スケッチブック30

生活者の目線で日本の政治社会の有様を綴る

スケッチブック30(中国 本当の危機か?)

2022-07-30 10:12:37 | 日記
7月30日(土)
 かって中国の隆盛も北京オリンピックまでだ、上海万博までだと言われた事があったが、その観測は全くの誤りだった。中国ウオッチャーとはいい加減な存在だと思ったものだ。しかし今回の住宅ローン支払い拒否運動は、昔の黄巾の乱とかの農民運動に似て、中共政権転覆の危機にあるように素人ながら考える。
 法輪功も大きな反中共の動きだが、運動の主体は信者に限られるという限界がある。これに反して住宅ローンの利用者は多くの中国人に及ぼう。既に何年も前から利用している人にも及ぶ可能性がある。住宅ローンの価格が下落してもローンの支払額は代わらないから、下がった価格分に相当するローンの支払いを拒否するとの動きになりかねない。普通ならこれは契約違反として処罰対象となろうが、全人民的支払い拒否運動の中で正当化されてしまう可能性が高い。
 中国の住宅ローンは、どうしてそんな欠陥のある制度にしたのか分からないが、住宅の完成前に実行されるものだそうだ。利用者は住宅が完成する前から、ローンの融資を受けて、購入代金全額を販売会社に支払うというのだ。日本にも青田売りはあるが購入代金全額は支払わない。自己資金だけで購入するケースは別だが、未完成物件に対して銀行は住宅ローンを実行しない。住宅の完成を待って、購入者への所有権移転と銀行の抵当権設定とローンの実行を、同時に行うのだ。だから中国の住宅ローン利用者は住宅の完成前から、例えば一年前から、住んでもいないのに、銀行への返済を始める事になる。
 そこで習近平の不動産業圧迫政策によって、不動産業者の経営が苦しくなってきた。で、工事をストップされた住宅が続出し出したという訳である。工事ストップは単なる一時的中断ではなく、ニュース映像によれば、鉄筋は錆びコンクリートは崩れ落ちる、工事放棄の様相を見せている。それなのに住宅ローン利用者は、完成目途が立たなくなった物件に対して、金銭貸借契約は銀行との間で成立済みなので、ローンだけは払い続けなければならない。経済が好調の時ならまだ耐えられるかも知れないが、今は多くの公務員が給料一律二割カット、教育産業従事者だった人は路頭に迷い、若者は大学は出ても就職先がままならない状況である。今住んでいるアパートの家賃だってぐっと肩に食い込んで来るようになったのだ。とても未完成物件に金を払い続ける余裕はない。
 こんな状況だがこれが純経済的な原因によるものならまだ政権転覆の危機まではならないだろう。そもそも住宅会社は購入費全額の支払いを受けているのだから、原則的に工事の金はある筈だ。その金は何処へ行ったのだ。住宅会社は他の事業に金を回してそこで思わぬ欠損を出したとか言い訳しているが、真相は違うと中国人は考えている。住宅会社と共産党の幹部が全額着服してしまったのだ。彼らはその穴埋めは次の物件を売り出して、その売り上げですればいいと考えて着服したのだ。住宅販売は巨大なねずみ講と化していたのだ。大体こんな制度にすれば中国人の拝金思想から、やがてはこうなる事は必然なのだ。
 だから回転が止まった途端、住宅は手に入らない、しかしローンの支払い義務はあるという人が、突如大量に出現したのである。しかもローンを支払ったら死ぬ人ばかりなのである。ローン支払い拒否は燎原の火のごとく中国全土に広がっている。
 昔の農民は食えない、しかし政権に反抗するには団結する手段が必要だった。団結する手段がないと政権によって単に虐殺されて終わった。今の中国人はローンを払ったら食えない、だがローン利用者という共通項で団結できる。住宅会社と共産党の幹部が自分たちの購入代金を着服した怒りは、立証などしなくても良い。共産党への怒りの情動なら、みんながそう思えばよい事だし、そう思う下地は山ほどある。或いは反習近平の勢力からの使嗾もあろう。文化大革命をやった中国人である。とんでもない大暴動に発展する可能性が高いと、私は思う。
 共産党の側も手を打つだろうが、基本的には住宅ローンを免除するしか、解決策はないと考える。それが出来るか、大いに見ものだ。秋の共産党大会はどうなるのだろうか。