ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

モンタナのローカルメディア状況 その1

2014-05-06 04:20:00 | メディア、テレビ

またしばらく前のことになるが、3月にはNHK放送文化研究所の方がボーズマンを訪れた。モンタナのテレビをはじめとするローカル・メディア状況を調査するための訪問だった。

 

しかし、なぜモンタナなのか。視聴率調査のニールセンが毎年発表しているテレビ市

場のデータ、DMADesignated Market Area(全米1210位の市場をランク付け)

で、210位がいつもモンタナ州のグレンダイブという街なのだという。そして、ビリングス、ボーズマン、ミズーラなどのほかのモンタナの街も、ランクが低いとのこと。また、モンタナ州というのはPBS局ができた全米で最後の州でもあるとのこと。要するにTVマーケット的にひどく小さいらしく、そういう場所で調査をされたいということだった。

 

本当ならグレンダイブにも行かれたいところだったのではないかと思うが、何せグレンダイブ、ノースダコタとの州境近辺にある人口約5000人の小さな街。街に空港がないわけではないが、商業便にはほとんど使われていないようで、グレンダイブにいくためにいちばん近い空港は通常、ビリングスになるのだという。ビリングスからでも車で3時間。さすがに難しいとのことで、結局ボーズマンに集中して調査されることになった。


どこぞの小屋かみたいに見えるが、これがグレンダイブ空港のターミナル。空港サイトより。

そんなわけで、私は授業があったので全てではなかったものの、いくつかの取材に同行させていただいた。同行させていただいたのは、全然知らなかったが何と私の大学キャンパス内にあった、Montana PBSのpledge drive(視聴者に寄付をよびかける番組)の収録、地元新聞社Bozeman Daily Chronicleの社長ステファニー・プレスリーさんのインタビュ―、そして、モンタナ放送事業者協会 Montana Broadcasters’ AssociationのCEOの、デューイ・ブルースさんのインタビュ―だった。

 

プレッジドライブは、私はパブリックラジオやテレビでやっているのは知っていても、しっかり視聴したことなどなかったし、むしろプレッジをやっていたら「うわー今週はこれか」とがっかりして他の局に変えてしまったりしていた。なので、プレッジの番組を最初から最後までしっかり見たのも初めてだし、その収録の場(生放送)に行くなどというのも初めての経験。

 

この日はたまたま、プレッジドライブの電話受付のボランティアにきていたのが、ボーズマンのPFLAG (Parents, Friends and Family of Lesbians and Gays レズビアンとゲイの親・家族・友人の会)の人たち。こうして、地域で活動するグループが日替わりで電話受付ボランティアをするかわりに、自分たちの団体の活動について知らせる機会となっているらしい。

(PFLAGについては、マサキチトセさんのブログの、「米国LGBT家族・友人団体PFLAGと、「クィア」vs「それ以外」という分け方について」という記事で詳しく紹介されている。)

 

この日のプレッジドライブのゲストは、Montana PBS がつくった、Under the Big Stack: The Great Falls Smelter Rememberedという、グレートフォールズという街の製錬所の歴史に関するドキュメンタリー制作者と、グレートフォールズ歴史博物館の館長さん。その日にこの番組が放送され、プレッジドライブではこの番組の背景などを制作者らが語る合間に、寄付のお願い&受付を挟むというものだった。

 

Montana PBSで働く人たちは皆、モンタナ州立大学に雇用されているという形態らしい。Montana PBSのスタッフのエリック・ヒッパさん(この日のプレッジドライブのショーの司会)によれば、プレッジドライブで視聴者からの電話をうけることで、普段、放送を送る側でなかなか視聴者から直接の反応を得ることができない放送事業者側にとって、この上ない機会となる、とのこと。ネットを通じて、寄付を送る人も多いだろうが、スタジオに設置されていた、昔ながらのプッシュホンには、それなりに電話がかかってきていた。こうして、電話で会話をしながら寄付をする、といういわば昔ながらの形態も、番組を見ている側にとっても反応があることがわかるし、寄付する人にとっても感想など言う機会になるし、いい面もあるのだなと思った。そして、プレッジによって、けっこうな額の寄付が集まるらしい。ネットでも番組を流していることもあり、ボーズマンの場合、観光で訪れたり、あるいは別荘をもっていたり、親類が住んでいるなどの人もいるので、そうした州外の人から寄付がくることもあるという。

 

「日本のNHKは大きいし予算もあるし、プレッジなんてやる必要ないんですよねえ。でも、アメリカでのPBSのプレッジをやるのが嫌だということはなく、むしろこのために、視聴者の生の声を聴くことができて大きなプラスだと考えています」という、ヒッパさんの言葉が印象的だった。

 

この日の番組もそうだが、地方のPBSによる、地域の歴史を発掘し、記録するというドキュメンタリー番組の役割はひじょうに重要だと思った。これがなければ埋もれて、忘れられてしまう歴史も多々あることだろう。

 

長くなってきたので、地元新聞と商業ラジオ、テレビの話しはまた次の回に。