日経流通の記事からだけの情報なので、その最終的な効果を判断するには、さらに多くの情報が必要だが、JCBの試みは、いまできるCRMのもっとも納得性の高い完成形といえるかもしれない。
好みや生活観など会員の属性を凝縮した(固有の)12ケタのコードを使って、内容や配色に至るまでダイレクトメール(DM)を作りわける。……
「時代に敏感なマイホーム主義者」「トレンド偏重型OL」--。JCBはカード会員をまず、九パターンの消費者モデルに分類している。会員はさらに、カード利用履歴はもちろん消費性向や信頼する情報ソースなどによって細かく分析・診断され、十二ケタのコードで管理されている。(日経流通新聞 12/22)
消費心理をベースにしたアンケートによりクラスター化された属性は(※1)、以下のような12ケタを組み合わせたバーコードとして生成されDM情報誌「JCB NEWS」の作りわけコードとして使われる。
●生活価値観
a1:上昇志向型プロ集団
a2:家庭趣味両立型ビジネスマン
a3:こだわりヤングビジネスマン
a4:健康老後不安世代
a5:時代に敏感マイホーム主義者
a6:トレンド偏重型OL
●情報態度
b1,b2,b3:情報収集に関する積極性、信用する情報源…
●消費性向
c1,c2:衝動買いの有無
●カード性向
d1:カードに対する親近感
これらを組み合わせカスタマイズされた情報は、理論上は、800万種類の情報誌としてアウトプットされることになるわけだが、実際のところはすべてというわけにはいかない。それでも、先行導入された九州版では、発行部数40万部に対して10万種を作成したということなので驚きだ
温泉旅行キャンペーンを例にとると「◎伝統志向の会員には-縦書き、黒字の明朝体で『初冬の風情を感じる』と、落ち着いたデザイン」「◎家庭を重視する人には-ポップ調の書体を使い、全体的に柔らかな雰囲気」。裏面に掲載する飲食、旅行、チケットなどの情報も会員ごとに変える(会員種と店舗の相性を点数化しているらしい)。制作コストは通常150円の2~3倍かかり、これも薄っぺらいDMとしては相当なものだが、十分回収できているとのこと。それは、たとえば、視読率60%上昇・カード利用額5%増加・退会率20%低下というデータに現れている。
もっとも、これらのことはたとえば米国では「カスタムマガジン」といった手法で定着しつつある。いま日本でできる、CRMとしては完成形に近く地に足がついているというところか。課題は「表現」の部分だろう。結局、いくつかのコラムユニットをパズルのように組み合わせて、チラシのコピー&デザインを生成するわけだろうが(写真を参照:日経流通新聞12月22日を撮影)、上記に記載されている小手先の表現レベルで果たしてワン・トゥ・ワンのアプローチが可能かどうかについてはいささか疑問が残る。このシステムは、微妙で具体的な表現の生成まで一気通貫しなければ効果は半減してしまうだろう。
つまり、この仕組みの精度をあげるためには、コピーライター(マーケティングライター)とデザイナーの技が問われるということだ。同時に彼ら制作者の仕事の位相が大きく変わることになる。コピーライターのスキルは、けっして洒落た文章を書けることではなく、どれだけ多種の消費行動がインサイトできるか?その理知的なカテゴライズができるか?そして、ターゲットに同化できるか?ということになるし、デザイナーの評価基準は、ユニバーサル・グラフィック・デザイン、ナビゲーションデザイン、色彩心理学といったことに理論的な答えをだせるか、ということになる。
もし、これらの技術が論理体系化でき、かつアウトプットと連動できる手技を体得できれば、CRMの発展と同期してマーケティング・ライター、マーケティング・デザイナーという新しい称号が与えられるかもしれない。広告とプロモーションの未来を考えるとマーケティング請負会社としては大きなビジネス・チャンスだ。そして、現状では人脈以外の評価軸をもたない広告制作者にも(※2)、新しい価値基準を付与することができるはずだ。まあ、本来はこれこそが現在においても、広告制作者のミッションであるわけなんですけどね。
で、こういった表現面についての体系的な回答を出そうとこころみているのが、電通が開発したダイレクトレスポンス・ビジネス支援システム「ドラムス」ということになる(※3)。リリースを見ていただければ内容はわかるが、これについては、次回に考えたいと思う。
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(※1)もちろん、このクラスターが正しいかどうかについては多くの異論があるだろう。ただし、答えなんかないんだから、まずやってみるという判断に軍配をあげたい。ここまでの費用を投下できるデシジョンにも軍配をあげたい。
(※2)結局、おバカな広告たちは、それを許す人脈のうえに成り立っているということです。もちろん80年代に比べて、その効力が薄れてはいるわけですが。
(※3)いま新聞をご覧いただくとよくわかると思うが、多くの広告紙面は、「保険」「健康通販」「PC」のダイレクトレスポンス広告で占められている。電通の動きは、これにあわせたものであるし、じつはおバカな広告の出稿量と反比例しているという点でも好ましい。広告の本質的な機能を生活者と企業が正しく判断しているということだろう。
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↓マーケのほうもこつこつやってみます。
