淳一の「キース・リチャーズになりたいっ!!」

俺好き、映画好き、音楽好き、ゲーム好き。止まったら死ぬ回遊魚・淳一が、酸欠の日々を語りつくす。

「6月はアスパラガス・グリーン色の街」

2009年06月23日 | Weblog
 テレビでは、川島なお美の豪華な披露宴が映し出されている。
 だんな様は、有名なパティシエなのだとか。
 その彼がこの日のために、毎晩夜中まで丹念に作ったという豪華なウエディング・ケーキが披露宴会場に運ばれ、吃驚した川島なお美が感激で涙している。

 そんな場面が、夕闇迫る部屋の中に流れている。
 セレスト色をした空が、ゆっくりと暮れてゆく。もうすぐ街は夜になる。

 3階の西の窓から、朽ち葉色に染まる街並みを眺めた。
 勝った人間と、負けた人間。
 多くのお金を得た人間と、貧乏を強いられている人間。
 地位と名誉を勝ち取った人間と、地位と名誉を失ってしまった人間・・・。

 何億円も湯水の如く放蕩する人間もいれば、年収わずか数百万円で暮らしている人間もいる。
 今この場で食べるものに事欠く人間もいれば、数万円のディナーを食べ、数十万円のワインを飲みながら、退屈と倦怠の中で生きている人間もいる。

 人間は原罪を負っている。
 知らず知らずのうちに、誰もが何某かの苦行を課し、誰もが無垢のままで誰かを傷つけている。

 テレビの中の川島なお美は、お色直しを繰り返し、今度は新郎と2人、紫陽花の美しい花をあしらったドレスを着て入場した。
 幸せの絶頂なのだろう。
 絶えず微笑を浮かべ、愛する新郎に寄り添っている。

 この絢爛豪華な披露宴生中継を、6月23日火曜日の夜、どんな人たちが観ているのだろう?
 独り寂しく冷えた缶ビールをちびちび飲みながら、仕事で疲れた体をベッドに横たえ、頬杖をついて眺めているアラサーの女性がいるかもしれない。
 また例えば、大好きだった最愛の彼女にふられ、電気も点けずにただぼんやりと彼女との幸せだった日々を想い出し、テレビに映し出される幸福な光景を観ている男性もいるかもしれない。

 それでも人生は続いてゆく。
 煩わしいことは次々と起こり、怒りや苦痛は消えることがない。
 それでも人生はこれからもずっと続いてゆく。

 大金持ちも貧乏な人も、病気の人も健康な人も、やがてこの世界から消えてゆく。人生はそれ以上でもそれ以下でもない。

 今日はとても暑かった。
 明日からも30度まで上昇する日が続くらしい。
 6月はあっという間に終り、今度は7月がこの街にやって来る。
 夏が来るのだ。大好きな夏が・・・。

 些細なことである。
 あらゆることは些細なことでしかない。


 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする