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悪妻の代表「クサンチッペ」

2007-01-27 01:48:30 | 私の本棚
 世界中の悪妻の代表のように言われている悪妻「クサンチッペ」は古代ギリシャの哲学者ソクラテスの妻です。
 では、その悪妻のエピソードとはどんなものだったのでしょうか?
 「世界悪妻列伝」を書いた・桐生 操さんが次のように紹介しています。
 ある日ソクラテスが外から帰ってくると、彼女は口汚くののしり、やにわに水を頭からぶっ掛けたとか。そうされても口答えするどころか、じっと耐えているソクラテスに、見かねた弟子がソクラテスに、「どういうつもりか」と問うと「雷の後で夕立が来るのは当たり前」と、平然と弟子に答えたとか。
 ソクラテス自身、妻が悪妻であることに甘んじていた節があり、ある青年から結婚すべきかどうかと聞かれて、こう答えたと言う。「結婚はしたほうがいいと思うよ。うまく行けば幸せになれるし、わたしのように失敗すれば哲学者になれるから」
 またあるとき、人々が彼に向かって、どうしてあんなひどい女に我慢しているのかと言うと、彼はこうも答えた。
 「優れた騎手というのは、人が敬遠するような馬をわざと選ぶものだ。それを乗りこなしさえすれば、ほかのどんな馬も乗りこなせる。私もクサンチッペを操縦できれば、どんな人間ともうまくやっていけるだろう」
 とはいえ、本当にクサンチッペが「悪妻」だったかどうかについては、異論がある。彼女のほうでもソクラテスにいろいろ不満があったらしいからだ。
 一般にソフィストが弟子から高い月謝を取っていた時代に、ソクラテスはなんと無料で教えていた。しかも弟子に誘われるとついていって酒をご馳走になり、何日も家に帰ってこないような生活だった。甲斐性のない夫を見ればクサンチッペも苛々して、文句の一つも言いたくなったのではないだろうか。
 さらに実は、ソクラテスには二人の妻が居た。もう一人の妻は、アリスティデスの娘のミュルトル。クサンチッペが他の女と夫を共有することに満足していたはずはない。
 のちにソクラテスは政府から死刑の判決を受けるが、死刑当日、弟子達が牢獄につめかけると、既にクサンチッペが赤ん坊を抱いて座っていた。彼女は「この人たちと話ができるのも、もう今日限りなんですね」と言って泣き崩れたというから、夫を愛していた心優しい女だったようでもある。
 ものは考えよう。よくクサンチッペは気が荒いとか愚痴っぽいとか言われるが、実は気性が激しく、思ったことを隠しておけない女だったというだけではないだろうか。
 そして現代の基準から考えると、稼ぎもなく、ぶらぶら遊び暮らしていたソクラテスこそ、どうしようもない「悪夫」だったといえないこともない。

(文芸春秋特別版2月臨時特別増刊号から)
 
 哲学者も落語家もある種同じ人種に見えてくる逸話ですね。サラリーマン的な生き方をしていたら、一流にはなれない世界もあるのだとも思います。この時に夫婦はいかにあるべきなのかは、中々難しい気がします。今でこそ男女同権などがまかり通っていますが、当時はどうだったか思うとき、きっと女性にはかなりの制約があったのではないでしょうか。じゃあ結婚なんかしなけりゃいいのにと言われそうですが、そういうものでもないかもしれません。愛の形態は様々でしょうから。
 昔の日本の映画を見ていると、笠 智衆や佐分利 信、原 節子などの俳優は、昔の親父や女役をよく演じていますよね。いかにも昔の日本の男と女はこうだというイメージです。言葉は本当に少ないし、上手に言おうというスタイルはまったく感じられない。いわゆるぶきっちょですよね。だからといって愛していないわけではない。肩や背中で感情表現をするなんてすごいなあといつも思ってしまいます。哀愁を感じますね。生き方が野暮、へたくそですよね。だからこそまた、その人の人間性がハートに沁みてくるんですが。ぼくは、どうも愛しているよ「ブチュッ」なんて絶対出来ない方かもしれません。旧日本人的な生き方のほうが心の奥行きがあっていいなあと思います。俳句の世界ですね。
余韻を感じている世界が、なんだかいいなあと思います。言葉は少ないけど、ぐっと来る気持ち。それをなんだかいいなあと思います。ずいぶん横道にそれたけど…。

 

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2 コメント

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呼び方 (りんご)
2007-01-27 19:18:13
成田さんは、奥様を何とお呼びですか。
わが家は私の事をファーストネームで
呼び捨てにして言います。
ちょうど親が子供のことを呼ぶように。
私はそれが当たり前だと思っていました。
しかし隣近所から、名前で呼ばれて羨ましい
と言われてびっくりしました。
隣近所では絶対に名前では呼んでくれず
オイとかオーとかだそうです。
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りんごさんへ (なりたはるみ)
2007-01-27 23:25:01
 けっこんしてからしばらくは、大学や職場で彼女が呼ばれていたニックネームで長らく読んでいたのかな?結婚して子ども達が大きくなるに連れて、「おかあさん」「おとうさん」ですね。ちなみに彼女も東京時代から若い頃は、ぼくをニックネームで読んでいました。
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