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さよなら神様 麻耶雄嵩

作者の作品は本当に一筋縄ではいかないものばかりだ。「プレゼンが下手で周りに話を聞いてもらえない名探偵」とか「見習い中の探偵」など不思議なキャラクターをいくつも生んでいる作者だが、今回は「犯人の名前だけを教えてくれる神様」というとんでもないキャラクターが登場する。真相をすぐに言われてしまってはミステリーにならないような気もするし、考えようによっては単なる刑事コロンボのような「倒叙形式」の変化形という見方もできるが、そこはちゃんと面白いストーリーを用意してくれている。但し、オーソドックスな倒叙形式と言えるのは最初の章だけで、第2章、第3章の事件になると、倒叙でも本格でもない作者独特の不思議な世界に入り込んでしまう。さらに極め付けが第4章で、ミステリーとしての結末の意外さに驚かされると同時に、こんな仕掛けが必要だったのかと思いたくなるような意外な事実に、心底びっくりさせられる。この意外な事実が最後の章でさらに意外な形で読者の前に提示されるに至って、これはもう倒叙とか本格といったジャンルを超えた小説なのだと気づかされる。(「さよなら神様」 麻耶雄嵩、文藝春秋社)

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