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堤未果のショックドクトリン 堤未果

ナオミクラインの「ショックドクトリン」に啓発された著者が、主に日本の最近の政治的な出来事をショックドクトリンの考え方に当てはめて考察していく一冊。クラインの「ショックドクトリン」とは、世界を震撼させるショックな出来事が起こった後、人心がパニック状態にあるうちに規制緩和や民営化などを急速に推し進めていく政策、ドクトリンのことで、その背後にはシカゴ大学教授ミルトン・フリードマンの新自由主義を信奉するシカゴ学派と呼ばれる頭脳集団と、自分の利益のためにそれを利用する投資家や企業家がいるという考え方だ。クラインの著書では、3.11テロやハリケーンカトリーナの後のパニックが急速な規制緩和、大規模開発、極端な監視社会をもたらしたと分析しているが、本書が考察するのは、コロナ禍後の日本のマイナンバーカード、コロナワクチンや脱炭素という風潮に群がる政治家と企業の火事場泥棒的な振る舞いの数々。それらを糾弾する著者の筆はまさにタブーなしの容赦ないもので著者の覚悟と勇気が際立った内容だ。マイナンバーカードを無理やり普及させようとしたり健康保険証と一体化させようしたりといった拙速な愚民政策、風力発電や電気自動車などへの無批判な礼賛など、自分自身も何か違和感を覚えていたが、それにしっかりした根拠をもって明快なダメ出しをしてくれる目の覚めるような一冊だった。(「堤未果のショックドクトリン」 堤未果、幻冬社新書)
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