12月の積雪としては、結局、20数年振りの大雪となったのに、今はもうほとんど溶けてしまった。
いきなり50センチもの雪が積もってびっくりしたけれど、その後、少しずつ天気は持ち直し、雪そのものも現在は小康状態が続いている。
本格的な冬将軍はこれからだ。
僕たちは、あと3ヶ月間もこの寒さを伴った、閉ざされた世界の中で耐えなければならない。
街は、もうすっかりクリスマスのイルミネーション一色に染まっていて、聳え立つ三角形の県観光物産館「アスパム」の壁面をも、美しいツタのように包んでいる。
僕は、仕事を終え、夜の雪道を歩く。
オフィスを出て、広い国道を横切り、官庁街の公園の中を抜ける。冷たいけれど、どこか心地よい北風が頬を打つ。コートに手首を突っ込み、肩を窄め、獣道のような狭い雪道を出ると、国の出先機関や関係団体が入居しているビルの煌々とした明かりが目の前に飛び込んでくる。オフィスの群れは、まだ何処も彼処も活き活きと輝いていて、真っ暗な闇を照らしている。
中心市街地は、駅までの道を急ぐ人、手を繋いで街中をぶらつく若いカップル、デパートでの買い物を終えた主婦たち、飲み会へと向かうサラリーマンたちの群れ、そんな人々で賑わっている。
珈琲ショップで熱いコーヒーでも飲んでのんびり寛ごうか、それとも本屋に飛び込み本でもピックアップしてみようか。独り、飲み屋に入って美味しいお酒を飲むには、まだちょっと早過ぎる。
こうして一日は過ぎてゆく。
こうして人生は進んでゆく。
可もなく、不可もなく。
答えなど見つからないし、悟れるわけもない。
ただ、何かが、静かに、そしてゆっくりと湧き上がってくるような兆しはある。
ほんの少し、心の筋肉が強くなった気がする。それを言葉で表すことは不可能だ。
でもすぐにまた、その力はどこか遠くに消えてしまうけれど・・・。
心は揺れている。一瞬、突風が吹く事もある。晴れ晴れとした爽快な気分はない。大きな穴がぽっかりと開いたまま、それは塞がる事がない。
これからも、その襞(ひだ)のようなもの、その不確かなもの、その暗く疼いているもの、そういうものを自分の心の中に飼いながら生きてゆくのだろう。たぶん、これからも・・・。
本屋で本を買い、美味しい珈琲を飲み、店を出る。
激しい北風が街中を抜ける。雨が暗闇に落ち始めた。街に極彩色の光が輝いている。
さあ。独りで近くの飲み屋にでも行こうかな。お腹も減ってきたことだし。
髭を生やした昔からの友達が経営している店で、冷えた生ビールを飲み、エリック・クラプトンでも聴きながら美味しいツマミを頬張ろうか。それとも、これも古くからの友人が経営している行きつけのBARで、マイルス・デイビィスを聴きながら、独りでゆっくり飲もうか・・・。
・・・なんて考えながら、人気の途絶えた商店街を独り寒さに震えながら歩いてゆく。
そうかあ。こうやって俺、生きてくんだ。重い荷物を背負ったまま。
今日も明日も、そして明後日も。ずっと。
でも俺は、絶対、絶対、復活してやる。
俺はこんなじゃなかったはずだ。
俺は、必ず元気になる。
それまで、ちょっとさよならだ。
いきなり50センチもの雪が積もってびっくりしたけれど、その後、少しずつ天気は持ち直し、雪そのものも現在は小康状態が続いている。
本格的な冬将軍はこれからだ。
僕たちは、あと3ヶ月間もこの寒さを伴った、閉ざされた世界の中で耐えなければならない。
街は、もうすっかりクリスマスのイルミネーション一色に染まっていて、聳え立つ三角形の県観光物産館「アスパム」の壁面をも、美しいツタのように包んでいる。
僕は、仕事を終え、夜の雪道を歩く。
オフィスを出て、広い国道を横切り、官庁街の公園の中を抜ける。冷たいけれど、どこか心地よい北風が頬を打つ。コートに手首を突っ込み、肩を窄め、獣道のような狭い雪道を出ると、国の出先機関や関係団体が入居しているビルの煌々とした明かりが目の前に飛び込んでくる。オフィスの群れは、まだ何処も彼処も活き活きと輝いていて、真っ暗な闇を照らしている。
中心市街地は、駅までの道を急ぐ人、手を繋いで街中をぶらつく若いカップル、デパートでの買い物を終えた主婦たち、飲み会へと向かうサラリーマンたちの群れ、そんな人々で賑わっている。
珈琲ショップで熱いコーヒーでも飲んでのんびり寛ごうか、それとも本屋に飛び込み本でもピックアップしてみようか。独り、飲み屋に入って美味しいお酒を飲むには、まだちょっと早過ぎる。
こうして一日は過ぎてゆく。
こうして人生は進んでゆく。
可もなく、不可もなく。
答えなど見つからないし、悟れるわけもない。
ただ、何かが、静かに、そしてゆっくりと湧き上がってくるような兆しはある。
ほんの少し、心の筋肉が強くなった気がする。それを言葉で表すことは不可能だ。
でもすぐにまた、その力はどこか遠くに消えてしまうけれど・・・。
心は揺れている。一瞬、突風が吹く事もある。晴れ晴れとした爽快な気分はない。大きな穴がぽっかりと開いたまま、それは塞がる事がない。
これからも、その襞(ひだ)のようなもの、その不確かなもの、その暗く疼いているもの、そういうものを自分の心の中に飼いながら生きてゆくのだろう。たぶん、これからも・・・。
本屋で本を買い、美味しい珈琲を飲み、店を出る。
激しい北風が街中を抜ける。雨が暗闇に落ち始めた。街に極彩色の光が輝いている。
さあ。独りで近くの飲み屋にでも行こうかな。お腹も減ってきたことだし。
髭を生やした昔からの友達が経営している店で、冷えた生ビールを飲み、エリック・クラプトンでも聴きながら美味しいツマミを頬張ろうか。それとも、これも古くからの友人が経営している行きつけのBARで、マイルス・デイビィスを聴きながら、独りでゆっくり飲もうか・・・。
・・・なんて考えながら、人気の途絶えた商店街を独り寒さに震えながら歩いてゆく。
そうかあ。こうやって俺、生きてくんだ。重い荷物を背負ったまま。
今日も明日も、そして明後日も。ずっと。
でも俺は、絶対、絶対、復活してやる。
俺はこんなじゃなかったはずだ。
俺は、必ず元気になる。
それまで、ちょっとさよならだ。