所属しているMLなどにも投稿したことなのだが、
このところずっと、考えていることがある。
放射線による健康被害は、ほとんどは大丈夫だと、わたしは認識している。
が、それはゼロということではない。
私たち医師は、これまでの診療で、
予後不良かもしれない、というお子さんに遭遇した経験は、大なり小なり、ある。
そのようなお子さんを紹介する立場、受ける立場の方々がいる。
今わたしは開業医だから、ほとんどは紹介する立場だが、勤務医の頃は、受ける立場でもあった。
もしかしたら悪性かもしれない病気の疑いのあるお子さんの親御さんに、どのように、ご説明するか。
難しい病気の診断や治療はもちろん難しいのだが、その説明には、とりわけ、心を砕かねばならない。
伝え方ひとつで、本人も家族も希望を失うことだってあるのだから・・・。
今、福島の子ども達は、
「あなたがたは、将来がんになる」
「あなたがたは、将来まともな子どもを持つことができない」
と宣告されているに等しい、という状況にさらされていることを、どうか想像してみて欲しい。
しかもその確率たるや、自然発生に比べても微々たるもので、
ほとんどは問題にならないであろうと、疫学的には考えられているにもかかわらず、だ。
子ども達は、大人の話を聞いている。
そして、小さな心を痛め、悩んでいる。
夏休み前、発疹を主訴に来院した中学生のお嬢さんがいた。
なんのことはない、りんご病だった。
それなのに、そのお嬢さんの表情が暗い。
どうしたの? と聞くと、
彼女は学校でクラスメートから
「内部被ばくのせいじゃない?」と冗談を言われたのだそうだ。
笑い話だとは分かってるけれど、内心は不愉快だし不安だったそうだ。
こんなの、全然関係ないよ、第一、もしも仮に内部被ばくしてたところで、
今の福島市なら、それも全然問題ないレベルだよ、あなたは大丈夫!
そう伝えると、本当に安心した笑顔になった。
診察上は何も所見がないのだけれど、
腹痛だの、吐き気だので来院するお子さんたちもいる。
その子たちに、
「もしかして、放射線のこと、心配なの?」
と聞くと、ほとんどの子ども(おもに小学生以上ですが)はうなずく。
大丈夫だよ、放射線のせいじゃないよ、と伝えると、
みんな明らかに、ぱぁっ、と安心した笑顔になる。
中学生~高校生は、ネット等で(怪しげな)情報を拾っているようだ。
サーバリックスは接種したほうがいいのか、今更どうなんでしょう、
どうせ、いずれがんになるかもしれないのに、
と、真面目に質問なさるお母さんもいた。
溢れかえる情報は、週刊誌やネットでも簡単に閲覧できる。
書店に行けば、「放射線対策」「放射線Q&A」などの本が平積みだ。
しかもそのほとんどは、にわかジャーナリストやら、似非専門家のもの。
確かに、未だに続いている低線量の環境放射線レベルは、
ここに住む人々の気持ちを、とりわけ、子どもを持つ親を不安にさせる。
これは、確かに、福島原発事故のせいだろう。
でもそれは、東電のせい?
政府のせい?
私は、それだけじゃないと思う。
溢れかえる情報の、何が間違いで、何が正しいのか、
私たち医師が、きちんと理解して伝えきれてない
そのことこそが、大きな原因だと思う。
このように書くと、
本当のことはわからないから、というご意見もあると思う。
なにせ、世界でも初めての事態なのだら。
やみくもに「安心だ、大丈夫だ」とは言えない、
先のことはわからないのだから、「わからない」としか言いようがない。
確かに、その通りだ。
でも、「わからない」と答えることが、本当に誠実なのだろうか?
人は、先の見通しがつかないことに、不安を覚えるものだ。
例えば子どもの発熱にしたって、そうだ。
この熱がいつまで続くのか、このまま下がらなかったらどうしよう、
その不安感が、子どもの救急外来受診につながる。
この状態なら大丈夫、あと2~3日後には下がりますよ。
このようにお伝えするのは、過去のデータや経験の蓄積があるからだ。
そして、そのように伝えてもらえれば、ほとんどの親御さんは安心できるのだ。
放射線の健康被害の過去の疫学調査で云々するのは、先になってからでないと言えない、
と東大の児玉教授はおっしゃっていたが、本当にそうだろうか?
