モンタナには、19の商業テレビ曲、155のラジオ局があるとのこと。そして、ちょうどワシントンDCでの会議から帰ってきたばかりだったというブルースさんは、FCCによる周波数のオークション案に、地方の視点が欠けている、とくに、中継局に依存しており、出力も弱い小規模局にとっては生き残りがかかるという危機感を強くもっていた。この状況のために、モンタナの民主党上院議員ジョン・テスターと、ユタの共和党上院議員のオリン・ハッチが共同で超党派で呼びかけた、FCCへの手紙も紹介してくれたりなど、この問題に関して熱をいれて語ってくれた。
そうした問題のため、地方の、とくに小さな街のラジオ局やテレビ曲がいかにコミュニティにとって重要なのか、という視点からの話しを、事例とともにしてくれた。都会から離れた小さな街や集落にとって、とくに過疎化がすすんでいるところにおいて、地元の高校や大学のスメ[ツ中継やニュース、天気予報がいかに重要なものであるか。ラジオなど、全然儲からないけれど、好きだから、と地元民が自宅のリビングで放送したりして運営している局もある。また、全米最小のテレビマーケット、グレンダイブのテレビ局は、ガレージのようなところで5人ほどでやっている局だという。
田舎では、ケーブルを導入するのは難しい。衛星テレビはコストが高い。そうした状況で、地上波は非常に重要なのだが、田舎のことを考えずに都会の論理でオークションを実施すれば、中継局がなくなったり、田舎の局はつぶれてしまうかもしれない。カナダ国境近くの小さな孤立した街で、唯一中継局からはいってくるテレビ映像がなくなってしまったら、もしかしたらその地域では、アメリカにもかかわらず、カナダのテレビ放送しか入らなくなるかもしれない…と。
ラジオについて、「モンタナきて、キリスト教系のラジオ局が多いのにびっくりしたんですよね」と私が言ったら、実はキリスト教系ラジオがこれだけ増えたのは比較的最近の、私がモンタナに引っ越してきた7年前の前後以降のことらしい。なぜかと聞いたら、けっこうキリスト教系ラジオは、ほかにくらべてもうかるそうだ。
もう一つブルースさんのお話で興味深かったのは、現在のアメリカでのテレビ視聴の状況だった。「地上波返り」が起きているのだという。ケーブルもサテライトTVも、どんどん月々の利用料金が高騰化してしまった。結果、ケーブルやサテライトの契約をせず、地上波でローカルチャンネルのネットワークのTVをみて、その上にNetflixやApple TVなどと契約し、TVを見るというスタイルのほうが流行ってきているという。とくに若い世代にこの兆候が大きいと。
確かに私の授業で、学生たちに、テレビをどうやって見ているか聞いてみたら、圧涛I多数の学生がNetflixと契約して見ているといっていた。$7.99でストリーミング見放題のプランにはいっている学生が大多数。2つの授業で聞いたが、それぞれはいってない学生は2、3人程度だった。さすがにこの若い世代の間でのNetflix隆盛ぶりには、日本からの研究者の方も驚いたようだった。とはいえ、そのNetflixも値上げをするというので、今後どうなっていくだろう。
地域のテレビ、そしてラジオはとくに、生き残りをかけて、よりローカルのコミュニティにコミットするという流れになっているのだという。これは、新聞について、ボーズマン・デイリー・クロニクルの社長さんが言われていたこととも、またモンタナPBSのミッションとして説明されたこととも重なる。インターネット時代になって、地域により焦点をあてることで生き残りをかける地域のメディア、という状況が顕著なのだというのが、モンタナのいくつかのメディアについて聞く機会を得て、強く感じたことだった。