ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

広島・長崎・平和祈念式典

2011年08月10日 | 東日本大震災
毎年行われる、原爆投下日の平和祈念式典。

今年は、福島県民にとっても日本国民にとっても、一層重く心にのしかかるものとなった。

いや、「今年、福島第一原発事故があったから」ことさら重くのしかかる、ということそのものが、
そもそも、わたしたちの、甘さだったのだ、とも思う。

「福島で暮らすということ~」のエントリーのコメントで、広島の方だったと思うが、
いったい皆さんの何人が、広島。長崎の原爆投下日や阪神大震災の日時を、時間を正確に言えるか、
という問いかけがあった。

本当に、その通りだ・・・。

のど元過ぎれば熱さを忘する、ということわざがある。
世界でも唯一の原爆投下による被爆国の日本で、こともあろうに、原発事故が起きた。
・・・・こんなに恥ずかしいことは、ない。

毎年、毎年、8月6日と9日、広島・長崎で行われる記念式典のニュースを目にして、
いったい、わたしたちは、何を考えて行動してきたのだろう。
何にもしてこなかったのではないか。
認めたくはないが、おそらく、広島や長崎の方々以外は、「ひとごと」だったのではないか。
原爆と原発は違うから、きっと大丈夫だ。
そんな、根拠のない安全神話を、実は頭のすみっこでは疑いながら、
快適さと効率を選んでしまっていた。

わたしは、反原発デモに参加するつもりもないし、
「福島のこども達に放射線の健康被害が出る」という論調を錦の御旗にして、反原発を訴えるつもりもない。
(だって、実際には健康被害は、おそらく殆どは出ないと思うからね。)
でも、原発は、いらない、と心から思う。

住民のほとんどには、健康被害が出ないと思う。
これは、広島・長崎・そしてチェルノブイリでの疫学調査からも、ほぼ信頼おけることだと認識している。
でも、今も事故の収束に向けて日々活動しておられる現場の方々は? そのご家族の思いは?
もしかしたら、半永久的に、暮らしていた町に戻れないかも知れない方々の思いは?
週刊誌やネットの誇張された煽り記事で、不安になっている方々の心は?

こんな思いは、ごめんだ。
福島だけで、たくさんだ。
それなのに、やらせメールだのなんだのと、
この国のエライさんたちの考えていることは、さっぱりわからない。理解不能だ。
福島原発事故の終息もまだなのに、原発再稼働なんて、信じられない。
だいたい、電力は、本当に原発なしでは、ダメなのか?
今年の夏も確かに猛暑だけど、今、計画停電もせずに、どうにかなってるじゃないか。

広島・長崎の方々の苦難をきちんと理解していたら、こんなことにはならなかったのじゃないか。
そして、福島原発事故のことを他山の石と考えてる人たちがまだいるのだとしたら、
同じことが、いずれまた起きるかも知れない。

核兵器廃絶も、脱原発も、目指す根本的なことろは、同じだ。
放射線による人体への影響を、これ以上、絶対に引き起こしてはいけない、ということだ。

 くどいけれど、福島では、おそらく健康被害は起きないと思う。
 でも、もしかしたら起きるかも知れないという不安そのものや、
 そこにはもう住めないかも知れない、ということが、すでに大きな問題なんだ。
 そして、これも広い意味での、人への影響だと思う。

今年は、6日と9日の平和祈念式典を録画して、仕事が終わってから観た。

長崎市長の、平和宣言の全文
http://www.asahi.com/special/npr/SEB201108090009.html

この宣言の、最後の方・・・、
「1945年8月9日午前11時2分、原子爆弾により長崎の街は壊滅しました。
 その廃墟から、私たちは平和都市として復興を遂げました。
 福島の皆さん、希望を失わないでください。
 東日本の被災地の皆さん、世界が皆さんを応援しています。
 一日も早い被災地の復興と原発事故の収束を心から願っています。」


