ふぇみにすとの雑感

日々の雑感、テレビ、社会、フェミニズムについてなど。モンタナ発信。

原爆展@坊主マンへの反応もろもろ

2008-09-22 06:03:20 | 原爆・核・原発問題
原爆展も、坊主マン公共図書館から大学図書館にようやく引っ越し、一段落である。しかし映画シリーズ(核問題映画をこれでもか、これでもかと上映すること10月末まで続ける)もあるし、大学内の展示も始まったばかり。今後どういう展開があるかといったところ。

保守的な土地柄もあって、この企画に対して抗議がくることはある程度覚悟はしていた。昨年、この大学で一年間教えた経験からいえば、たとえばジェンダーやセクシュアリティ問題などより、戦争問題のほうがよほど「タブー」なトピックだとひしひしと感じていたからだ。軍隊や戦争問題だと「他人事」ではすまないという状況だからかというように思う。たとえばこれはシカゴ大学とは逆であり、シカゴはジェンダー、セクシュアリティ関連のほうが、戦争問題より話しづらい(といっても、モンタナにくらべればたかがしれてはいるが)環境だったと思う。というのは、シカゴ大学のようなエリート大学の場合、実際に軍にはいっている人たちが自分の身近にいる可能性が、皆無とはいわないが、かなり低いからだ。だからある意味、「戦争反対」「軍隊反対」的なコメントをしても「安全」な環境でもある。(反面、大学スタッフや地元コミュニティの人たちにとっては身近な問題だったのだが、学生や教員には一般的に遠い問題という位置づけだった。)だが、今いる坊主マンの場合は違う。まわりの人たちでも、そして学生たちも軍の奨学金をうけていたり、現役で軍で働いている場合もあるのだ。それに加えて、保守的な土地柄がある。

今のところ、受けた主な抗議は2件。電話でいきなりきた抗議と、被爆者の方と平和記念資料館の館長さんがいらしたときに、トークセッションをひらいた小学校の親からの抗議である。小学校の子どもたちも教員たちも、トークをひじょうに喜んでくれていたのだが、後日親から抗議があったらしかった。とはいえ、私のところにまでは直接その抗議がきたわけではない。(新聞投書などその親がしてくる可能性はまだあるが、、)

そのほかに、『ヒロシマ・ナガサキ』の映画上映の後で「でも原爆を落としたという決定は正しかった。アメリカ人の命を多く救ったからだ」というコメントをしていた、年輩の男性がいた。このコメントには、私の同僚(アメリカ人)が「アメリカ人の命と、日本人の命の区別をする、という考え方がおかしい」とすぐさま批判してくれたのだった。

ほか、授業で学生からきいたコメントの中に興味深いものがあった。ひとりの学生は、「授業関係でこんなイベントがあった」と、被爆者の証言集会や原爆展のことを家に帰って、学生のおばあさんに言ったらしい。そのおばあさんは、学生いわく、編み物やキルトをいつもやっているような、絵にかいたような「非政治的」なおばあさんなのだそうだ。しかしながら、原爆の話がでたとたん、「あれはアメリカが正しかったんだ!」と、突然感情的になって言ってきて、学生は驚いてしまったのだそうだ。「おばあちゃんと喧嘩になるかと思った、、びっくりした」といっていた。学生の祖父母世代的なものなのか何なのか、、と考えてしまったそうだ。もう一人の学生は、「授業で今こんなことをやっていて、、」とまわりのアメリカ人に話すと、やはりたいていの場合「あれはアメリカが正しかった」という反応がくるのだと言っていた。だが、アメリカが被爆者たちに対して(自国民も含め)何の補償も医療補助もしていないのだ、と説明すると「それはおかしい」と言いだす人も多いのだという。また、「いろいろ授業で読んだり、実際に被爆者の方に会ってトークをきいたり、映画をみたりしたけれど、それでもまだなぜか「遠く」感じてしまう面がある」と正直な感想をいってきた学生もいた。そのコメントについて、なぜ自分たちが「遠く」感じてしまうのかと、また考えさせられたほかの学生もいたようだった。

被爆者の笹森さん、平和記念資料館のリーパー理事長ともに、過去よりも現在、そしてとくに「未来」に焦点を当てた話をしていた。そうすることで、ひどく感情的な反応を示しがちなアメリカ人の関心を、歴史解釈のディベートから、「今、核兵器をなくすために、私たちに何ができるか」という点にもっていくことが有効だと経験から学んだのだと言っていた。

証言集会自体は、かなり意味がある刺激を坊主マン市民に与えたようで、「知らないことをたくさん学べた」「すばらしかった」「具体的に何ができるのか、どうしていこうか考えている」といった反応をたくさんもらった。市民から私のオフィスに、ペティションについて問い合わせ電話がかかってきたり、折り鶴が送られてきたりもしている。そして、私が個人的に一番印象に残ったのが、軍にはいっている学生(今週からハリケーンの救援活動にいくらしい)が、いろいろ深く考えさせられたというコメントをしてくれたことだ。「ヒロシマ・ナガサキ」の映画に深く感銘し、「これは高校生など若い人たちに必ず見せるべき映画だ」とまで言っていて、リーパー理事長と個人的に会話をする機会があったことで、すごく深く考えさせられているということだった。もちろん、この学生にとってきつい題材だっただろうし、自分の中でいろいろ混乱している面もあり、クリアなわけではない、、ということだったけれど、だからこそ真摯な「思い」が伝わってきた。それだけで、この企画をやってよかったと思った。