「エチオピア南部に酒を主食としている人々がいる」という日本人研究者のレポートを頼りに、冒険家の著者がTV番組「クレージージャーニー」のスタッフと共に現地に赴き、その存在と彼らの実際の生活ぶりを確かめにいくという内容の一冊。日本を出国する前からハプニングやアクシデントの連続だが、本題に関しては、元々情報がほとんどないので、「予想外」というより「予想以上」の驚きが続く。著者らが実際に訪れた3つの村はそれぞれびっくりするような暮らしぶりだが、その根底にあるのは、高地なので土地が狭く、その中に様々な氏族や集団が暮らしている、その土地では水と食料が貴重といった特徴から、普通では考えられない食生活が行われている。さらに、他のアフリカの国や地方と違って植民地化されていないことにより欧米文化の影響を受けつつも合理的な理由で独自性を保っている。これらの条件の微妙な違いからそれぞれの集団にかなりのバリエーションがある。読んでいて最大の疑問は幼児や妊婦さんなどを含めてお酒ばかり飲んでいて大丈夫なのかということだが、何故か全く問題ないとのこと。楽しくも、普通とは何か常識とは何かを否応なく考えさせられる一冊だった。(「酒を主食とする人々」 高野秀行、本の雑誌社)