この言葉に、涙が出てしまった。

うん。
歯を食いしばって、頑張ろう。


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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
福島市に汚染土埋めたのですね (都内住み)
2011-08-23 22:56:41
国の指示が遅いので福島市に汚染土をひそかに埋め立てた。という記事を見ました。山の中という事ですが人家が近くにあるようです。
日本では報道されてません。アメリカの朝日新聞のネットニュースに掲載されました。
酷すぎます。
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そうだ、がんばろう!!^^ (山田)
2011-08-24 09:22:10
今年の記念式典の市長の平和宣言は、広島も長崎も、とても身近に感じるものでしたね。
あの日、ただ普通に生活していて、誰に迷惑をかけたわけでも、何か悪い事をした訳でもなく、ただ、あの時代にあの場所に生きていた、それだけで、全身を高熱で焼かれた広島と長崎。敗戦後、アメリカの支配に入らなければ、ソ連か他国に分割されてドイツのような運命になったかもしれない日本が、戦後10年目で原発導入を断れる筈もなく、国を挙げて原発神話が唱えられ、あの時代に反原発を言う事自体が攻撃の対象になりました。また、原発の導入で日本は豊かになり、私たちはその豊かさを当然の権利として享受してきました。
つまり、時代には時代の流れがあって、その中で多くの人が汗を流して奔走したからこそ日本はここまで復興したわけで、それを安易に責めるべきではない、豊かさを享受できたことを感謝すべき、と思うのです。その上で自分たちが「他人ごと」として知ろうと努力をしなかったことを反省し、今後、日本をどうするべきなのかを、皆で話し合うべきに思うのです。一番いけないのは、自分の不安や怒りを、ただ隣の人にぶつけて、誰かを攻撃して悪者にして引き摺り下ろす事です。攻撃する方はそれで自分は満足ですが、攻撃された方は、どれだけの偏見や嫌がらせに苦しむのか・・・そこをもっと各自が自覚しなければいけません。福島の子ども達が政治家に質疑応答する?事案が先日あったようですが、福島の子どもたち自身が「自分は放射性物質に汚染された人間で、国からも見捨てられ、日本中から偏見の目で見られているんだ」と思い込むのではないか・・・ということが一番心配です。広島、長崎からの願いは、66年間こんな思いをして、それでも生きているという苦しみを、もう他の誰にも味あわせたくない、という事なのです。
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希望 (福島県民)
2011-08-24 20:41:28
私も希望を失いません。福島の復興を心から信じています。一緒にがんばりましょう!
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黙祷 (こだくさん)
2011-08-25 00:50:19
毎年、原爆が落とされた日の、原爆が落とされた時間に
市が黙祷を促すアナウンスを流します。
たった1分間ですが、苦しみを想像し、ご冥福を祈り、平和の尊さを思います。

今年、6日の朝は高校生と中学生の子供達が一緒でした。
部活に出かけるため、慌てて朝食を摂っていた中学生の娘は
1分間の黙祷中に立ち上がり、兄にたしなめられましたが
「じゃあ運転中の人は車止めるの?」と口答えしたので
私が不謹慎だと叱りました。

良いチャンスだったので、原爆の被害や核の問題から福島の事故まで
乏しい知識ながら、子供達に伝えたかったことを静かに話しました。

少しは大切なことを伝えられたようで
最初は涙で濡れた高校生の娘の目が
だんだんと深くを見つめる真剣な眼差しに変わりました。
妹をたしなめた兄も、戦争と福島の原発に通じるものがあることに
その時まで思い及んでいなかったようで
最後までしっかり私の話を聞いてくれました。

長崎市長が式典でおっしゃったことのひとつひとつは
今までも繰り返し叫ばれてきたことだけれど
今年ほど、その意味や重さを感じた年はありませんでした。

日本は、世界で唯一、核爆弾の悲惨さを知っている国。
私達はその国、日本で生きているのだから
子供達が生きる未来に、核のゴミとゆう負の遺産を残すことについて
しっかりと襟を正さなければいけませんね。

大人、一人ひとりに課せられた責任として
私達には一票の責任があるのだから
一国民としてハッキリとした意思表示をすることで
子供達の未来を守らなければいけないし
責任を果たす姿を示していかなければと、思います。

日本人の平均寿命が80歳前後だから、私の寿命が尽きるまで、あと40年あるかなぁ。
おばあちゃんになった時
「あの頃はすぐに原発を止めるなんて無理だと言う人が多かったけど
やっぱり人間ってすごいもんだね。やればできるんだから。」
そう言って、今を振り返ることができるように。

やみくもに放射線を怖がるばかりでなく
本当の意味で子供達を守るためにすべきことを
見極めて行動しなきゃいけないと思います。
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Unknown (いいかげんにして)
2011-08-25 23:31:34
>住民のほとんどには、健康被害が出ないと思う。
これは、広島・長崎・そしてチェルノブイリでの疫学調査からも、ほぼ信頼おけることだと認識している。

広島や長崎のケースと福島は違うでしょう。
そして、疫学よりも更に進歩した検証では、福島も安全とは言えないと言っている専門家は大勢いる。
少なくとも、児玉教授のコメントは紹介すべきでは?
自分の都合の悪いことはすべて無視ですか。
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わたしも! (なおみ)
2011-08-26 15:18:57
皆さんのコメントと管理人さんと・・・同じ思いです。

