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数字のセンスを磨く 筒井純也
社会実験やアンケート調査などを行う際、対象とする治験者をどのように選別すべきか、アンケート調査の質問事項をどのような表現にすべきか、それらの実験や調査の結果をどのように評価すべきか。本書は、そうした問題のポイントについて、豊富な実例をあげてわかりやすく教えてくれる。結論としては、数字で示されたアンケート調査や実験の結果をあまり鵜呑みにせず、論理的にここまでは言えるという感じで意味を読み取ることが重要ということになる。この結論、言われてみればごく単純なことだが、これまでこうしたことを深く考えたことがなかったので、読んでいてなるほどなぁと思うことが多かった。巻末の略歴を見ると、著者の専門は家族社会学、計量社会学とのこと。特に人間を対象にした実験やアンケート調査では、結果に誤差が入り込みやすく注意が必要であることは自分や周りの人を考えてみても良くわかる。アンケート調査で年収を聞かれたらその情報が漏れて強盗に狙われたら嫌なので少なめに言ったり、逆に少なすぎると恥ずかしいので少し多めに答える人は多いはず。真正直に答える人はむしろ少数派かもしれない。また家族構成について聞かれたら、やはり少ないと強盗に狙われやすいから少しでも多めに答えておこうとする人はかなり多いと思う。学力テストでも、早くテストを終えて遊びたいのでいい加減に答えたり、学力のアップを強調したくて最初わざと点数を低くしておくくらいの知恵のある子どもはいくらでもいるはずだ。本書でもこうした誤差のバイアスについて色々な事例が述べられているが、自分が一番びっくりしたのは、アメリカの1セント硬貨をスピンさせて表裏の出る確率が2対8だという記述。単純に確率の話だからと考えてしまうと陥る落とし穴には普段から十分注意しなければと思った。(「数字のセンスを磨く」 筒井純也、光文社新書)
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