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お皿の上の生物学 小倉明彦

2021年05月28日 | 読んだ本
最近、読書傾向が数学、天文学、鳥類学などやや理系づいてきた流れもあり、生物学の本を物色していて面白そうな本を見つけたので読んでみた。大阪大学の先生による新入学一年生向け「5月病予防の楽しい授業」の講義録を中心にまとめた一冊とのことだが、これがものすごく面白い。ものの味覚、食材の色、料理の香り、盛り付けの食器、宴会料理などについて、ユーモアを交えて、それを物理学的、生物学的、化学的に考察し、色々な知見を与えてくれる。大学の講義らしく、時々「宿題」も出て、とにかく色々考えさせられることばかり。面白かった話は枚挙にいとまがないが、電気を持つ生物の生存戦略とは何か、何故味覚は甘い塩辛い酸っぱい苦い旨いの5種類なのか、刺身包丁の力学的利点とは何か、何故卵にはコレステロールが多いのか、といった話が印象深かった。また、ボーンチャイナの謂れとか、日本の季節料理やイベント料理の蘊蓄など知らないことも多く、知識を得たり、目の前の事物について色々考えてみることの楽しさを改めて思い起こしてくれる内容だった。(「お皿の上の生物学」 小倉明彦、角川ソフィア文庫)