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伝統組踊×現代版組踊、その②

2016年10月30日 | ・肝高の阿麻和利レポ

 

前記事の続き 本日二投目)


第6回世界のウチナーンチュ大会連携行事

「伝統組踊×現代版組踊」
伝統と未来

2016年10月29日(土)

沖縄コンベンションセンター

≪夜公演≫



二幕 『肝高の阿麻和利』

 

まず、肝高の阿麻和利は
去年の11月公演以来、
つまり約1年ぶりの観劇でした。

50回以上は見ている
阿麻和利の舞台。
ある時期から観劇期間を空けて
敢えてその間の変化の大きさを楽しむ

というのを狙っていましたが
今回これが功を奏したなと思いました!

ある種の新鮮さをもって
観劇することができました!

 

 

 

*生命力あふれる阿麻和利*

 

まず、今回特筆すべきは阿麻和利君。


ほほうっ?!(゚Д゚)

 

キャラクター変わった!

という印象。

これまで見てきた阿麻和利よりも
なんというか
もっとワイルドで力強くて
活発で豪快で、
とにかくエネルギッシュ!!
そんな感じでした。

 

体格も変わった!?
大きくなった!?
って思ったけど、
背が伸びたというより
肉付きなのかな、
それとも大きく見せる演技
に磨きがかかったのかな。

 

発声だったり口調のスピードだったり
(シーンによっては畳みかけるように早かった(*_*))
跳んだり跳ねたり、パンッと手を打ったり、
勝利の舞で槍を受け取った時に一回はじいたり、
とにかく一挙一動、
生命力がほとばしってる感じ。

半面、頑固なジラーに
「ったく、こいつはよ~(舌打ち)」ってなったり
ちょっと好戦的な表情だったり、
望月追放ではぬかりない策士面だったり、
決してクールでもないし優等生でもないんだけど
でも明るくさっぱりしてる。


俺についてこい的な。
一瞬ヤンキーっぽい(笑)って思ったけど
大人のガキ大将って感じかな。

前までは刺された後の
「やはり 首里の 筋書か」の所も
悲しみやどこか悟っていた感があったのだけど
今回はもう悔しさ全開。

もっと生きたかった
もっと色々やりたかった
という
生への執着が感じられました。
全力でエネルギッシュに生きてきたからこそ、かな。

 

そして毎回毎回書いてるけど、
護佐丸討伐を決意するシーン
そして今回は正義党への苦悩に理解を示すシーンでも
「間」の演技が最高でした。

言葉に頼らず、心情の変化を表現する。

やっぱり素晴らしいから毎回でも書く(笑)

(同じように肝高神のシーンもでした!
以前のように向立ても隠したビジュアルで
よりミステリアスで畏怖の存在に!)

 

あと今回割と前の席だったからか
息づかいが感じられたのが良かったな。

一幕の「護佐丸敵討」でも
見事なまでのシンクロに
「息を合わせる」息づかいを感じましたが、


望月追放の作戦を遂行したあと、
息を切らしながらのさわやか笑顔に
阿麻和利の全力の一生懸命さを感じたり
死ぬ時の絶え絶えな息づかいに
悔しさと苦しさを感じたり。

 

レビューで阿麻和利君について書くこと
実は少ないんだけど、
今回は同じ演者さんながら
変化がみられてすごく新鮮でした!

 

 

*クール一徹の賢雄*

 

演者さんつながらりもう一人。

賢雄ウォッチャーの和々です。

賢雄ね。

彼も今回面白かった。

スパイとして阿麻和利を陥れる悪役ですが、
阿麻和利最期の姿に改心し
己の行いを後悔する…

これが従来の賢雄でしたが、

 

今回、改心せず。

 

最後の最後まで
密命を遂行したスパイそのものでした。

死にゆく阿麻和利に
敬意は表していたけど、
己のやったことに後悔はしていない。

「これも琉球のお国のため」という
自分の正義を遂行しただけだ
というクール一徹!

