東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

杉原たく哉,『しあわせ絵あわせ音あわせ』,日本放送出版協会,2006

2007-12-24 23:00:43 | 基礎知識とバックグラウンド

NHKラジオ中国語講座テキストに2003年4月から連載。

わたしのブログで東南アジアを中心に書こうと思ったのは、中国関係があまりに膨大で、ある種うっとうしさを感じるからである。
歴史関係は史料も研究者も格段に多いし、外交問題・経済問題も玉石混交の本があふれている。書画から料理まで文化の中心。
すごいと思う反面、風とおしが悪くて、息がつまってしまう。

それでも、本書のような本を手にとると、やはり中国関係は、研究者やライターの層が厚くて、文化は底知れないなあ、と思い知らされる。

副題「中国ハッピー図像入門」。
図像学(ずぞうがく)の基礎も解説されていて初心者にとってありがたいが、それよりなにより、あふれるような(うっとうしい)パワーに圧倒される。
著者の軽い文体(しかし、しっかりした知識にささえられたものだ)の案内で、読者は目をたのしませ、奇っ怪なイメージに驚き、笑ってしまう。
たとえば、こんな調子。

〈〔江戸城の〕松の廊下には浜松図によって「夢のパラダイス」の意味付けがなされていました。私たちが、部屋の壁にハワイやタヒチの美しい砂浜のポスターを貼るのと似ています。パラダイスで刀を振り回した浅野内匠頭も問題ですが、楽園のビーチに来てまでネチネチとイジメを繰り返していた吉良上野介は、もっといけません。「御両人がハッピー図像のお勉強をしていれば」と悔やまれるところです。〉

うーむ。奥が深い。アホらしさやマヌケさを楽しむという姿勢を含め、中国関係は深い。
しっかり文献(中文)がよめる著者は、初心者のために、日本の文物や人名を含めて、ちゃんとふりがなをふってくれる。ときどきピンインもついている。ありがたい。
ただ、画竜点睛を欠くのは、書名のよみかたが奥付にない!
NDL-OPAC によれば〈シアワセ エアワセ オトアワセ〉なのだが……、これでいいの?