>私たちはその豊かさを当然の権利として享受してきました。
>その上で自分たちが「他人ごと」として知ろうと努力をしなかったことを反省し

「自分だってよく考えもしないで、これまでいい思いしてきたくせに」と私は自分のことを思うのです。何もしてこなかったくせに、被害者ぶるだけなんておこがましいよ、と。

>福島の皆さん、希望を失わないでください。
東日本の被災地の皆さん、世界が皆さんを応援しています。
 一日も早い被災地の復興と原発事故の収束を心から願っています。

こう祈ってくれる人がいるなら、全然へーき!まだまだ~!と思えます。
ニッコリ笑ってありがとう!です。
返信する
記事とは関係ありませんが・・・ (お舟ちゃん)
2011-08-28 12:26:31
中1、小5、小3の子を持つ福島市内在住の父です。
福島市は小学校の夏休みがいつもより長くなり、
9月1日から新学期…。
震災で先生方の人事異動が延期された影響から、
新学期から新しい担任になります。
それは仕方ないのですが、
仲の良いお友達が新学期を機会に転校することになりました。
そのお母さんから、
「なんでお舟さんのお宅は避難しないの?」
と聞かれたので、
「子どもたちと相談して、避難しない事に決めました」と正直に答えました。
すると、
「子どもに判断させるなんで間違っています。子供の将来がどうなっても貴方は構わないの?」と厳しく攻め立てるように言われました。
私も、親として子どもが心配で、放射線量の数値に日々、不安を感じています。
しかし、「お前たちだけでも大阪に避難しないか?」と子どもたちに話すと、
「絶対に嫌だ。」「福島が好きだし、パパママと離れて暮らせない。」「転校したくない。」
そういう子どもたちの気持ちを無視できなくて結論を出せないでいます。(今さら…という気持ちもあります)
避難という結論を子どもにさせて避難しないのは、親として最低なんでしょうか?
テレビのニュースで、「福島に密着」などと言い、
転校する子どもの涙をドラマのシーンを流すように面白おかしく流しています。
そういう姿をみると、胸が苦しくなり、
私は自分自身を責めます。
避難しない、させない親は、「悪」なのでしょうか?
「国が悪い」と国に責任を転嫁しても解決しません。

このままでは鬱になってしまいそうです。
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希望も信念も捨てずに・・・ (管理人)
2011-08-29 04:03:36
山田さん、福島県民さん、こだくさんさん、なおみさん、
ありがとうございました。

山田さんのおっしゃるとおりですね。

福島県民さん、そうですね。頑張りましょう。

こだくさんさん、
きっとお嬢さんは、大人になって母親になった時に、
この日、お母さんから言われたことをきっと思い出すと思います。

なおみさん、
「希望を捨てないでください」と祈ってくれる人がいる、
それって、すごく励まされますよね。
>全然へーき!、まだまだ~!
わたしも、そう思えます。

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お舟ちゃんさんへ (管理人)
2011-08-29 04:16:49
辛い思いをなさったのですね。
そうなんです、わたしが日頃、外来での親後さんたちを通して心配していることが、
まさにこのようなことなんです。

反論は必ずありますが、何度でも申し上げます。
広島大学の田代聡教授の調査によれば、
福島でこれから生活していても、お子さんたちに健康被害が出る可能性は、かなり低いです。
(ほとんどは大丈夫と考えてもいいぐらいです。)
田代教授の調査結果は先日の日本小児科学会でも報告されました。
が、その発表を、やはりメディアによってバイアスのかかった報道がされました。
これに関しては、出席して田代教授の講演を聴いた多くの小児科医から(県外の小児科医からも)、
「事実とは異なる」と抗議の声がメディアに対して寄せられています。

それでも、ここれ暮らすことの不安が大きいかたは、避難する選択もいいでしょう。
お舟さんのように、ここで暮らす選択をするのも、何ら間違いではありません。
ご自分を責めないで下さいね。
どうぞご自分たちの選択に自信を持って、これからも暮らしてください。
応援しています。

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ありがとうございます (お舟ちゃん)
2011-08-29 22:01:22
悩んでも悩んでも、答えが出なくて苦しんでいました。
福島で暮らす不安はありますが、避難はしたくないのです。
先生のアドバイスで少しだけホッとしました。
「男のくせに…」と思われるのが嫌で、
誰にもこの不安感を打ち明けられませんでしたが、
コメント書き込みして良かった。
私も頑張って福島を生き返らせるために頑張ります。
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