(ああ、でも百十踏揚に戦の報告するところは感情だしてたな)

 

うむ。

それでこそ武士、
それでこそ賢雄だ。

 

…と、ワタシは思う。

でも、改心したほうが
キャラクターとしては魅力的だけどね(^^;)

それまで悪役一辺倒だった彼が
そうではない姿をみせる、という意味で。

 新たな賢雄を見た気がしました。

 

 

*アンサンブルさん*

 

いつぞやの演出でも見た
阿麻和利誕生シーンでの
連続演舞はやっぱり見てて楽しくなるな!♪

花踊→櫂の踊り→男サン→総踊り
と畳みかけるように次々と繰り広げられて
すごくにぎやかで華やか。
(演舞の名前わかんないけど…)

櫂の踊りはまた見たかったから嬉しい!

でもこれまでのゆんぐとぅは
もうなくなったのかな…?

 

そして相変わらず三つ巴の演舞には
ぞくぞくします(笑)

大好き。
もっと見たい。

 

今回印象的だったのは
平敷屋エイサーのシーン。

いつもならハケる踊り手たちが
舞台に残ったまま、
首里から急ぎの知らせが来る。

さっきまで楽し気に踊っていた民たちが
阿麻和利の一言で兵士になる。

女たちは女たちで
それを受け入れる。

そうなんだよな。

兵士という人間が元々いるわけじゃなくて、
普段漁をしたり作物を作ったり
モノづくりをしたり
歌ったり踊ったり、
そんな普通の生活をしている人が
戦に駆り出されるんだよな。

 

同じように望月按司追放でも
作戦が成功したか
民たちが様子を窺うように
舞台から顔を出す。

望月を追放をしたのは
阿麻和利だけでなく
民たちが一緒に行ったもの。

民がいて初めて
勝連按司・阿麻和利が存在した。

今回はこんな「勝連の民の姿」が
アンサンブルさんたちで
とても効果的に表現されてたように感じました!

 

 

*きむたかバンド*

 

ボーカルさん、安定の歌声ですね~~~

お見事でした。

すごく伸びやかで
耳にキンキン響くこともない。

幕開け・冒頭シーンの
オリジナルのワンコーラス
もステキでした。

 そろそろ今のアレンジバージョンの
CD出してもいいんじゃないかな??
(要望)

 

コーラスと言えば、バンドじゃないけど
百十踏揚の琉歌のシーンも綺麗だったな。

ああゆう独特な声色って
スゴイ不安定で難しいと思うんだけど
高音もぶれることなく
安定していました!

 

 

*解説チラシ*

 

方言セリフ、専門用語、相関図、
そして各章ごとのあらすじ紹介。

完璧です。

観劇する人が予習できるように
公式サイトにも載せてもいいかも!

 これがあるなら
もうこれいらないな。

 

 

あの…でも…
イラスト採用してくれたのは嬉しいんですが…

画像の縦横比率は…いじらないでほしかった…
(オリジナルよりも横長になってます…)

もし引き続きこのチラシを使うなら
オリジナルの比率に直してほしいデス…

 

+

 

 *スペシャル演出*

 

今回ならではのスペシャル演出について備忘録。

伝統組踊のエッセンスやつながりを
よりわかりやすく、全面に。

 

冒頭はまさに阿麻和利が鶴松・亀千代に
襲われるシーンから。

「逆賊・阿麻和利」というキーワードも
敢えてセリフに入れて。

ここでは実際には刺されず
舞台からハケるという演出も同じくして
護佐丸敵討とのリンクを強調。

 

それから鶴松・亀千代に
刀を直接渡すシーンも追加。

護佐丸敵討では母から、
肝高の阿麻和利では賢雄から。

 

屋慶名・平安名・南風原の正義党も
クライマックスはいつもあの黒の衣装だけど
今回は護佐丸敵討の「供1~3」と同じ
というのも気づきやすかったのでは。

 

ワタシは琉球史の世界は
肝高の阿麻和利から入ったので、
後から伝統組踊を見るようになりました。

肝高の阿麻和利の物語が
単なる正史のものではなく
(正史では阿麻和利は賢雄に直接討たれます)
「護佐丸敵討」からのエッセンスも
積極的に入れようとしていることに
後から気付いていきましたが、

今回は立て続けに2つの舞台を見ることができて
それがより比較しやすかったんじゃないかな!

