夢発電所

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「臍曲がり新佐」藤沢周平著 読了

2012-02-27 06:57:11 | 私の本棚
2月26日(日)

 -2℃が最高気温、(最低-5℃)の厳寒の一日。細かな雪が降っています。それでもPM5時頃になっても、いつもとは違う空の明るさがあります。本当に辛抱ももう少しという感じです。

 さて藤沢周平著「臍曲がり新佐」を読みきりました。藤沢は1997年1月26日に逝去しています。もう15年も経っているのかと、不思議な感じでもある。宮沢賢治、遠藤周作、北杜夫、井上ひさし・・・みんな亡くなっているが、彼らには生きた作品がある。いつ読んでもそこには作品たちが、活き活きとして私達に語りかけているのだ。小説家を始めとする物書きの、そこが素晴らしく羨ましいところだと思う。

 藤沢作品をたてつづけに読み進むうちに気づいたことがある。それは、根底に流れる温かな人間観である。人間そのものがいつの時代も完全なものではなく、弱さや強さ、美しさと汚さ、善と悪の両極が必ず心の中に住んでいることを、突きつけられる思いである。
 悪人であっても、一分の良心がある。貧乏人であっても、心の中には清廉潔白なすがすがしい生き方もある。そんな意味では藤沢の作品に一貫しているのは、ヒーローとして祀り上げられた偉人たちではなく、貧しい足軽や下級武士たちの物語である。
 心の動きが右に左に動く様、その心理描写の素晴らしさ。思わず自分までもが、主人公と一心同体となって、うろたえたり、ヒヤヒヤしてしまう。そして、武士として願いを叶えた後の満足感と達成感の中で、死んでいくことをうかがわせる終末場面。
 また次の作品に手が伸びそうになっている自分がそこにある。

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2 コメント

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成田さんへ (りんご)
2012-02-27 13:48:29
藤沢作品は本当に奥深い作品ばかりですね。

私は毎日自分の言動を肯定したり
否定したりしながら生きてます。
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りんごさんへ (なりたはるみ)
2012-02-27 16:35:55
いつまでも若いなと思う理由の一端は、心の成熟です。自分がもはや爺さんの年代になってもまだある、心の中の迷いや彷徨。でも未熟だからこそ生きておられるのかもしれないと思っています。
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