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神の値段 一色さゆり

2016年の『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。「美術ミステリーの新機軸」との謳い文句で、かなりの期待を持って読み始めた。読後の感想は、新人作家の登竜門の受賞作とは思えないほどしっかりまとまった作品だなぁといったところだが、美術界の裏側事情や芸術家の熱い想いなどが克明に描かれていてミステリー要素無しでも十分に楽しめる一冊だった。巻末には恒例の選者のコメントが収録されているが、今回のコメントでは、「このまま出版されて商業ベースにのるかどうか?」という点が強調され過ぎているような気がした。この様な基準で受賞作を選ぶ賞があることに異論はないが、それが強調され過ぎると、応募作品も当然それを意識したものになるし、選ばれる作品も冒険の少ないこじんまりとした作品ばかりになってしまう気がする。本書も、そうしたきれいにこじんまりとまとまった作品という部分は否めない気がした。(「神の値段」 一色さゆり、宝島社)

 

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