 

また、今回は電光掲示板もあったので
各章ごとにタイトルが提示されて
とても映画的でかっこよかったデス!

セリフの英訳は全部ではなく
ポイントポイントで出てきてましたが
肝高神のシーンでは
日本語・英語ともに表示できたら
よかったんじゃないかな?

日本人でも、沖縄人でもつまづくシーンだからネ…。

 

90分の短縮バージョンということで
どう縮小されるかなと思ってましたが、
実際には2時間弱、
ほぼそのままという印象でした。

正義党との出会いも
首里のシーンも金丸宅も
愛の劇場もあったし。

主に最初と最後のきむ子のシーンのカットでしたね。
演舞はかぎやで風とエイサーの2曲目がカット。

 

+

 

個人的に望んでいた
あまをへと阿麻和利の
直接コラボはありませんでした(´;ω;`)

 もちろん劇中ではできないにしても
カーテンコールとか
そんな時に何か一緒にやってくれないかな
と思ってたけど…。


やっぱり立場上できないかな…
なんても思ったり。

 

でも最後に紹介という形で
同じステージに立つことはありました。

それが見られただけでも
感慨深かった!感動した

二人の阿麻和利
二つの阿麻和利像。

代表の方がおっしゃってたけど、
逆賊と英雄、
どちらがどう、というわけではなく
阿麻和利という人間を描くことを
大切にしてきた…

うんうん、ホントそうだよね!

どっちが正しいとかじゃない。

どっちも阿麻和利。

それをどうとらえるかは
受け取り手次第。

それも歴史を楽しむ醍醐味。

これからもそれぞれの場所で
それぞれも阿麻和利像を
守り、築いて行ってほしいです

 

 

今回は本当に貴重な機会に
立ち会うことができ光栄でした。

出演者の皆さん
スタッフの皆さん
本当にありがとうございました!

そしてお疲れ様でした!!

 

 

阿麻和利、大好きです!

 

写真は最後のご挨拶。
取り巻く観客たちもすごかったの図(笑)
現代版組踊チームたくさんいましたね♪
北海道から八重山まで!
今日の合同合宿は楽しめたかな?

 

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レビュー、あとで思い出したり細かなトコは
ツイッターの方で追記していくこともあるかも?


伝統組踊×現代版組踊、その①

2016年10月30日 | ・肝高の阿麻和利レポ

 

第6回世界のウチナーンチュ大会連携行事

「伝統組踊×現代版組踊」
伝統と未来

2016年10月29日(土)

沖縄コンベンションセンター

≪夜公演≫

 

 *

 

ユネスコ無形文化遺産の組踊と、
ユネスコ未来遺産の現代版組踊の
二本立て公演!

同じ出来事、
同じ人物を扱った舞台でありながら
かたや逆臣、
かたや英雄。

歴史の二面性を存分に味わえる
公演だったのではないかと思います。

他にも
伝統と未来
古典と現代
小人数と大人数
大人と子供
という対比もありました。

阿麻和利について
これほど味わえる公演は
ないでしょう。

まさに
‟歴史を楽しむ”
醍醐味でした。

ウチナーンチュ大会ということで
パンフレットは英文も掲載
舞台には日本語、英語の両方の
電光掲示板が設置され
アナウンスも二か国語で。

いつもとは違った雰囲気に
期待も高まります

 

公演は二幕構成。

 

一幕は伝統組踊「護佐丸敵討」
(二童敵討から護佐丸敵討という呼称に統一するようです)

二幕は現代版組踊「肝高の阿麻和利」

 

その①とその②に分けて
レビューを書くことにします。

 

 

 

一幕 『護佐丸敵討』

(阿麻和利=あまをへ)

 

