10歳のツトムくん
きょうもあっちこっちの
家具や
壁や
イスや
ピアノの脚を
蹴って蹴って蹴って蹴りまくる
何かを鍛えるのではなく
何かに抗議している
自分の足に痛みのある抗議
ツトムくんは
いつも片手に
バスマットか
タオルケットを
持って行動する
これ以上口の中に
入りきらないほどに
タオルケットの布を
口の中に含んで
大きくほほがふくらんでいる
ツトムくんは
おとなのサンダルが好き
おとなの革靴が好き
はきものが自分でもあるのに
さっとおとなの履物をはいて
田んぼの中をかけまわる
だからツトムくんが
戻ってくると
はきものはどろどろ
もう使えないくらい
ツトムくんは
高いところに登る
きょうも
ピアノの上に
窓の上に
食卓の上に
車の屋根に
ベッドの上に
片手には
タオルケットをもって
ツトムくん
こっちにおいで
というと
ツトムくんは
どんどん遠くに行ってしまう
追いかければ
逃げてゆく
まるで
かげふみのよう
でも視線はこちら
ツトムくんは
おかあさんと
ふたりぐらし
おかあさんは
いつも
いそがしく
帰りも遅い
ツトムくんはだから
お母さんが帰るまで
お家に帰れない
ツトムくんは
学校から帰ると
かばんを放り投げて
上着も脱いで
ズボンも脱いで
くつしたも脱いで
あっちこっちに
ぽいぽいほうる
まるで束縛から
自由をもとめるように
ツトムくんの
しろいからだは
赤いかさぶたであちこち傷だらけ
首筋 背中 肩 もも 上腕
そしてまぶたの上にも
あっちこっちから
血がにじんでる
ツトムくんは
アトピー性皮膚炎で
かゆくてたまらない
ツトムくんは
だっこに
なれていない
だきしめられると
にっと笑って
でもすぐに
つきとばす
おまえなんかじゃ
だめなんだ
そういっているかのよう
ツトムくんは
おうちに帰るときが
いちばんうれしそう
かえったら
おかあさんにあえるから
お母さんの手料理が
待っているから
お風呂に一緒に入れるから
いっしょの布団に眠れるから
きょうもあっちこっちの
家具や
壁や
イスや
ピアノの脚を
蹴って蹴って蹴って蹴りまくる
何かを鍛えるのではなく
何かに抗議している
自分の足に痛みのある抗議
ツトムくんは
いつも片手に
バスマットか
タオルケットを
持って行動する
これ以上口の中に
入りきらないほどに
タオルケットの布を
口の中に含んで
大きくほほがふくらんでいる
ツトムくんは
おとなのサンダルが好き
おとなの革靴が好き
はきものが自分でもあるのに
さっとおとなの履物をはいて
田んぼの中をかけまわる
だからツトムくんが
戻ってくると
はきものはどろどろ
もう使えないくらい
ツトムくんは
高いところに登る
きょうも
ピアノの上に
窓の上に
食卓の上に
車の屋根に
ベッドの上に
片手には
タオルケットをもって
ツトムくん
こっちにおいで
というと
ツトムくんは
どんどん遠くに行ってしまう
追いかければ
逃げてゆく
まるで
かげふみのよう
でも視線はこちら
ツトムくんは
おかあさんと
ふたりぐらし
おかあさんは
いつも
いそがしく
帰りも遅い
ツトムくんはだから
お母さんが帰るまで
お家に帰れない
ツトムくんは
学校から帰ると
かばんを放り投げて
上着も脱いで
ズボンも脱いで
くつしたも脱いで
あっちこっちに
ぽいぽいほうる
まるで束縛から
自由をもとめるように
ツトムくんの
しろいからだは
赤いかさぶたであちこち傷だらけ
首筋 背中 肩 もも 上腕
そしてまぶたの上にも
あっちこっちから
血がにじんでる
ツトムくんは
アトピー性皮膚炎で
かゆくてたまらない
ツトムくんは
だっこに
なれていない
だきしめられると
にっと笑って
でもすぐに
つきとばす
おまえなんかじゃ
だめなんだ
そういっているかのよう
ツトムくんは
おうちに帰るときが
いちばんうれしそう
かえったら
おかあさんにあえるから
お母さんの手料理が
待っているから
お風呂に一緒に入れるから
いっしょの布団に眠れるから
どうしたらいいのか判らないまま、
つき動かされるように感情の中をもがいて
ころがり
浮いて
流れて
自分の気持ちが落ち着ける先を探しているような…。
羽を休める場所がなければ、
鳥はいつか、倒れてしまいます。
ツトムくん
お母さん
見守るなりたさん
…みんな、切ない気持ちなのでしょうね。。。
しかし、思春期を迎え、イライラ感が募るのでしょ、言葉がうまく出ない分、「わかってくれよ!」という気持ちを、自分の信頼できる人・甘えられる人にぶつけてくるんです。
人が人に噛みついてくる恐怖!でも、本人は真剣に訴えていたんですよね。
この話は、子供たちから学んだ前任校の出来事です。
せめて少しの間でも、私が羽根を休める場所になりたいです。
精一杯の行動で、「わかってよ!」と言っている気がしています。お母さんが一番やさしく迎えられる港になれるようにサポートしたいと思っています。
ぼくもひたすら床に自分の額を打ち付けていた、あのダウン症のA君の悲しみを思い出します。