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宇宙生物学で読み解く人体の不思議 吉田たかよし

宇宙論の知見をベースにして地球上の生物や人間というものの成り立ちを解説してくれる啓蒙書。宇宙論のオンライン講義を聞いていると、人間の体の構成分子が惑星の衝突とか原始太陽系円盤の形成とかに由来するという説明があり、とても神秘的な感覚に襲われるが、それを生物学的医学的にはどのように捉えているのかも気になる。著者は宇宙生物学の研究者だったがある時一念発起して医学に転身したという経歴の持ち主で、まさにそうした疑問に答えてくれる本書を書いてくれていた。本書では初っ端から地球上に存在する水の話になり、天体学入門で聞いた水惑星の起源の話とぴったりリンクする内容が語られ、さらに地球上生物の存続に関わる環境が月という衛星の存在、しかもちょうど良い大きさちょうど良い距離で存在していることに依存しているとの話へと続く。宇宙創世の話を色々聞いてきて、多少のことでは驚かなくなっていると思っていたが、それでも宇宙の神秘や生命の起源の話は舌を巻く奇跡の物語の連続だ。特に、細胞内のミトコンドリアがもともと別の生物でそれを体内に取り込み共生するようになったという話のところで、それが6億年前のカンブリア爆発を可能にしたという説明にはびっくりした。(「宇宙生物学で読み解く人体の不思議」 吉田たかよし、講談社現代新書)

ナトリウム:神経細胞や筋肉細胞に欠かせない物質。ナトリウムは原始地球の海の組成を体内に再現。
炭素:他の原子と結合しやすい→多様な分子を作れる。水によく溶けるので体内で運びやすい。
窒素、アミノ酸:空気中に豊富に存在。水素と結合しやすい。レゴのように組合せやすい。
リン:生命活動のエネルギー源として欠かせない。高性能の電池。
 ATP→ADP→AMPで高エネルギー発生。しかもAMP→ADP→ATPとリサイクル可能
   遺伝子DNA,RNAでも重要な役割
酸素:非常に不安定で何かとすぐ結合(燃焼、酸化)。扱いにくいがエネルギーは巨大。
   酸素を活用することで飛躍的に活発化、多様化
ミトコンドリア、葉緑素: もともと別の生物→細胞内に取り込んで共生。
植物の葉緑素もシアノバクテリアという別の生物。カンブリア爆発はミトコンドリア共生の結果  
鉄:恒星で作られる最も重くかつ最も安定した原子→地球で最多の原子(3割以上)
→人間、細菌の双方にとって最重要→感染防止→最小限残して排出→常に貧血状態
  体内で酸素の運搬を担うヘモグロビン、ミオグロビンも鉄を利用
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