goo

いまさら翼といわれても 米澤穂信

最近ノリにのっている著者の最新刊。古典部シリーズの第6作目。著者の魅力と才能を満喫できる短編集だ。これまでの5作は文庫で読んできたので、単行本で読むのはこれが初めて。何事にも消極的な高校生の主人公による日常の小さな謎解きというコンセプトはこれまで通りなのだが、正直に言うと、これまでの5作品、こんなに面白かったかなぁと思うほど、本作は面白かった。主人公を始めとする登場人物たちのキャラクターとかは変わっていないはずだが、読者に伝わる面白さが、単にこれまでの6作の中で最も面白かったという表現とは違うもののように感じられた。この感覚の違いが、著者の作風の変化によるものなのか、読み手側の「作者の作品ならば面白いはず」といった心構えの違いが反映されたものなのかはよくわからない。例えば、「何事にも消極的」という主人公のキャラクターが、本作では話の内容に大きく関わっていて、そういう事かと納得させられる場面がしばしばあり、うまいなぁというよりも深いなぁと感心してしまった。そんな感想を第6作目で初めて感じた。傲慢な上からの発言で大変申し訳ないが、やっぱり物語というものも時間と共に成長していくんだなぁとつくづく思った。(「いまさら翼といわれても」 米澤穂信、角川書店)

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )