杉田英明 編,『〈華麗島〉台湾からの眺望 前嶋信次著作集3』,平凡社東洋文庫,2000 収録。
著者28歳、台湾時代の研究論文。
1941年満鉄東亜経済調査局にスカウトされる前は、本書に収録されているような、シナ文化、台湾関係の随筆・研究が多い。
満鉄東亜経済調査局時代(38歳から)にはいり、イスラム・アラブ関係が増える。そして、戦後になると(43歳以後)、大部分がイスラム・アラブ・中東それにアラビアン・ナイト関係の著作や研究になる。
本書に杉田英明による著作目録が載っているが、死去する1982年78歳まで、あるゆる媒体にイスラム・アラブ関係の著作を発表している。
『史学雑誌』『史学』『日本オリエント学会月報』などの学術誌の論文。
『世界歴史事典』『新潮世界文学事典』などの事典項目執筆。
世界探検紀行全集(河出書房)、世界ノンフィクション全集、世界文化地理大系その他、あらゆるシリーズの解説執筆。
文部省検定教科書、学習研究社など児童向けのシリーズ監修、こども向けの本の監修などなど。
一般の新聞・雑誌にも随筆を多数寄稿している。
つまり、イスラムとアラブと中東といえば、この人、という存在。
その間、慶応大学教授であり、アラビアンナイト原典完訳をめざしていたわけである。
まとまった一冊の著作は意外と少ないのですね。
『アラビア史』(修道社)、『玄奘三蔵 史実西遊記』(岩波新書)、『アラビアの医術』(中公新書)、『イスラム世界』(河出書房「世界の歴史8」)、『アラビアンナイトの世界』(講談社現代新書)、『東西文化交流の諸相』(4分冊で誠文堂新光社)、『イスラムの蔭に』(河出、「生活の世界歴史7」)、『イスラムの時代』(講談社「世界の歴史10)、『アラビア学への途 わが人生のシルクロード』(NHKブックス)ぐらい。
見たことないが『シルクロードの秘密国 ブハラ』(芙蓉書房)、『草原に輝く星』(NHKブックス・ジュニア)。
シリーズ物の一冊が多い。
それでこの「雲南の塩井と西南夷」であるが、完全に学術論文、漢文史料とヨーロッパの学者の研究からの文献研究。
雲南の塩田地帯をめぐる中国と吐蕃・南紹等の諸勢力の政治外交関係を辿り、塩井を担っていた〈モソ族〉に関する民族学的成果を紹介したもの。
といっても難しすぎる。通典(つてん)や唐書南蛮伝などが原文で(訓点付きだが)引用されていて読めない。
ようするに、吐蕃と唐の二大勢力の間にあり、塩田という資源があったことにより、双方に敵対したり服属したり、独立したり両属していたようだ。
と、ながながと書いてきたが、何をいいたいかというと、たぶんこんな論文は日本軍の参謀たちは知らなかっただろうな、ということ。
これを書いた前嶋信次本人もまさかこの地が日本軍対国民党軍の戦場になるとは予想しなかっただろう。
こういう一見浮世離れした研究も戦略や戦闘の際に参考になる場合もあるのだ。
だからこそ満鉄東亜経済調査局も彼をスカウトしたわけだろうが、ほとんど軍部には利用されなかっただろう。
本書には戦後に書かれたサツマイモの伝播に関する随筆、媽祖祭の思い出など軽い作品も収録。
あと、ちょっと前にこのブログで、wikipediaに鄭芝龍がクリスチャンだという記載があるが、根拠が不明だと書いた。本書収録の「鄭芝龍招安の事情について」(1964年発表の論文)によれば、10個の文献を挙げて疑う根拠のないものだ、としているので疑いのないものだろう。
この鄭芝龍に関することがらにしても、この論文は戦後の著作であるが、1940年代の戦場を知るのに有益な情報だったはず。
著者28歳、台湾時代の研究論文。
1941年満鉄東亜経済調査局にスカウトされる前は、本書に収録されているような、シナ文化、台湾関係の随筆・研究が多い。
満鉄東亜経済調査局時代(38歳から)にはいり、イスラム・アラブ関係が増える。そして、戦後になると(43歳以後)、大部分がイスラム・アラブ・中東それにアラビアン・ナイト関係の著作や研究になる。
本書に杉田英明による著作目録が載っているが、死去する1982年78歳まで、あるゆる媒体にイスラム・アラブ関係の著作を発表している。
『史学雑誌』『史学』『日本オリエント学会月報』などの学術誌の論文。
『世界歴史事典』『新潮世界文学事典』などの事典項目執筆。
世界探検紀行全集(河出書房)、世界ノンフィクション全集、世界文化地理大系その他、あらゆるシリーズの解説執筆。
文部省検定教科書、学習研究社など児童向けのシリーズ監修、こども向けの本の監修などなど。
一般の新聞・雑誌にも随筆を多数寄稿している。
つまり、イスラムとアラブと中東といえば、この人、という存在。
その間、慶応大学教授であり、アラビアンナイト原典完訳をめざしていたわけである。
まとまった一冊の著作は意外と少ないのですね。
『アラビア史』(修道社)、『玄奘三蔵 史実西遊記』(岩波新書)、『アラビアの医術』(中公新書)、『イスラム世界』(河出書房「世界の歴史8」)、『アラビアンナイトの世界』(講談社現代新書)、『東西文化交流の諸相』(4分冊で誠文堂新光社)、『イスラムの蔭に』(河出、「生活の世界歴史7」)、『イスラムの時代』(講談社「世界の歴史10)、『アラビア学への途 わが人生のシルクロード』(NHKブックス)ぐらい。
見たことないが『シルクロードの秘密国 ブハラ』(芙蓉書房)、『草原に輝く星』(NHKブックス・ジュニア)。
シリーズ物の一冊が多い。
それでこの「雲南の塩井と西南夷」であるが、完全に学術論文、漢文史料とヨーロッパの学者の研究からの文献研究。
雲南の塩田地帯をめぐる中国と吐蕃・南紹等の諸勢力の政治外交関係を辿り、塩井を担っていた〈モソ族〉に関する民族学的成果を紹介したもの。
といっても難しすぎる。通典(つてん)や唐書南蛮伝などが原文で(訓点付きだが)引用されていて読めない。
ようするに、吐蕃と唐の二大勢力の間にあり、塩田という資源があったことにより、双方に敵対したり服属したり、独立したり両属していたようだ。
と、ながながと書いてきたが、何をいいたいかというと、たぶんこんな論文は日本軍の参謀たちは知らなかっただろうな、ということ。
これを書いた前嶋信次本人もまさかこの地が日本軍対国民党軍の戦場になるとは予想しなかっただろう。
こういう一見浮世離れした研究も戦略や戦闘の際に参考になる場合もあるのだ。
だからこそ満鉄東亜経済調査局も彼をスカウトしたわけだろうが、ほとんど軍部には利用されなかっただろう。
本書には戦後に書かれたサツマイモの伝播に関する随筆、媽祖祭の思い出など軽い作品も収録。
あと、ちょっと前にこのブログで、wikipediaに鄭芝龍がクリスチャンだという記載があるが、根拠が不明だと書いた。本書収録の「鄭芝龍招安の事情について」(1964年発表の論文)によれば、10個の文献を挙げて疑う根拠のないものだ、としているので疑いのないものだろう。
この鄭芝龍に関することがらにしても、この論文は戦後の著作であるが、1940年代の戦場を知るのに有益な情報だったはず。