「医学は経験の学問なんだ」とかつて教えて下さった大先輩がいた。
私たちは目の前の患者さんを診察し、その診察結果と過去のデータ(すなわち教科書)
を照らし合わせ、診断を下している。
これを放射線による健康被害にたとえて言うなら、
原発周辺の地域・飯舘村・山木屋のお子さんは、今後の詳細な健康調査が必要だが、
それでも、リスクはかなり低いと考えらる。
さらに、これらを除いた地域、今現在の福島市・郡山市などの低線量放射線レベルは、
将来に健康被害をきたすリスクはもっと低い、
これまでの疫学調査から、これは、ほぼ間違いないことだと、わたしは理解している。
そのような見解を述べる専門家の方々を「御用学者」扱いにするのは、間違っている思う。
例えば、
「1%でもリスクがあるのだから、安心はできない」 と伝えるのと、
「リスクは1%だけれど、99%はおそらく大丈夫だよ」 と伝えるのと、
内容は、同じだ。
どちらが、人に優しい?
安心を与えることは、騙すことだろうか?
これから10年・20年・30年にわたって、
「いつか、がんになるかもしれない」という不安をかかえて成長することと、
「もしかしたら、がんになることも万が一にはあるかもしれないけれど、
ほとんどは大丈夫」
と信じて成長することと、
どちらが、子どもにとって幸せだろう?
みんなは、ご自分のお子さんには、どちらの説明をして欲しいかな・・・。
万が一にも起こりうる可能性を全て伝えることって、実は、伝える方は気が楽なんだ。
だって、あとで何かあっても、ほらね、やっぱり、と責任のがれができるからね。
逆に、ほとんどが大丈夫(でも万が一)ということに対して、
「大丈夫ですよ」と伝えることは、かなり勇気がいる。
でも、今、福島県の小児科医は、このような勇気が必要なんだと思っている。
福島の子どもたちは、大丈夫なんだよぅ
お願いだから、これ以上、子ども達に不安を与えるのは、やめて欲しい・・・。
このところずっと、考えていることがある。
放射線による健康被害は、ほとんどは大丈夫だと、わたしは認識している。
が、それはゼロということではない。
私たち医師は、これまでの診療で、
予後不良かもしれない、というお子さんに遭遇した経験は、大なり小なり、ある。
そのようなお子さんを紹介する立場、受ける立場の方々がいる。
今わたしは開業医だから、ほとんどは紹介する立場だが、勤務医の頃は、受ける立場でもあった。
もしかしたら悪性かもしれない病気の疑いのあるお子さんの親御さんに、どのように、ご説明するか。
難しい病気の診断や治療はもちろん難しいのだが、その説明には、とりわけ、心を砕かねばならない。
伝え方ひとつで、本人も家族も希望を失うことだってあるのだから・・・。
今、福島の子ども達は、
「あなたがたは、将来がんになる」
「あなたがたは、将来まともな子どもを持つことができない」
と宣告されているに等しい、という状況にさらされていることを、どうか想像してみて欲しい。
しかもその確率たるや、自然発生に比べても微々たるもので、
ほとんどは問題にならないであろうと、疫学的には考えられているにもかかわらず、だ。
子ども達は、大人の話を聞いている。
そして、小さな心を痛め、悩んでいる。
夏休み前、発疹を主訴に来院した中学生のお嬢さんがいた。
なんのことはない、りんご病だった。
それなのに、そのお嬢さんの表情が暗い。
どうしたの? と聞くと、
彼女は学校でクラスメートから
「内部被ばくのせいじゃない?」と冗談を言われたのだそうだ。
笑い話だとは分かってるけれど、内心は不愉快だし不安だったそうだ。
こんなの、全然関係ないよ、第一、もしも仮に内部被ばくしてたところで、
今の福島市なら、それも全然問題ないレベルだよ、あなたは大丈夫!
