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雪の断章 佐々木丸美

著者の本は2冊目だと思うが、書評誌で「これこそ作者の代表作」と紹介されており、ネットで購入して読むことにした。本の帯を見ると「徹夜必至」とある。読んでみると確かに本を置くことができなくなった。朝の通勤電車の中で読み始めたのだが、その日の夜、どこで読むのをやめて寝るか、なかなかやめられずに困った。翌日の仕事に差し支えるので徹夜はしなかったが、次の日が休日だったらおそらく読み終わるまで寝られなかったかもしれない。この本が途中でやめられないのは、ハラハラするストーリーとか先の見えない展開が読者を惹きつけるからではない。主人公の視点からの描写は、むしろ静かで展開も緩やかなのだが、その主人公の行く末が心配でやめることができないのだ。文章の力に脱帽する作家というのは、それほどはいないのだが、この著者はそうした数少ない作家の1人だと思う。解説を読んでこの作品が4部作の最初の作品だと知った。あと3作も続くということは、うれしい気がする一方、この作品の良さを損なってしまわないかという心配も頭をよぎる。それほど特別感のある作品だった。(「雪の断章」 佐々木丸美、創元推理文庫)

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