音楽は語るなかれ

音楽に関する戯れ言です。

リバティーンズ宣言 (リバティーンズ/2002年)

2012-08-03 | ロック (イギリス)


2000年以降のロックバンドの御三家は、なんといっても、ストロークスリンキンパークアークティック・モンキーズだと勝手に思っている。が、しかし、これは決して独断だけでなく人気、実力、また音楽界に与えた影響などを鑑みても実際にそうだと思うし、この3組に共通することは、1900年代にはなかった魅力的な音楽であると同時に、その基本は1900年代のメインストリームなポップ音楽であるということだ。ロックンロールという1950年代後半以降、至って単純でシンプルな音楽をベースとし、新時代にむけて創意工夫を凝らした内容。それがこれらグループの特徴だ。また、音楽ファンというのも、特に英米を中心に耳が贅沢になっていて、音に対してしっかりとした拘りをもってくるようになった。だが、これはクラシック音楽の変遷を見れば顕かで、ポップ音楽もそういう音楽へと次のステージに上がっていったのである。因みに、ほかにもこのようなバンドは幾つかあり、ホワイトストライプスレイザーライトフランツ・フェルナンドアーケイド・ファイア、クラクソンズ、MGMTなども皆、大変面白くなっている。そして、その中でも最も元気があって、アメリカのオルタナの地位を脅かしたのが、なにを隠そう彼ら、リバティーンズなのだと認識している。

そもそもこのグループは「ガレージロックリバイバル」のムーブメントとして登場した。ガレージロックとは、その名の通りガレージ(車庫)で練習するアマチュアバンドに由来し、後にガレージパンクとも呼ばれるが、このリバイバルに関してはビートルズローリング・ストーンズザ・フー、キンクスなどの1960年代前半イギリス出身バンドの「ブリティッシュ・インヴェイジョン」に影響を受けたアメリカの若いバンド群が主導した、ロックンロールへの回帰である。そういうと音が大変シンプルなコード進行中心の印象に思えるが、サイケや民族音楽を取り入れたポストパンク時代、ニューウェーヴの変遷もポップ音楽の中軸を為した時代を経過した故に、ポップの定義や領域が多岐に渡った現在では、その音は大変雑多である。だが、そこに求められたのがこのリバティーンズに見られる様なストレートな表現である。その辺り、例えば前述のホワイトストライプなどは基本ブルースというもっとも枠にはまった音楽形態から発しているにも関わらず、その音の幅の広がりはかなり多岐に渡っている。また大事な要因としてサイケ色の時代は当然のこと、ドラッグと無縁という訳にはいかず、しかし、オルタナとの決定的な違いはそういう要素を排除したことだった。つまりリバティーンズがひとつ残念で、またオルタナより、ガレージやパンクに近く位置づけられる要因としてこのドラッグ中毒のトラブルは常につきものだった。これが、この類い稀で貴重なロックセンスを持ったグループの解散を早めたのは残念ながら事実である。このアルバムは元クラッシュのミック・ジョーンズをプロデューサーに迎えて行ったが1曲目からあのクラッシュが今、21世紀にニューアルバムをリリースしたらこんな音でこんなはじまり方をするんだろうなと思えるイントロである。かといってクラッシュ初期のようなアナーキズムなど全くなく、今世紀、パンクは生き様でなく音楽のジャンルになったことが明解なのではないか。

新世代のパンクと言ったとしても、確かにピストルズ登場のセンセーショナルさから比べたらその衝撃はたいしたことはないかもしれない。それは前述のクラッシュに例えたのと同じパンクロッカーが時代を要求したのでなく、音楽ファンがこの音を必要としたことに変わってきたのである。イギリスパンクは四半世紀をかけて、ついに楽典として認知されたのだ。


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