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ドキュメント 湊かなえ

ある高校の放送部が全国大会への出場を目指して活動する様を描いた本書、一応謎解きの要素はあるもののジャンルとしては完全に高校を舞台にした青春群像小説だ。ドキュメンタリーやドラマを作成する活動を通じて、メディアとは何か、人に情報を伝えたり感動を与えるためにはどうしたら良いかを議論しながら学んでいく様子が丁寧に描かれている。そして何よりも驚かされるのは、自分の発言や行動が相手にどのように思われるのか、周囲にどのような影響をもたらすのかを常に深く考察してしまい、言いたいことを言わなかったり行動を躊躇してしまう登場人物たちの振る舞いだ。そこには「誠実」という言い方では済ませられないような息苦しい逼迫感があり、つくづく今の世の中若者は色々大変だなぁと思ってしまう。それを読者に感じさせるのが著者の小説家としての力量なのだろう。(「ドキュメント」 湊かなえ、角川書店)
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