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仮面の商人 アンリ・トロワイア

書評誌に「腰が抜けそうなほど面白かった」とあったので読んでみることにした。それほどの分量の本ではないが、3つの章に分かれていて、最初の章は、若い作家の独白調の恋愛小説の趣で、うまく書けているなぁとは思うものの左程面白いというかすごいという感じではない。しかし第2章に入ると、俄然「わぁ何だこれは」ということになり、さらに最後の第3章で新たな展開があって、そういう小説だったのかということが明らかになる。読み終えて、文学とは何だろう、人の一生を総括するということはどういうことなのだろうか、などなど色々な思いが湧きおこってくる。作者の略歴をみると、多くの小説、多くの人の伝記小説を書いてきたフランスの老練の人気作家らしいが、作者が「伝記作家」でもあるということを知って、面白さが倍増した気がした。題名も、自分に向けた言葉のようで、自分の輝かしい業績をこのように総括できるのは本当にすごいことだと感じた。(「仮面の商人」 アンリトロワイ、小学館文庫)

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