↓やっぱり本だよ、という方は、
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好みや生活観など会員の属性を凝縮した(固有の)12ケタのコードを使って、内容や配色に至るまでダイレクトメール(DM)を作りわける。……
「時代に敏感なマイホーム主義者」「トレンド偏重型OL」--。JCBはカード会員をまず、九パターンの消費者モデルに分類している。会員はさらに、カード利用履歴はもちろん消費性向や信頼する情報ソースなどによって細かく分析・診断され、十二ケタのコードで管理されている。(日経流通新聞 12/22)
消費心理をベースにしたアンケートによりクラスター化された属性は(※1)、以下のような12ケタを組み合わせたバーコードとして生成されDM情報誌「JCB NEWS」の作りわけコードとして使われる。
●生活価値観
a1:上昇志向型プロ集団
a2:家庭趣味両立型ビジネスマン
a3:こだわりヤングビジネスマン
a4:健康老後不安世代
a5:時代に敏感マイホーム主義者
a6:トレンド偏重型OL
●情報態度
b1,b2,b3:情報収集に関する積極性、信用する情報源…
●消費性向
c1,c2:衝動買いの有無
●カード性向
d1:カードに対する親近感
これらを組み合わせカスタマイズされた情報は、理論上は、800万種類の情報誌としてアウトプットされることになるわけだが、実際のところはすべてというわけにはいかない。それでも、先行導入された九州版では、発行部数40万部に対して10万種を作成したということなので驚きだ
温泉旅行キャンペーンを例にとると「◎伝統志向の会員には-縦書き、黒字の明朝体で『初冬の風情を感じる』と、落ち着いたデザイン」「◎家庭を重視する人には-ポップ調の書体を使い、全体的に柔らかな雰囲気」。裏面に掲載する飲食、旅行、チケットなどの情報も会員ごとに変える(会員種と店舗の相性を点数化しているらしい)。制作コストは通常150円の2~3倍かかり、これも薄っぺらいDMとしては相当なものだが、十分回収できているとのこと。それは、たとえば、視読率60%上昇・カード利用額5%増加・退会率20%低下というデータに現れている。
もっとも、これらのことはたとえば米国では「カスタムマガジン」といった手法で定着しつつある。いま日本でできる、CRMとしては完成形に近く地に足がついているというところか。課題は「表現」の部分だろう。結局、いくつかのコラムユニットをパズルのように組み合わせて、チラシのコピー&デザインを生成するわけだろうが(写真を参照:日経流通新聞12月22日を撮影)、上記に記載されている小手先の表現レベルで果たしてワン・トゥ・ワンのアプローチが可能かどうかについてはいささか疑問が残る。このシステムは、微妙で具体的な表現の生成まで一気通貫しなければ効果は半減してしまうだろう。
つまり、この仕組みの精度をあげるためには、コピーライター(マーケティングライター)とデザイナーの技が問われるということだ。同時に彼ら制作者の仕事の位相が大きく変わることになる。コピーライターのスキルは、けっして洒落た文章を書けることではなく、どれだけ多種の消費行動がインサイトできるか?その理知的なカテゴライズができるか?そして、ターゲットに同化できるか?ということになるし、デザイナーの評価基準は、ユニバーサル・グラフィック・デザイン、ナビゲーションデザイン、色彩心理学といったことに理論的な答えをだせるか、ということになる。
もし、これらの技術が論理体系化でき、かつアウトプットと連動できる手技を体得できれば、CRMの発展と同期してマーケティング・ライター、マーケティング・デザイナーという新しい称号が与えられるかもしれない。広告とプロモーションの未来を考えるとマーケティング請負会社としては大きなビジネス・チャンスだ。そして、現状では人脈以外の評価軸をもたない広告制作者にも(※2)、新しい価値基準を付与することができるはずだ。まあ、本来はこれこそが現在においても、広告制作者のミッションであるわけなんですけどね。
で、こういった表現面についての体系的な回答を出そうとこころみているのが、電通が開発したダイレクトレスポンス・ビジネス支援システム「ドラムス」ということになる(※3)。リリースを見ていただければ内容はわかるが、これについては、次回に考えたいと思う。
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(※1)もちろん、このクラスターが正しいかどうかについては多くの異論があるだろう。ただし、答えなんかないんだから、まずやってみるという判断に軍配をあげたい。ここまでの費用を投下できるデシジョンにも軍配をあげたい。
(※2)結局、おバカな広告たちは、それを許す人脈のうえに成り立っているということです。もちろん80年代に比べて、その効力が薄れてはいるわけですが。
(※3)いま新聞をご覧いただくとよくわかると思うが、多くの広告紙面は、「保険」「健康通販」「PC」のダイレクトレスポンス広告で占められている。電通の動きは、これにあわせたものであるし、じつはおバカな広告の出稿量と反比例しているという点でも好ましい。広告の本質的な機能を生活者と企業が正しく判断しているということだろう。
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