そう伝えると、本当に安心した笑顔になった。
診察上は何も所見がないのだけれど、
腹痛だの、吐き気だので来院するお子さんたちもいる。
その子たちに、
「もしかして、放射線のこと、心配なの?」
と聞くと、ほとんどの子ども(おもに小学生以上ですが)はうなずく。
大丈夫だよ、放射線のせいじゃないよ、と伝えると、
みんな明らかに、ぱぁっ、と安心した笑顔になる。
中学生~高校生は、ネット等で(怪しげな)情報を拾っているようだ。
サーバリックスは接種したほうがいいのか、今更どうなんでしょう、
どうせ、いずれがんになるかもしれないのに、
と、真面目に質問なさるお母さんもいた。
溢れかえる情報は、週刊誌やネットでも簡単に閲覧できる。
書店に行けば、「放射線対策」「放射線Q&A」などの本が平積みだ。
しかもそのほとんどは、にわかジャーナリストやら、似非専門家のもの。
確かに、未だに続いている低線量の環境放射線レベルは、
ここに住む人々の気持ちを、とりわけ、子どもを持つ親を不安にさせる。
これは、確かに、福島原発事故のせいだろう。
でもそれは、東電のせい?
政府のせい?
私は、それだけじゃないと思う。
溢れかえる情報の、何が間違いで、何が正しいのか、
私たち医師が、きちんと理解して伝えきれてない
そのことこそが、大きな原因だと思う。
このように書くと、
本当のことはわからないから、というご意見もあると思う。
なにせ、世界でも初めての事態なのだら。
やみくもに「安心だ、大丈夫だ」とは言えない、
先のことはわからないのだから、「わからない」としか言いようがない。
確かに、その通りだ。
でも、「わからない」と答えることが、本当に誠実なのだろうか?
人は、先の見通しがつかないことに、不安を覚えるものだ。
例えば子どもの発熱にしたって、そうだ。
この熱がいつまで続くのか、このまま下がらなかったらどうしよう、
その不安感が、子どもの救急外来受診につながる。
この状態なら大丈夫、あと2~3日後には下がりますよ。
このようにお伝えするのは、過去のデータや経験の蓄積があるからだ。
そして、そのように伝えてもらえれば、ほとんどの親御さんは安心できるのだ。
放射線の健康被害の過去の疫学調査で云々するのは、先になってからでないと言えない、
と東大の児玉教授はおっしゃっていたが、本当にそうだろうか?
「医学は経験の学問なんだ」とかつて教えて下さった大先輩がいた。
私たちは目の前の患者さんを診察し、その診察結果と過去のデータ(すなわち教科書)
を照らし合わせ、診断を下している。
これを放射線による健康被害にたとえて言うなら、
原発周辺の地域・飯舘村・山木屋のお子さんは、今後の詳細な健康調査が必要だが、
それでも、リスクはかなり低いと考えらる。
さらに、これらを除いた地域、今現在の福島市・郡山市などの低線量放射線レベルは、
将来に健康被害をきたすリスクはもっと低い、
これまでの疫学調査から、これは、ほぼ間違いないことだと、わたしは理解している。
そのような見解を述べる専門家の方々を「御用学者」扱いにするのは、間違っている思う。
例えば、
「1%でもリスクがあるのだから、安心はできない」 と伝えるのと、
「リスクは1%だけれど、99%はおそらく大丈夫だよ」 と伝えるのと、
内容は、同じだ。
どちらが、人に優しい?
安心を与えることは、騙すことだろうか?
これから10年・20年・30年にわたって、
「いつか、がんになるかもしれない」という不安をかかえて成長することと、
「もしかしたら、がんになることも万が一にはあるかもしれないけれど、
ほとんどは大丈夫」
と信じて成長することと、
どちらが、子どもにとって幸せだろう?
みんなは、ご自分のお子さんには、どちらの説明をして欲しいかな・・・。
万が一にも起こりうる可能性を全て伝えることって、実は、伝える方は気が楽なんだ。
だって、あとで何かあっても、ほらね、やっぱり、と責任のがれができるからね。
逆に、ほとんどが大丈夫(でも万が一)ということに対して、
「大丈夫ですよ」と伝えることは、かなり勇気がいる。
でも、今、福島県の小児科医は、このような勇気が必要なんだと思っている。
福島の子どもたちは、大丈夫なんだよぅ
お願いだから、これ以上、子ども達に不安を与えるのは、やめて欲しい・・・。