、半導体露光装置のレーザー光の波長もだんだんと短くなってきました。

 

2000年代中頃の技術予測は以下のようでした。(若干の日時の前後はご容赦)

①    2000年頃まで

半導体露光装置の光源として、KrFレーザー(波長248nm)

半導体の線幅130nmまで

②    2000年代中頃まで

半導体露光装置の光源として、ArF(フッ化アルゴン)レーザー(波長193nm)

半導体の線幅100nm~70 nm前後

 

③    2000年代末

半導体露光装置の光源として、F2レーザー(波長157nm)

半導体の線幅50nm

 

④    2010年代

半導体露光装置の光源として、EUV(波長13.5nm)極端紫外線を用いる

 半導体の線幅50nm以下

 

(注)半導体の線幅とレーザーの波長の単位

     nm:ナノメートル、1mm(ミリ)の1/1000000、1μmの1/1000

     μm:マイクロメートルまたはミクロン、1mm(ミリ)の1/1000

 

(注)EUV:Extreme Ultra Violet 極端紫外線

       紫外線の中で一番短い波長領域。隣はX線なので、X線の特徴も持つ

 

半導体露光装置の光源は、このような技術予測に沿って進んでいくかと思ったら、そうはなりませんでした。①と②はこの通りでしたが、次の③のF2レーザーは採用されず、違う技術が出てきました。それと同時にシェアが劇的に変化しました。

 

次回は、なぜ③のF2レーザーが無くなったかという話です。

 

続きはこちら

2016.05.11