ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

ピアノとわたし

2010年08月29日 | 音楽

幼稚園の頃から習っていたピアノ。
途中、いくつもの中断があったけど、未だに続けています。

今日は、10年ほど前から習っている先生の教室のピアノ発表会でした。
小さいお子さんに混じって、わたしも演奏させていただきました。
演奏したのは「別れの曲」。
これも、ショパンのエチュード集の中のひとつです。
選曲したのはもう半年以上も前のこと。
先生が提示して下さった何曲かの中から選んだのですが、
この曲は難しいのはわかっていたので、はじめは躊躇しました。
メロディーだけだと優しくきこえるのだけれど、
じつはこれ、和音でメロディーが響くように弾かなくちゃいけない。
その上、中盤はテクニック的にも譜読みも難解で、
わたしにはとても弾きこなせないと思ったから。
だってね、この手のロマンチックな曲、って、その人の中身が出るんだよね。
先生は、だいじょうぶよ~♪ とあっさりおっしゃるけれど、
がさつなわたしには、無理、無理、と思いました。

それでもあえて選んだのは、夫のひと言でした。
亡くなった夫の母が、この曲が大好きだったのだそうです。
夫も中学生までピアノを習っていたのだそうですが、
いつかこの曲を弾いて聴かせて欲しいと言ってたそうです。
でも、厳しい先生の上に、女の子ばかりの中で続けるのが嫌で、
(今だったらなんともったいないことだと言ってますが)
夫はやめてしまったそうな。
息子の代わりに、嫁のわたしが弾いたら母は喜んでくれるかな、なんて・・。

もうひとつの選曲の理由は、亡くなった友人たちのために。
ひとりは、こころざし半ばで亡くなった大学の友人。
彼女は、バラとかショパンとか、ロマンチックなものが好きでした。
もう一人は、バイオリンをやっていた友人。
彼とは中学校の同級生だったのだけれど、互いの家庭環境が似ていたこともあって、
多くを説明しなくても話が通じるところがあり、私にとっては大切な友人でした。
彼は難病の末亡くなったのだけれど、その病名を知っていたのは本人と主治医だけで、
ご家族にも、もちろんわたし達友人の誰一人にも教えることなく、
亡くなる前日まで家族と一緒に過ごしたまま、亡くなったのです。
奥さまと子ども達と、バイオリン教室の生徒さんたちと、バイオリンと音楽を、
心から大切に大事にしていました。

さて、本番。
ホールのピアノは、スタインウェイのコンサートグランドです。
普段はなかなか触ることができないピアノを弾くだけでも、嬉しいというもの。
目立たないように深呼吸して、弾き始めました。

     お母さん、ともだち、聴いててね・・・

途中まではまぁまぁ、うまくいったのだけれど、
やっぱりやっちゃいましたよ。大きなミスタッチ。(^^ゞ
それも、中盤のうんと難しいところで、あとうことか、両手でばしっと押さえる和音を、
全部、1音ずつずれた鍵盤を弾いてしまいました。
何食わぬ顔でそのまま弾き続け、止まることはありませんでしたが、
分かる人にはバレバレの間違いでした。
終わったあとで、夫のひと言。
「あそこ、編曲したのかと思った。」・・だと。
生誕200年のショパンもびっくり の演奏でありました(^_^;)

やっぱり出ちゃったなぁ、がさつな中身。
天国の友人も笑ってるかも。
キミらしいよ、って。

手足口病とヘルパンギーナ

2010年08月03日 | 医療
今年の夏の異常な暑さのせいなのか、
例年になく手足口病とヘルパンギーナが流行中です。

手足口病とは、文字通り手のひら、足の裏、口の中に水泡ができる病気で、
代表的な夏かぜのひとつです。
原因は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスというウイルス感染で、
飛沫感染(空気感染)する他に、便にもウイルスが排泄させるので、
保育園などでは、あっというまに流行します。
それじたいは、たいした病気ではないことが多いのですが、
小さい赤ちゃんたちだと高熱が数日続いたり、下痢が長引いたり、
喉の粘膜の水疱が痛くて食事や哺乳が困難なことがあって、
きちんと手当しないと脱水症状を起こして弱ってしまいます。
また、まれにですが、心筋症や脳炎などの合併症の報告もあります。
(わたし自身はこれらの合併症の経験はありませんが・・・)

ヘルパンギーナも手足口病を同じコクサッキーウイルスやエコーウイルスなどの感染症で、
熱が3~4日続き、喉の粘膜に水疱ができます。
これも、のどの水疱が痛くて飲んだり食べたりができなくなることが多いです。

いずれも、症状が治るのには約一週間ぐらいです。

今の学校伝染病予防法では、厳密な出席停止の病気にはなっていません。
なので、わたし達小児科医も、熱がなくて食事も普通に摂れるようなら、
保育園や幼稚園や学校を治るまで休みなさい、とは言いません。
「本人の症状次第で登園・登校は可能」ということになっています。

でも。・・でも、なのです。

はしかや水疱瘡のように「休まねばなばない病気」ではない、けれども、
それは、「登園・登校しても人にうつさない」ということではないのです。

どういうことかというと、
症状が消えるまで休ませても、感染の流行の阻止にはならないことがわかったので、
あえて「他への感染防止のために休ませる」意味がないから、
というだけのことなんです。

ですから、同じ保育園児でも、年長さんと、赤ちゃんクラスのお子さんとでは、
対応を少し変えないといけないのではないかな、
とわたしはいつも考えています。
なぜなら、仮に熱がなくても、”食べられない、飲めない”ことで、
赤ちゃんのほうが、弱りかたがひどいからです。
今年は、暑さも手伝って、これらの病気にかかって点滴に通った赤ちゃん達が、
たっくさんいました。
やっぱり、無理して保育園に登園させてしまったお子さんが多い傾向です。
このご時世、簡単にお仕事を休む訳にいかないのは、百も承知。
だけど、それもこれも、まずはお子さんが健康であってのこと。
中には、ほかのところで手足口病は登園しててもいいからと言われた、
とおっしゃるお母さんもいました。
基本はそれで間違いじゃないんだけど、だからといって、
お熱があったり、食欲が明らかに低下している時は行かないほうがいい。

これも、小児科医の説明不足かな、と、
あらためて自分自身をも戒めています。