燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医徳田安春の最新医学情報集。問診、フィジカル、医療安全、EBM、臨床研究に強くなれます。

ピットフォール 7

2015-04-14 | 症例集

 今回は「総合診療医に必須な循環器徴候」のつづきです

症例6   76歳女性  主訴:呼吸困難

 進行肺がんにて入院緩和ケアを受けていた。今回、数日前より労作時の呼吸困難があり、今朝より安静時にも呼吸困難を訴えるようになった。

 臥位で呼吸困難の憎悪があった。喘息の既往はなし。バイタルサイン:血圧90/70、脈138、呼吸30、体温36.5、身体所見上、著明な頚静脈怒張を認めた。

● ピットフォール

 担当医は、肺癌の進行による呼吸不全と考え血圧低下は脱水による低容量性ショックであると判断し、酸素投与と急速輸液の指示を出した。

● その後の経過と解説

 指導医により、血圧の呼吸性変動が確認され、吸気時の収縮期血圧は60で、呼気時の収縮期血圧は90であった。肺癌患者では、癌の心膜浸潤により心タンポナーデを高率に合併することが知られている。身体所見上、著明な頚静脈怒張を認め、心タンポナーデを考える。脱水(血管内低容量)では外頚静脈は怒張しない。この患者では、吸気時10mmHg以上のSBP低下(この患者の奇脈のサイズは90-60=30mmHg)であり、心タンポナーデ、重症喘息などを考慮しなければならない。この患者の場合、緊急で心嚢ドレナージが施行され、症状がすみやかに軽快した。

 動脈圧では呼吸性の変動をみることがあり、健常人でも血圧は吸気時に低下し呼気時に上昇するが、3ー9mmHg程度の変動に留まる。この呼吸性変化が10mmHgをこえる場合、奇脈pulsus paradoxusと呼ぶ。奇脈を認める疾患には、心タンポナーデや喘息重積発作などがある。心タンポナーデが進行すると、閉塞性ショック(高静脈圧型ショック)を来す。

 心タンポナーデでは、左心室の拡張障害をみるので、吸気時における静脈還流の増大に伴い右心室内の圧の増加によって心室中隔が圧迫され、左心室容積が相対的に小さくなる。左心室容積の縮小によって、左心室から迫出される血液駆出量が低下し、動脈圧(収縮期血圧)が下がる。奇脈のサイズ(呼気時収縮期血圧ー吸気時収縮期血圧)が大きければ大きいほど、心タンポナーデの重症度が高い。奇脈を認めたら、奇脈のサイズをフォローすることにより、重症度のモニターとすることができる。

● 最終診断:心タンポナーデ(肺癌の心膜浸潤)

 今回は以上です、話変わって、米ジョージア州オーガスタナショナルGCで行われた、マスターズ最終日は5アンダー10位スタートの松山選手は1イーグル、4バーディ、でこの日のベストスコア「66」で通算11アンダーの5位でフィニッシュしました、トップはウッズに次ぐ史上二番目に若い21歳3ヶ月でJ、スピースが18アンダーで優勝しました、松山選手の5位は良かったですがトップは18アンダーとは、上には上がいるという感じですね、では次回に。


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