護佐丸敵討を生で見るのは
首里城中秋の宴の時以来。

あらすじは知っていたし、
映像なんかではちょこちょこ見てはいましたが
今回は全セリフ、全音楽の歌詞が
同時進行で電光掲示板に提示されたので
前回よりも細かい所まで理解することができました。

前回はリスニングとしては
ほぼ全滅だったからね…

 

 

さて、組踊のセリフは
基本8・8・8・6の琉歌形式になっており
抑揚をつけて歌うように発するのも特徴。

 

あまをへが供の者たちを呼んだ時の

「うー」(はい)

鶴松が弟の亀千代に話しかけるときの

「やー、かみじゅ」(ねえ、亀千代)

の言い回しが
すごく気に入りました。

「うー」なんか
「うー♪」だもん。

絶対音感だったら音程言い当てられたのに。「ラ」か?

 

なんかほっこりした(笑)

 


それから組踊の特徴は
極力、表情や動作をそぎ落とし
最小限の要素で表現すること。

大きな身振り手振りや
表情の喜怒哀楽はなく
ちょっとした視線の向き、
顔の傾き、
指先の表情で
その人物の心情を表します。

だからもんのすごく繊細な表現。

そしてきっと
もんのすごく難しい。
体力もスゴイ使うはず。

(動けって言われるより動くなって言われるほうがしんどいしね)

 

鶴松・亀千代が仇討ちを覚悟して
母に別れを告げるシーンは
びっくりするくらい
両者とも動かない。

 

ただ音楽だけが朗々と流れる。

ピンと張り詰めた指先の緊張、
握ったこぶしに込めた決意、
伏せた顔に漂う悲しみ、

長すぎるくらいの
ストップモーションだったこのシーンに
母子のいろんな感情が渦巻いていたんだろうなと
それを観客に想像させるシーンだったんだなと。

初めて見た冊封使は
もしかしたらここで涙したのかな
なんて想像したり。

この「静」のシーンがあったからこそ、
続く野遊び→仇討ちの「動」のシーンに
メリハリがつくんだな、と感じました。

仇討ちを決意した母子の別れのシーンと言えば
『北山の風』ですね。

それを思い出したりもしちゃいました。

 

 

さて、主人公のあまおへ(阿麻和利)、
やっぱりかっこいいですね!

…ですが、

今回感じたのは

あれ、意外とかわいいかも…

でした(笑)

 

思い出したのは
『夏姓太宗由来記』
に出てくる阿麻和利像。

悪いヤツなんだけど、
黒いこと考えてるやつなんだけど、
単純というか
憎めないというか
なんかそんな感じ。

今回セリフを全部理解できたのが
大きかったな。

 

春の陽気を喜んでいるなぁ

とか

あれ、普段はあんまりお酒飲まないんだ

とか

鶴松・亀千代の舞に純粋に喜んでいるな

とか

楽しくなってきたから一緒に踊ってる様子

とか

 

なんか人間味あふれる感じで
親近感湧きました(*'ω'*)

 

ここにもまた一つの「阿麻和利像」があるなぁ
と感じましたよ。

 

音楽も、古典のゆったりとした調べを基調としつつ
時折強く打たれる太鼓や効果音にハッとさせられたり
(特に鶴松が一人早って討とうとしたシーンとか)
一斉にやんだり一斉に再開したり、
単に劇の合間に音楽や踊りがあるだけでなく
演出として音楽が組み込まれている
立派な歌舞劇なんだなぁ、と改めて思いました。

さぞ革新的だったことでしょう。

 

やがて300年になる伝統と
300年語り継がれている阿麻和利像、
生で体感することができて光栄でした

 

 

 

*おまけ*

 

あまをへがお酒を飲むシーン、

盃が「耳盃」でしたね!
(両方に耳のような取っ手のついたコップ)


 

お供の者は普通のだったのに。

身分の高さを盃でも表現。

あー、新春の宴とかで見たあれだ!
こんなところにも琉球の文化が!
って思って
ちょっと嬉しくなった和々なのでした。

 


写真は2010年1月1日の新春の宴より

 

では、
その②に続く!

 

 

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