淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「眠れる夜のためのパヴァーヌ」

2009年06月13日 | Weblog
 結局、ほとんど一睡も出来ないまま夜明けを迎えた。
 土曜日の夜明け前、3時30分過ぎだった。
 それにしても4時前なのに、薄っすらと空が白みを帯びること、初めて知った。

 様々な想いが心の中で交錯する。
 まるで、渋谷のスクランブル交差点のようだ。こんがらかって、ぶつかって、そして何も無かったみたいに信号が赤へと変わり、今度は猛スピードで車がその上を疾走する。

 何故、こんなにも考えるのだろう?
 すべては自分の心が判断していることなのに・・・。
 仮に仕事の悩みなら、ここまで深く思い煩うこともない。

 深海の底で優雅に泳いでいる、奇怪な躯体をした水圧に耐え切った魚みたいだ。
 水面に浮かぶすべもなく、真っ暗な海底を戸惑い、彷徨っている。

 ミルク色の空が広がった。
 ただ、ぼんやりと休日の明けゆく空を見上げた。眠いような、そうでもないような。

 6時になった。
 コンビニエンスストアに出掛け、朝刊を3紙買い求め、ねぐらへと戻り、熱いシャワーを浴びてお風呂に入る。

 生きる事は苦痛に耐える事だ。
 何かを遣り過ごし、何かを失ってしまう事だ。
 心が晴れやかになる事もあれば、どっぷり悲しさに浸かる事もある。もう5年間。もう5年間じゃないか。あれから俺は何も変わらない。
 時間だけがゆっくりと過ぎてゆく。感傷も矜持も戸惑いもなく、しらんぷりして去ってゆく。
 何処にも行かず、ベッドに横たわり本を読んだ。ひたすら本を読んだ。

 昨日の金曜日は海に行った。
 風が強く、人影も無い。遠く、巨大な海の化身のような黒い巨船が水平線を横切って行った。

 携帯に何件もの電話が入った。
 やがて日が暮れた。
 独り、夜の繁華街に出た。
 金曜日の街は、飲み会に急ぐサラリーマンたちで溢れていた。

 もう飲まないと決めていたのに、えいっとバーの扉を開けた。上空1,000メートルから地上に一直線で落ちてゆく人間のように。

 また飲んでしまった。
 どうしようもなく、意志が弱い。いつも決まりごとを守らない。いい加減なんだ、いつもいつでも。
 厭になる。

 生ビールを一杯頼み、それからジントニックを2杯注文した。
 勘定を済ませ、また元来た道を引き返した。
 心は揺れる。
 秋の終わり掛けの日曜日の天気のように。
 晴れると思うと、突然雲が広がり、今度はいきなり冷たい通り雨が降り出して来る。

 悪人こそが救われるのだと、親鸞は言った。
 俺は悪人である。
 善人の仮面を被った極悪非道の悪人である。




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